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第7話・敗北の味

「「オーバードライブ」」

「ブースト3」

俺はブースト3に対し駿は

「ブースト2」


なるほど、舐めれてるな。まあいい。合格できればそれでいい。全力を出す必要は…

(考えてる暇があったら)


「(しかけろ!)ウォータースピア!」

横に走りながら魔法を放つ。が、

「ホーリーアーマー、オートディフェンス」


駿の体を光が覆ったと思えば、その光は俺のスピアを撃ち落としてきた。

(単体の攻撃はあれに防がれるなら、)


「カマイタチ!」


今度は駿の半径1mあたりを風が覆う。そして風は鋭利な刃物として駿に襲いかかり、更にその中に水も含むことにより鋭利さを増す。だが、


「やっと終わったか」


当然のように無傷。


(あのアーマーが厄介だ。多分今の魔法じゃほとんど通らないな…なら)

刀を構え、足に力をこめる。(ブースト5!)

一瞬だけブーストを上げ駿に突進する。ギャリン!

鍔迫り合いになるが、これはこっちが不利なのは俺も分かっている。この距離で、


「カタストロフィー!!」


カタストロフィー。火と土の合成魔法。地崩あいだ

から火が吹き出る上級中魔法


「なに!上級魔法だと!」


地崩れがおき、駿の足元も岩が盛り上がる。


「整地!」


整地。どんな凸凹の土地でも真っ平らにできる魔法。これを自分の靴の裏に魔法陣を付けることでこのなかで俺だけが自由に動くことができる。

俺は駿の後ろに移動し、刀を構え突進する。


(いける!)

だが、勇者はそんなに甘くは無かった。


「ホーリーブースト」


瞬間、駿の姿がブレる。左から足音がしたので刀を振りながら右に回避する。

ホーリーブースト。光魔法属性のみ使える特殊なブーストにより身体能力をブースト以上底上げする。


(あれが通じないとなると…勝つ方法がかなり少なくなるな…スピードでも負けている。)


初めの勝たなくてもいいという気持ちはどこかへ、自分の力がどこまで行けるのか試行錯誤するのが楽しかった。


「光分身」


また駿の姿がブレたと思ったら俺の周りを囲むように無数の駿が現れる。

光分身。光の屈折による分身。駿が開発したお手軽分身魔法。記憶を探ると対策魔法はすぐに出てきた。


「満たせ満たせ満たせ満たせ……」


続けると足元から水が湧き上がり、その水は俺たちを飲み込む。すると光の分身は無くなり、駿の姿があらわになる。

(水中ならどうだ!)

水流を作り駿に突っ込もうとするが、駿が剣を構えその周りには光が集まっている。口パクでなにか言っている。あれは……


(よ、け、ろ、よ、)

「!?」


俺は水流の向きを思いっきり真横にする。


「エクスカリバー」


剣を振り下ろすと水のフィールドは真っ二つに割れ、俺の魔法の水は霧散してしまう。

そして俺のいた位置には地割れのような跡があった。それを見て身震いする。


(これで本当に魔法は聞かないと言うことが分かった。なら殴り合いだが、長期戦は俺が不利。なら…)


居合の構えをとる。


「これで決める。カタストロフィー!」

「またそれか」


地割れが起き、炎が湧き上がる。が、今回は少し違う。地割れから溢れ出た炎から火でできた火竜が駿に襲いかかる。

駿は一瞬驚いた表情を見せながらも剣を1振りするとアーマーのオートディフェンスと剣の風圧で火竜は消し飛ぶ。だが、準備は整った。


駿が向いた先には先程と同じ構えをとっているおれの





分身


が、すぐにバレる。これはほんの一瞬の陽動。

ブーストには限界がある。ブーストは10以上使えないのだ。それ以上魔力を体に押し込めば体は耐えきれずに壊れてしまう。

だが、俺は超えられる。直感だが自分を信じるこれが勝利への近道。


「ブースト……14!!」


足元の土がえぐれる。体に今まで味わったことのない衝撃がくる。が、目は閉じない。強化を全力でかけて目を思いっきり見開く。

だが、駿もこのことはある程度予想していたようであらかじめホーリーブーストを付けられていた。

しかも4だ。ホーリーブーストは1だけでもブースト10くらいの強化がなせる。


目の前の駿が消える。


肩に痛みが走る。


今まで前方に向かっていたはずが、今は後ろに向かっている。




蒸し暑い夏のある日。

俺は生まれて初めて負けた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


駿

「はぁはぁはぁ…」


何とか勝てた。鉄仮面スキルを習得していなかったら顔は焦りでいっぱいだっただろう。

にしても、このガキは1体なんなんだ?

近距離で上級魔法のカタストロフィーを打ってきたり、あのブーストは明らかに10を超えていた。


「しゅーん大丈夫ー!?」

「由依。ああ、大丈夫だ。結構やばかったけどな」

「久々の苦戦…」


金太がふとこぼす。たしかに、こんなに焦ったのは魔王戦以来ではないだろうか?


「ひぃひぃ、お前ら!老人を置いて走っていくでない!」

「あ、爺さん。こいつ早く運ばなきゃな」

「そうじゃな。また無傷とは……小僧もおかしかったが、お主もやっぱり色々おかしいの」

「そうか?」


早くこの世界から帰る方法を見つける。魔王討伐も済んだことだし、帰る方法を見つけないと。だが、上では魔王の娘が生き延びていることを不満に思っている輩もいるらしい。

全員で帰りたかったのだが、1人欠けてしまった。これ以上戦争なんてして犠牲者は増やしたくない。


「駿」


金太が控えめに話しかけてくる。


「ああ、そうだな。早く運ぶか。」





「おお!駿!そいつどーだったんだ!?」

「ギャハハ!ボコボコじゃねぇかよ!」

「貴族様には無理だったってことだな」


なぜ勝手に決めつけるのか。本当に低脳で困る。まあ、この状況を見れば誰でもそう思うわな


「あなた達よりはよっぽどましな戦いだったわよ」


去り際に結衣がそう言い捨てるとシンと静まり返る。現実逃避しているのだろう。ナイス結衣



中に入ると白で満たされる。

現実世界の病院みたいな感じの清潔感が漂っている。


「やあ駿くん。久しぶり!と、今回の患者は彼だね」

「ああカリマさん話が早くて助かるよ」


マリラルド・カリマ。

回復魔法専門の医師だ。ボサボサの髪にメガネ、豊満な胸を見せるようにボタンの前は少し開けている。

医師というよりは研究者のような格好をしている。


「ふむふむ。うええ、体の中がボロボロじゃん。んでもってー、数本筋が逝っちゃっててー、骨も数本やっちゃってるねー。」


「なんだよそれ…死にかけじゃねえか」


「でもまあだいじょぶよん!そのための私だからね!」


そうだった。この人は世界でも数少ない回復属性の持ち主だった。俺達が使えるヒールなんかはせいぜい切り傷を少し癒す程度だが、この人の回復魔法は回復と言うよりもどちらかというと再生の部類に入るだろう。


「じっとしててねー。ヒー…」


ルを言い終わる前にカレンがベッドから飛び降りる。骨も折れてるのになんでそこまで動けるのか、


「いってぇ!」


「なにやってんのよ、アンタ身体中ボロボロなんだから大人しくしてなさい」


「ああ、大丈夫だ。それくらい1人でできる」


「一人だってねぇ」


俺の診察スキルで体を見てもわかるが、この量の傷は医師が数人がかりで治す傷だ。

医師でもないのに1人で治すのは不可能だろう。


「カレン、彼女は優秀な医師だ。しっかり治療を受けろ」


「ヒール」


話を全く聞かないカレンにため息を吐いていると、カレンの身体中が緑色に輝き出した。

驚きつつ魔眼を使う。俺の持つ魔眼は全てを見通せる魔眼だ。


「な…!?」


なんと身体中にヒールの魔法陣を展開させている。

一つ一つがかなり小さく、数は計り知れない。これだけの魔法を並行発動させる集中力と莫大な魔力。

どう考えても普通ではない。そしてその再生力もかなりいかれていた。カリマさんと同等。いや、それ以上の回復力だ。


「終った。意外とかかったな」


当たり前のことをしたように言っているが、皆呆けた様子でカレンを見つめている。


「な、なんだよ。なんか俺の顔になんかついてんのか?」


「いやの、4属性持ちにそのヒールの様な魔法。お主1体何者じゃ?」


「何者って言われてもな…英才教育としか言いようがないんだが。それにヒールの様なものって言われてもなただのヒールなんだが、」


「アルファは自分の子を兵器にでもするつもりなのか知らねぇ?」


「兵器って…まあ、多言しないでもらえると助かるな。色々面倒くさそうだし」


「安心しろ、運のいいことにここにいる全員は口が堅い。多言しないことを約束しよう」


「ありがとな。んじゃ、俺今日は疲れたから帰るな。刀貸してくれてありがと」


そう言ってギルマスに刀を渡して歩き出し数歩進んでこっちを向いた。

正確にはギルマスの方を向いて


「またな」


そういった。全員その意味は分からなかったが、ギルマスの持つ刀が少しだけ震えた様な気がした。


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