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猫耳の少女 1

 ポトラ村は一言で言わなくても珍妙ちんみょうな村だった。はての見えないほど巨大な湖に、無数の小島が浮かんでいる。いや、小島は言い過ぎかもしれない。

 浮かんでいる島は大小、違えど大きい小島でも面積は百平方メートルあるか無いかだ。

 芝生に覆われた島には木造の小屋が一、二軒立っていた。ここまでなら珍妙とは言わないかもしれない。

 湖に浮かぶ小島は、高さがまるで違っていたのだ。

 ナツメ達が立っている湖岸と同じ高さに浮かぶ小島もあれば、天高く隆起りゅうきし陸地が拝めない小島もある。

 高低差のある小島の間を木材と縄やらで造られた橋が、まるで蜘蛛の巣のように張り巡らされていた。

 どうやら高さの近い小島から、徐々に高地の島に橋をつなげているようだ。


 目当てのヤギウの大木は、ポトラの湖岸から東の位置にあるとジェフが教えてくれた。徒歩で二十分とかからない距離らしい。

「発掘準備もしたいし、取り敢えずこの村で宿を取ろう」というジェフの提案により、ナツメ達はポトラ村に立ち寄ることにした。

 湖に渡された橋の上を歩くとギシギシと軋む音がする。だが、思ったより頑丈な造りをしているようだ。橋を三つ渡った小島に宿屋と書かれた二階建ての建物があった。

 宿屋に入ろうとした時、四つ目の橋が掛かった小島から少年たちのわめき声が聞こえてきた。

 視線を向けると外套がいとうを深くかぶった小柄な人物が、ポトラの村人と思われる数名の少年達に取り囲まれているのが見えた。

 キャロルが何を思ったか、少年達の方へ向かって走り出した。

「おい、キャロ!」

 だめだ。彼女の耳にはナツメの声は届いていない。

「悪い!ジェフとアゲハは先に宿に入っててくれ!キャロは俺がすぐ連れ戻すから」

 キャロルを追ってナツメが橋を渡りきると、外套を目深まぶかに被った少女が地面にひざまずいていた。手に持った木製の手提げカゴから落ちた果物や野菜を拾っているようだ。

 状況から察するに、少年達にちょっかいを出され落としたのだろう。

「うわ!汚ねぇ。こいつ、地面に落ちたパンまで拾おうをしてるぜ!」

「おい、こっちにお前の食いもん転がって来たぞ。しょうがねぇから拾ってやるよ」

 少年の一人が足元の林檎りんごを拾い、手でもてあそびながら外套の少女に向かって思い切り投げつけた。

「どうすんだよ、お前の食いもんに触れちまったせいで、俺まで病原菌が移っちまうじゃねぇか!」

 その時、キャロルが足を踏み鳴らし「君たち!弱いものイジメはやめなさい!」と凄まじい声量で叫んだ。

 空気を震わす迫力に、少年たちが一瞬にして動きを止める。


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