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「むぅ?おぬしも異人種か。それもわらわと同じ、犬との混在型じゃな」
「同じ?」
キャロルが目をパチクリさせる。
「わらわは千年の時を生きる犬神。マリー様じゃ」
マリーの頭部から焦げ茶の犬耳がピョッコリと出現する。
「あ!僕と同じだ」
キャロルは嬉々としてマリーに飛びついた。虚を突かれたマリーは一瞬たじろいだが、すぐさまキャロルを撥ね退ける。
「き、気安く抱擁するでないわ……全く、最近の若い者は礼儀というものを知らんの!」
「あ……あの」
今まで皆の様子を黙って見ていたミアが口を開く。
「犬神ってもしかして……蠱毒のことでしょうか」
「蠱毒?」
頭をさすりながらナツメがミアに尋ねる。
「たわけ者が!わらわをあんな東方の呪術の類と同列にするでない!」
「ふぇ!ご、ごめんなさい……」とミアはマリーに頭を下げて謝罪した。
「まあ良いわ。しかし蠱毒を知っとるとは、猫の娘。おぬし中々の博識じゃな」
感心した様子でマリーはミアを賞賛した。
「……マリーさん。なんでここにいるのか聞いて良いですか……?」
ナツメが恐る恐る彼女に当然の疑問を投げかける。
「嗚呼、そうじゃった。おぬしがどんな所で寝泊まりしとるか気になってな。まさかトレジャーハンターの宿舎だとは思わなんだが。本当に金が無いのじゃな」
マリーは「くふふ」と小馬鹿にするような笑い声をあげた。ナツメは段々と腹が立ってきた。
——んだよ、こいつ。何が目的か知らないが俺を尾行してきて、挙句偉そうに。
ナツメはマリーに詰め寄っていく。
「な、なんじゃ?」
マリーが若干、たじろいだ。
「昼間も言った通り、俺は金を持ってない。だから割引がきく協会の宿に泊まってる。マリーが確認したかった要件は済んだろ?なら……」
ドアの方を指差しながら「帰ってくれ」とマリーに告げた。
「おぬしも性急じゃのう。これから一緒に旅発つ者たちと親睦を深めたいと思うのは至極当然と思わんか?」
「一緒にって……どういうこと?」
キャロルがそういうと、マリーは微笑を浮かべながら目を細めた。
「言葉通りじゃ。わらわがピエスコ宮殿まで案内してやることになっとる。なんじゃ?ナツメから何も聞いとらんのか?」
マリーがナツメを一瞥する。
「……まだ言ってなかったよ。でも、出発は明日だし落ち合うのも正門に九時って話で折り合いがついたよな?」
ナツメが言い終わると同時に、マリーのお腹が鳴った。途端にマリーが顔を赤くする。
「もしかして……帰る家、無いのか?」
「ば、馬鹿を言うな!ちょっと、その……近隣住民から怪しい奴がいると憲兵に通報されて店が没収されたなど……そんなことは断じて無いぞ!」
家、没収されたんだ……、とナツメ達は胸中で呟いた。
「あ!わかった。それでマリーはナッちゃんを尾行して、同じ宿で泊めてもらおうと思ったんだね」
キャロルがなんの躊躇もなく、マリーの思惑を暴露した。図星だったようでマリーはうつむきながら、もじもじし始めた。
「だったら、早くそう言えば良いじゃん。僕達は大歓迎だよ」
キャロルはマリーに抱きつきながら「ね、ナッちゃん」とナツメに目配せした。
「き、気安く触るでない。不埒者が!」
ナツメは小さくため息をつくと「マリー」と彼女に声をかけた。
「確かに。マリーには遺跡まで案内してもらう訳だし、その手間賃ってことで今晩はここに泊まっていけよ。腹減ってるなら、余り物食べて良いしさ」
マリーは憮然としながらも、ナツメの言葉を聞くと態度を和らげた。
「ま、まぁ、おぬしらがそこまで言うなら泊まってやらんでも無いぞ」
めんどくさい奴だな、と思ったがそこは口に出せない。ナツメはもう一室部屋を借りる手続きを済ませた。




