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「待っててね。おじいちゃん。おばあちゃん」

 ミアがそう呟いた時、地鳴りのような振動が家を揺らした。彼女は立ち上がると、駆け足で外套を羽織りながら家の外に出る。周りを見渡すと、橋向かいの家々のドアや窓が一斉に閉じられていった。

 皆、怯えているのだ。奴に。ミアは目を閉じ全神経を五感に集中させる。彼女のつややかな赤い髪から伸びる猫耳が微かに動いた。

「……来る」

 ミアは瞳を開けると、大地を蹴り走り出した。



 ヤギウの樹洞は話通り、余裕で直立できるほど巨大な空間を形成していた。ヤギウの樹自体が常軌じょうきいっした存在であるため取り立てて不思議ではない。ジェフを先頭にナツメ、キャロル、アゲハをしんがりにした一行は樹洞の入り口から数百メートル進んだ地点にいた。

「なぁ、ジェフ。この樹洞にも異形種はいるのか?」

 ナツメはジェフに恐る恐る尋ねる。ヴィエジャの森に出現したゴーストみたいな奴がまた現れたらと思うと、正直生きた心地がしない。

「うーん、そこまでは俺も把握してないんだが……露店で聞いた話では、樹洞入り口の付近には異形種の姿は確認されてないそうだ。だが、深部まで行くとなると話は違ってくるだろう。みんな、心してくれ」

 ジェフは右手に持った松明を掲げながら三人にそう告げた時、洞内が激しい揺れが襲った。

「なに!地震?」

 アゲハが悲鳴をあげる。頭上から砂煙すなけむりが無数に落ちてくる。

「みんな、一旦外に退避するぞ!」

 ジェフの指示に従い、ナツメ達は大急ぎで来た道を引き返す。樹洞から出た瞬間、またも地面が揺れた。露天商たちの騒ぐ声が聞こえてくる。

「またか」

「勘弁してくれよ」

「まぁ、ヤギウまではやってこねぇから安心だけどな」

 ジェフが露天商の一人に「この振動のこと、何か知っているんですか?」と尋ねた。

「あぁ、こりゃポトラの村に出現する異形種が発生させてるんだ。こっちの大木までは襲ってこないから、気にせず発掘調査しな」

 聞き込みにいったジェフがナツメ達の元へ戻り、先ほど聞いた話を説明する。

「どういう異形種なのか分からないが、ここまで振動を轟かすなんて並大抵の大きさじゃないのは確かだな」

 ジェフは浮かない顔で呟く。

「私はそんな話、聞いてないわよ。第一、宿はポトラの村にあるし……村に異形種が出るんだったら退治するべきじゃない?」

「そうだな……」

 ジェフは何故か歯切れの悪い返事をする。

「とにかく、村に行ってみようよ!」

 キャロルの提案を受け、ナツメ達はポトラ村へ向け一斉に走りだした。

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