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ナツメは布袋から銀貨を取り出し、キャロルとミアにそれぞれ銀貨十枚を手渡した。キャロルは大喜びした後、ナツメ達にバザーで買い物しに行きたいと提案した。だが俺は野暮用があると、それを断った。
結局、それぞれ自由行動しようという意見でまとまり、キャロルはミアをやや強引に引き連れ、街に繰り出していった。
「さて、と……」
ナツメは内ポケットから、キーロフでジェフから受け取ったメモを取り出した。紙にはジェフからアルバの食堂で教えられた二つ目の情報が記載されていた。
——食堂で話を聞いた時、ナツメは情報の真偽を即座に疑った。なぜなら、それは『パンドラの箱の所在について』だったからだ。
パンドラの箱。それは言うまでもなくトレジャーハンターが探し求める秘宝の頂点に位置し、ナツメにとって故郷を失う理由となった代物でもある。
だが、トレジャーハンター協会がパラメリア王国に発足してから何十年以上もの間、誰一人としてパンドラの所在を掴んだ者はいない。
ジェフもこの件をナツメに教える際に、情報自体がトラップである可能性に言及していた。そして、もし何かしらの罠であると察したら直ちに引けと念を押された。
なのに、わざわざ、そんな危険な情報をナツメに伝えた理由は何となくわかる。俺自身がトレジャーハンターになる決心をした理由をジェフは知っていたからだ。無論それがパンドラの箱であることは言うまでもない。
ナツメにしても例えどんな足掛かりであろうが、パンドラの箱に繋がる情報であれば、それが危険な橋であろうと渡るつもりだ。
ロゼリアの南東に向かって歩きながら、再度ナツメはメモに書かれた住所に目をやる。
メモに書かれた住所に住む者がパンドラの箱について、何らかの情報を持っているとジェフは言っていた。
やがて道は大通りから外れ、黄色のタイル張りが美しい住宅街の小路に入る。ナツメは記された住所へ向かいながら、妙な胸騒ぎと期待感が沸き起こるのを感じた。
もし情報が真実だったら?だが、そうやすやすと秘宝のありかなど出回るものだろうか……。ナツメは思考を巡らせながら、やがて首を大きく左右に振った。
今、そんなことを予測してもしょうがない。情報の真偽を確認しなければ、話は前に進まないからだ。落ち込むのはそれからでも遅くない。




