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「この薬指の糸は主に防御用だと、私は認識して使用しています」
「あ、そうか。キーロフに帰る途中、ヴィエジャの森で休憩取った時に俺たちの周囲に張り巡らせた糸」
ミアは首を縦に振る。
「はい。私は『結界』と呼んでいるんですが。異形種や盗賊なんかの不意打ちを防ぐ目的で使用します。『結界』の糸に触れると、即座に私が感知出来るようになっています。余談ですが、この糸自体にもエレメンタルの魔力が帯びているので、不死系の異形種などの侵入も防ぐことが出来ます」
「凄いな……」
ナツメは思わずミアの両手を掴んだ。ミアは紅潮し、あたふたしだす。
「あ、い、いえ……そんなことは……ないです。ゴーストくらいのレベルの異形種なら防げますが、レベルの高い異形種にどこまで通じるかは不明ですし……実際、私のニーベルングでフライスネークを倒すことは出来なかった訳……だし」
ミアはそこまでいうと「あの……手、も、もうよろしいですか?」と上目遣いでナツメに言った。
「あ、ごめん……つい」とナツメは慌ててミアの手を離す。
だが、ナツメは想像以上のミアの能力に畏敬の念すら感じていた。まさかここまで応用力のある宝具があるなんて。
キャロルのヘリオスは物理的な攻撃や高速移動などこそ凄まじいが、物理攻撃が効かない敵に対しては無力だ。そして典型的な近距離型。俺のエリュシオンに至っては、撃てるか撃てないか分からないポンコツときてる。
もし、まともに発動できれば中距離の相手に対して優位に闘えるんだろうが、今のところ望み薄だ。
最後にミアがお披露目した中指の糸は、これまた先端が鉤爪のような形の金属がついていた。最初に言っていた移動などに使用するらしく、最長距離は一キロほどらしい。
ただ百メートルを超えた辺りで糸の強度が途端に落ち、移動にはとても使えないほど脆弱になるという。
しかし、考えようによっては標的を追跡、尾行するなどの用途に使えなくもない。
ミアの宝具は中・遠距離型という特性に加え、エレメントの力を帯びているので不死系の敵にも対処出来る。
俺とキャロルに足りなかった戦力が、期せずして入った具合だ。
「私、お爺ちゃんとお婆ちゃんが死んでから独りでした。ポトラ村の人たちも異人種の私を毛嫌いしていましたし。なので、私はずっとフライスネークを討った暁には死のうと思っていたんです」
ミアが発する小鳥の囀りのような美麗な声に、ナツメは黙して耳を傾ける。
肩に伸びた彼女の赤毛の髪が、夜風にそよそよと揺れていた。
「独りはもう嫌だった……から。苦しくて辛くて‥‥生きるのが、ずっと苦痛だったから……でも、でもナツメさんとキャロルさんが私のこと必要だって言ってくれた時、言葉にならないくらい嬉しくて堪らなかった。だからお二人には感謝してもしきれないんです」
ミアの言葉に、ナツメは胸に熱いものが込み上げるのを感じた。




