表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/70

第49話 勝者の後に訪れる裁き

第49話です。

激戦の勝利の後、戦場に残されたのは歓喜だけではありませんでした。

英雄の名を語ろうとする者、裁きを下そうとする者、そして――見守る父。

勝者の後に訪れる“本当の決着”を、ぜひ見届けてください。

その時だった。


「……お、おお……!」


瓦礫の向こうから、よろめく影が現れる。


軍団長バルタン。

満身創痍で、鎧は砕け、顔色も悪い。


「由香里殿……!」

慌てたように駆け寄り、声を張り上げる。

「見事な戦果だ! 流石は英雄の血筋!」


(……出た)


由香里が内心でため息をついた。

静かに前へ出ようとした――その時。


「待っていただきたい」


低く、冷静な声が割り込んだ。


英雄騎士団の背後から、姿を現したのは――

軍団参謀、ケイセンだった。


「この戦果について、整理が必要ですな」


バルタンの表情が、一瞬だけ強張る。


「な、何を言うケイセン。私は軍団長として――」


「いえ」

言葉を遮り、ケイセンは一歩前に出た。

「あなたは“何もしていない”」


空気が、凍りついた。


「四天王との戦闘記録、戦場配置、指揮命令ログ」

「すべて照合済みです」


淡々とした声のまま、続ける。


「由香里様と英雄騎士団が命を懸けて戦っている間、あなたは撤退を優先し、戦場を放棄した」

「それを、今になって“自分の戦果”としてまとめようとする……」


「き、貴様――!」


バルタンが怒鳴りかけた、その瞬間。


ケイセンの手が、懐へ滑り込んだ。


――刃が、閃く。


「……だからです」


冷たい声。


「あなたは、ここで終わるべきだ」


刃は、確実に急所を狙っていた。


だが――


ガキンッ!!


乾いた金属音が、戦場に響いた。


刃は、寸前で止まっていた。


ケイセンの手首を、鋼のような指が掴んでいる。


「……随分と、短気になったな。参謀殿」


聞き覚えのある声。


誰もが、息を呑んだ。


「……お父さん?」


由香里が、目を見開く。


そこに立っていたのは――

血と埃にまみれながらも、揺るぎない存在感を放つ男。


"英雄"達也。


「な……!?」

「英雄……!?」


騎士たちがどよめく。


達也は、ケイセンの刃を軽く弾き飛ばし、静かに告げた。


「私情での処刑は、後味が悪い」

「罰は――もっと相応しい形で下されるべきだ」


そして、懐から一通の封書を取り出す。


王家の紋章が刻まれた、正式な信書。


「国王陛下よりの勅書だ」


達也が読み上げる。


「軍団長バルタン」

「度重なる作戦失敗、独断専行」

「戦場を私的権威の誇示に利用し、国王軍を幾度も窮地に陥れた罪により――」


一拍置き。


「王位継承権、剥奪」

「並びに、王宮地下牢への投獄を命ずる」


言葉が、刃となって突き刺さる。


「ば……馬鹿な……!」

バルタンは膝をつき、震え出した。

「そ、そんな……私は王族だぞ……!」


「だった、な」


達也は淡々と告げる。


「今は、ただの罪人だ」


兵士たちが前に出て、バルタンを拘束する。


ケイセンは、静かに頭を下げた。


「……判断を誤りました」

「お戻りになるとは、思っていなかった」


「フレイヤを倒して、すぐ王宮へ戻った」

達也は由香里に視線を向け、わずかに笑う。

「娘の晴れ舞台を、見逃すわけないだろう?」


由香里は、胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。


(……ああ)


(やっぱり、この人は……)


英雄騎士団の誰もが、理解していた。


――戦場に立つ英雄は、もう一人いる。


だが同時に。


由香里が、一歩前へ出た。


「……お父さん」


達也は、娘を見る。


その眼差しは、もう“守るべき子供”を見るものではなかった。


「やったな」


短い言葉。


だが、それだけで十分だった。


由香里は、胸を張る。


「うん」


戦場に、再び静寂が訪れる。


だがそれは、死の沈黙ではない。


英雄たちが立ち、

罪ある者が裁かれ、

新たな時代が、確かに動き出した――


そんな、始まりの静けさだった。

ここで一区切りとなる裁きの回でした。

力だけでなく「責任」を描きたかった回でもあります。

由香里の成長と、父・達也の在り方が少しでも伝わっていれば幸いです。

次回から物語は、さらに新しい局面へ進みます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ