↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
56/129

第48話 英雄の名を持つ者

四天王最後の二体、その前に立つ由香里。

英雄の血ではなく、英雄としての“意志”が試される瞬間。

静まり返った戦場で始まる、決着の一撃をお楽しみください。

世界が、静まり返っていた。


だがそれは――

戦いが終わったからではない。


終わることを、誰もが直感していたからだ。


由香里の前に立つ2体の四天王。

海竜王シーザリオンと、刃獣王ゴルディアス。


その眼には、確かな動揺が宿っていた。


「……馬鹿な」

シーザリオンが、喉の奥で低く唸る。

「さっきまでとは、まるで別の存在だ……」


「だが――」

ゴルディアスが、爪を地面に立てる。

「我らは四天王。超獣化の力を疑う理由はない」


2体は、同時に魔力を解放した。

海と大地が呼応し、殺意が嵐のように収束する。


「行くぞ、英雄の娘――否」


シーザリオンが、由香里を睨み据える。


「英雄」


次の瞬間――

暴力の奔流が、由香里へと殺到した。


◆


だが。


それは、攻撃ですらなかった。


由香里は、動かない。

構えもしない。


ただ――一歩、踏み出した。


《解析完了》

《最適行動――実行》


“アデュー”の声と同時に、世界が折り畳まれる。


シーザリオンの放った水龍砲は、由香里の横を通過する前に“消失”した。

ゴルディアスの突進は、距離そのものが否定され、踏み込みが成立しない。


「――なに?」


理解する前に、終わっていた。


由香里の姿が、2体の懐に同時に存在した。


剣でも、拳でもない。

由香里が振るったのは――意志だった。


「――ごめんね」


「幻日流秘奥義 天地鳴動!」


その一言が、最後だった。


◆


音は、なかった。


光が走り、

空間が一瞬だけ、静止する。


次の瞬間。


シーザリオンの巨大な胴が、真っ二つに分断される。

切断面は、燃えることも、凍ることもなく、ただ“終わり”を迎えていた。


「……見事、だ……」


崩れ落ちながら、シーザリオンは笑った。


「英雄の名に……相応しい……」


光となり、海へと還っていく。


同時に。


ゴルディアスの身体が、内部から崩壊を始めた。


「は、はは……」

血を吐きながら、それでも立ったまま、由香里を見る。

「刃を極めたつもりだったが……まだ、先があったか……」


最後に、深く頭を下げた。


「貴様と、その騎士団に……栄光を……」


次の瞬間、

刃獣王は黒い粒子となり、完全に消滅した。


◆


――静寂。


次いで。


「「「うおおおおおおおおお!!!」」」


英雄騎士団の歓喜の雄叫びが、戦場を震わせた。


「勝ったぞ!!」

「四天王を、全て討ち取った!!」


誰もが、抱き合い、泣き、叫んだ。


由香里は、その中心で、静かに息を吐いた。


《戦闘終了》

《英雄因子“アデュー”、安定》


「……ありがとう」


《当然です》

《私は、あなたですから》


由香里は、微笑んだ。

四天王との戦いに、ついに終止符。

由香里は「英雄の娘」ではなく、「英雄」として立ちました。

次回は戦いの後――静けさの中で動き出す、人の思惑が描かれます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。