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個室に置かれたテーブルに座ると、ナツメは口を開いた。
「パラメリア王国からトレジャーハンター協会を通じて、受け取った報酬は銀貨三十枚。これを俺とキャロル、ミアの三人で均等に割る。つまりそれぞれが銀貨十枚の取り分になるんだけど……」
「銀貨十枚!凄いじゃんっ!これでやっと洋服を新調出来るよ。あとは、前から食べたかったアップルシュトゥルーデルも十個は食べたいなぁー」
キャロルは椅子から立ち上がり、引っ込めていた茶色い尻尾をブンブン揺らした。
シュトゥルーデルとはパラメリアの伝統的なお菓子だ。林檎やサクランボ、ケシの実などの詰め物を幾層にも巻いて作られ、クリームなどを添えて供されることもある。高級品に分類される為、一般庶民が容易に食べられるお菓子ではない。
「キャロ、言っとくけど。次にいつ報酬が受け取れるか分からないんだからな!宿代と食費代、無くなっても俺は知らないぞ」
キャロルは哀愁に満ちた表情で犬耳をペタリと下げ、椅子に崩れ落ちる。
「ミア、取り分について不満はないかな?」
「不満なんて……そんな。というか、私の取り分は要りません」
ミアは手の平を振り申し訳なさげに言う。
「要らないって何で!?訳わかんないよ!みんなが居たからフライスネークを倒せて、賞金も貰えたんじゃん」
ナツメが言おうとしたセリフを、先ほどまで不貞腐れていたキャロルが代弁した。
「あ、いえ。私一人じゃ確実にフライスネークに殺されていましたし……。それに蓄えなら多少はあるんです。その……ハンドメイドの小物で日々の生計を立てていましたし」
ナツメは、ミアの清貧さを醸し出す言葉に打ちのめされると同時に、なんて謙虚なんだろうと感じた。
キャロルに、ミアの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。だが、どちらにしろミアには報酬を受け取って貰わなければならない。
「キャロの言う通り、あの異形種を倒せたのは紛れもなくミアがいたお陰だ。もし、ミアが先陣でフライスネークに立ち向かっていなかったら、俺とキャロルはアイツの死角を突くことなんて到底出来なかったと思うよ」
ミアは複雑な表情でナツメを凝視している。
「そうでしょうか……」
「そうに決まってるじゃん!」
なおも渋るミアに、キャロルが太鼓判を押すように声を上げた。
「金の使い方は任せるしさ。何にせよ、ミアに報酬受け取って貰わないとスゲー困るっていうか……気持ちの問題でもあるし」
ナツメのダメ押しにミアは「そこまで仰るなら……お受け取りします」と承諾した。




