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 ——恐らく、絶え間ない血の滲むような鍛錬を積んでいたのだろう。だが、ミアがあの蛇の異形種に立ち向かう理由はなんだろうか?

 そんなナツメの思案をかき消すように、フライスネークの雄叫びが辺りに響き渡った。

 煙が徐々に晴れていく。その合間から緑と銀が混じったような鱗と、毒々しい瞳で俺たちを睨みつける、フライスネークが姿を現す。

「そ……んな。呪符縛りが効かない……なんて」

 ミアが愕然《がくぜん》とした表情を浮かべている。

「キャロル、ミア!そこから離れろ!」

 ナツメは銃弾を込め直したライフルで、フライスネークの注意をこちらに向けようと、再び銃撃を始めた。その時、俺は妙な違和感を感じた。

 奴の頭部付近を狙った時に、フライスネークが忌々しげに、目と口を閉じたのだ。

 ——頭部への攻撃を嫌がってる?もしかしたら……あいつ。

「ナッちゃん!逃げて!」

 フライスネークがナツメに向かって巨大な牙をぎらつかせ飛来してくる。

 ——ヤバい。死ぬ。一瞬、走馬灯のようなものがナツメの頭を過る。

 その時、フライスネークの横っ面に炎の塊が直撃した。

「——これは?フレアボール」

 ナツメが火球の飛んできた方向を見ると、ジェフが下方の橋から、ロッドを掲げているのが見えた。

「ジャフ!」

 ナツメは感謝の念を心に抱きつつ急いで、その場から離脱すべく走り出す。大蛇はジェフの奇襲を忌々しがるように胴体をくねらせ、上昇し始めた。

「あいつ……」

 ——そう、顔面だ。奴は頭部への攻撃をやけに嫌がる。そこを刺せれば、もしかしたら。

 フライスネークは上昇しながら、キャロルとミアがいる小島に向かっていく。

「キャロル、ミア!」

 ナツメは走りながらライフルで大蛇を撃つが、上手く狙いが定まらない。もっとも当たった所で、奴にダメージなど与えられないだろうが。

 大蛇がキャロルとミアのいる、小島の上部に突っ込む。岩壁が崩れ、二人が宙に放り出される。

「きゃああああ!!」キャロルが大声で叫んだ。

「——っ!」

 ミアはキャロルの腰に手を回すと、指輪から糸を放ち、隣接して隆起している小島の岩壁に糸を巻きつけた。

 そのまま隣の小島にキャロルと共に飛ぼうとしたミアに、そうはさせじ、とフライスネークが襲いかかる。

 だが、ジェフが遠方から放つ火球によって、大蛇は軌道修正を余儀なくされる。フライスネークが湖面の方角の身体をよじった時、尾の先がミアに直撃した。

「ミアちゃん!」

 吹き飛ばされたミアに、抱きかかえられていたキャロルが叫ぶ。ミアは衝撃で気を失い、そのまま落下していく。

「こんにゃろぉーっ!」

 キャロルは気を失ったミアを抱え、落下しつつも近接する小島の岩壁を思い切り蹴った。

 ヘリオスの力により得た強靭な跳躍《ちょうやく》力で、キャロルはミアを抱えたまま、悠々《ゆうゆう》と近隣の小島に着地する。

 かくゆう、フライスネークはそのまま湖に急降下し、轟音と水しぶきをあげながら水中に消えていった。



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