表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/84

「ドロバ……湿原?」

「そう、ドロバ湿原にピエスコ宮殿があるのは知っとるか?」

「ああ、聞いたことはある。数百年前に変わり者の辺境伯が建てた建築物だろ?だけど、あの遺跡はあらかた調査・発掘が済んで目ぼしい物は残ってないはずだ」

 マリーは「うむ」と言った後、上半身を乗り出し蒼いガラス細工のような瞳でナツメを見つめた。マリーの美貌にナツメは思わず、ドキッとしてしまう。

「あの宮殿には、秘密の空間があってな。わらわが開錠せん限り、誰も入れんように細工されとるんじゃ」

 そんなものが本当にあるのか、とナツメは思った。だが、マリーが要求した対価が飯代だけなら、安いものかもしれない。仮に情報が嘘であったとしても何も手掛かりが無いよりマシだ。

「わかった。ドロバ湿原にあるピエスコ宮殿だな。じゃあ用件は済んだし、俺は先に失礼するよ」

 ナツメが席を立とうとすると、途端にマリーが慌てだした。

「まて、おぬし。話をちゃんと聴いておったのか?わらわが宮殿に施した封印を解かねばパンドラは見つからん!」

「……じゃあ、どうすればいいんだよ?」

 マリーはにやりと含みのある笑顔を浮かべた。

「安心せい。わらわが案内してやる」



 夕刻、トレジャーハンター協会の宿泊所に戻ってきたナツメにキャロルがほくそ笑みながら「おかえり」と声をかけてきた。

 日中、中央通りでミアと買い物している最中にナンパされたらしい。だが「僕には大好きな人がいるから」ときっぱり断ったそうだ。明らかに俺のことだろうが、相手にする気はなかった。

「そういえば俺も今日、すげー美人に珍しく逆ナンされたよ」

 キャロルの顔から血の気が引く。

「う……うそだ。ナツ兄が美人にナンパされる訳ない!きっとそれ詐欺だよ。わたしわたし詐欺!」

「なんだよ……わたしわたし詐欺って」

 俺が呆れているところに、ミアがやって来た。

「ナツメさん、お帰りなさい」

「ただいま、ミア。ちょっと二人に話があるんだ」

 ナツメは昼に出会ったマリーのこと、パンドラの箱の所在がドロバ湿原にあるらしいと二人に話した。

「そんな訳で、ドロバ湿原にあるピエスコ宮殿を調査したいと思ってる。二人とも問題ないかな?」

 不意に背後から「うむ、問題はないぞ」と声がした。

「うわっ!」

 ナツメは悲鳴をあげる。いつの間にか、部屋の隅に金の髪を揺らめかすマリーの姿があった。

 ——こいつ、何でここに?ていうか、どうやってこの部屋に入ってきたんだ。というナツメの疑問をよそにマリーは嬉しそうにトコトコと三人のそばに近づいてくる。

「ほう、この小娘たちがそなたの仲間か。両手に花とはおぬしも中々やるのう」

「なんであんたが……」

 言いかけたナツメの頭にロッドが直撃する。

「——痛っ!」

「あんた、ではなくマリーじゃ。このうつけ者が!」

「ちょっと!ナッちゃんに何すんのよ!」

 キャロルがマリーに食ってかかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ