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ミアは自宅の庭に植えられたアリシアの幹を背に、草地に三角座りしていた。一陣の風が時折、彼女の赤毛と猫耳をなびかせる。
ミアの猫耳には、ナイフで切ったような跡が残っていた。十歳の頃、まだ祖父母が生きていた時のことだ。
村の子供たちに異人種であることを罵倒され、泣きながらミアは家にあった果物ナイフで、猫耳を切り落とそうとした。
「こんな耳があるせいで、私はいつもイジメられるんだ!こんな耳もう要らない!」
それを祖父母に間一髪で止められたことで、ミアの猫耳は微かな傷跡が殘る程度済んだ。事情を聞いた祖父母は、彼女にこう言った。
「お爺ちゃんもお婆ちゃんも、ミアの猫耳が大好きだよ。お尻から生えてる尻尾もね。ミアは私達の自慢の孫だよ」
回想に耽っていたミアは、小鳥達のさえずりで我に返った。気づくと自分の周囲を、焦げ茶色の羽に白い羽毛をお腹に背負った小鳥の群れが集まっている。
「みんな、また来てくれたんだね」
ミアは脇に置いていた籠から長細いパンを取り出すと、先端をちぎって小鳥に向かって投げた。
小鳥達は我先にと、パンのかけらに群がる。ミアの肩に一羽の鳥が止まった。彼女が小鳥の頭を撫でると、小鳥は「クルルゥ」と鳴き声を発した。
ふと、鳥の群れから距離を置く純白の小鳥が目に止まった。
「お前もこっちにおいで」
ミアが白い小鳥に手招きするが、その小鳥は何故か躊躇して近寄ってこない。その様子を見てミアは直感的に悟った。
「お前も私と一緒だね……」
集団の中で違うカラーをした個体。そうしたものを人は時に嫌悪し、排斥の対象にする。
私はあの白い小鳥と同じだ。この村で異質の存在。本来、居るべきでない存在。だがその苦しみからも、じきに解放される。
フライスネークには、外から攻撃しても無駄だ。切り札だった呪符縛りが効かなかったことで、それが確定した。ならばどうするのか?結論は一つだ。——肉を切らせて骨を断つ。
ミアは滾る気持ちを抑えられなかった。あいつと刺し違えることが出来るなら、これほど本望なことはない。同時に自分の願いが二つ叶うのだから。
フライスネークが出現する頻度は、まちまちだ。一月以上、現れないと思えば、三日と待たずに出てくる場合もある。だが、もう奴の都合に合わせるつもりはない。
ミアが立ち上がると、小鳥達が一斉に空に向かい飛んでいった。
「三日後、ケリをつけてやる」
彼女は険しい表情で空を仰ぐ。
——待っててね。お爺ちゃん。お婆ちゃん。
ミアは胸中で、そう呟くと自宅へ戻っていった。




