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「……ごめん、なさい。あの……ずっとお二人のこと、茂みから見てたんですが。なかなか声をかけることが出来ずに……いました」
ミアは申し訳なさそうに目を伏す。
「ずっと——って、ミアはいつから茂みに隠れてたんだ?」
「七時からです」
「はや!」ナツメは思わずツッコミを入れる。
「一声かけてくれたらよかったのに!」とキャロ。
ミアは紅潮しながら、いくどもキャロに謝罪している。
ナツメは二人のやり取りを眺めながら、ミアにとって『その一声』を掛けるという行為が、難易度の高いコミュニケーションなのだろう、と何となく理解出来た。
「ミア」
ナツメはキャロルを制しつつ、ミアの可憐な瞳を見つめる。
「は、はい!」
「ここに来てくれたってことは、俺たちとパーティーを組んでくれるって理解していいかな?」
ミアは刹那、思案気な顔色になった。
すぐに「……はい、こんな私で良かったら」と答えた。
「やったー!!」
キャロルが飛び上がって、満面の笑みを浮かべる。
「念の為にもう一度言うけどパーティー組むっていっても、あくまで暫定的?な感じっていうか。ミアに何かしたいことが見つかれば、いつでも抜けてくれて大丈夫だし……。あ、いや。出来れば抜けて欲しくないんけど——」
たどたどしい口調になるナツメの脇をキャロルが小突いた。
——今、そんな野暮なこと言わなくてもいいじゃん、と言いたげな顔をしている。ナツメは咳払いをし、ミアに向かって片手を差し出した。
「これから宜しく」
ミアは差し出されたナツメの手をじっと見つめ、やがて自分の手を差し出し握手を交わした。
「こ、こちらこそ……宜しくお願いします!」
ナツメが微笑を浮かべたのを見て取り、ミアも微かに笑みを作って返す。——ほんと可愛い子だよな。ミアの笑顔を見ながらそんな想いを抱いたナツメは、雑念を振り払うように頭を左右に振る。
「よし、じゃあキーロフの村に帰るか。あ、キーロフっていうのは俺とキャロが拠点にしてる村なんだ。一度、そこに戻ることにするよ」
「よーし、出発進行!」
キャロルが威勢よく声を上げた。
ミアはリュックを担ぎ、歩き出すナツメとキャロルの後に付いていく。
彼女はふと、立ち止まり青く澄み切った空に浮かぶ羊雲を仰ぐ。
——お爺ちゃん、お婆ちゃん、お母さん。私、みんなのところに逝くの、少し遅れそうです。私を必要としてくれる人が居るから。だから、もう少し。もう少しだけ待っていて下さい。
「ミアちゃん!何してるの?早く早くー!」
前方からナツメとキャロルが、ミアに手を振っている。
「ご、ごめんなさい!」
少女は希望に満ちた心境を押し隠すように、大地を蹴り二人の元へ走り出した。




