表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/34

第三章 戦いの始まり 第8話(前編) 二人の女子高生 ―狙撃の街角―

夜の街を狙う一発の銃弾。

その標的は、ただの女子高生――のはずだった。

だが、弾丸を受けたはずの彼女は生きており、

暗殺者の背後に現れた。

空間を跳躍する少女・加山久美。

彼女を狙う“プロ”との激突が始まる。

1発の銃弾が風を切り裂き、夜の街を一直線に飛んでいく。

ネオンの明滅が弾丸の軌跡を照らし、通りの喧騒にかき消されながらも、

その弾は正確に、制服姿の女子高生の頭部を撃ち抜く――はずだった。


スコープ越しにそれを見届けた暗殺者・レオは、無音で立ち上がる。

「任務完了」

その瞬間、背後に殺気。反射的に身を捻る。


風を裂く音。REGALの革靴の踵が、頭上から振り下ろされていた。

すんでのところでかわすも、次の一撃――しなやかな脚が彼の顔面を撃ち抜く。


「ぐっ……!」

レオは壁に叩きつけられ、息を詰まらせた。

目の前には、月光に照らされた長身の女子高生。制服の胸元には「運動部総合部長」の刺繍。


「街中でライフルって、頭おかしいんじゃないの?」

少女――加山久美が冷ややかに言い放つ。


長い黒髪が夜風に揺れ、鋭い瞳が暗殺者を見据える。

「……どういうことだ。5キロ先のターゲットを撃ち抜いたはず……」

レオの脳裏に混乱が走る。


「空間跳躍は疲れるのよ。髪も爆発、肌荒れもするし」

久美は淡々と髪を束ね直した。

「でも、命狙われたら使わないわけにいかないでしょ?」


「空間跳躍……だと?」

そんな技術、聞いたこともない。

「お前、ただの学生じゃないな……!」


「まぁ、質問する側を逆にしたいなら、勝ってからにして?」

久美が静かに重心を落とす。その動きは、長年鍛え抜かれたアスリートそのもの。

脚の筋肉がわずかにしなり、次の瞬間――。


「なめるなッ!」

レオが突進。拳が唸りを上げる。

久美は紙一重で避け、軸足を軸に回転。脚が風を裂いてレオの胸を蹴り上げる。

一撃、二撃。

連続する脚技を、レオは腕で受け、ナイフを抜いて応戦する。


火花が散る。

「動きが……読めないッ!」

レオは冷や汗をかきながらも反撃するが、久美の動きはまるで影。

滑るようにかわし、瞬時に間合いを詰めて拳を叩き込んだ。


「っ……化け物め」

ナイフが宙に弾かれ、地面に突き刺さる。

久美は息を整え、髪を払った。

「化け物じゃないわ。努力の成果よ」


その時だった。

街の一角が閃光に包まれ、轟音と共に路面が裂けた。

光の柱の中から、長身の女が歩み出る。黒いレザースーツ、冷たい笑み。


「レオ、何を手こずっているの? 高校生一人に苦戦って、笑わせる」

「リサ……こいつは普通じゃない。空間移動ができる」


「は? 寝言言ってる暇があるなら、仕事しなさい」


リサが瞬時に距離を詰める。

一歩、二歩、そして一閃――。

左のボディ、右の正拳。久美は受け、いなして反撃。

空間が軋むほどの衝突。

両者の動きが閃光のように交錯する。


「……レオの言ったこと、今なら信じてもいいかもね」

リサが左腕を押さえながらつぶやく。


「リサ、二人で行くぞ。単独じゃ無理だ」

「珍しいわね。あんたが弱気になるなんて」

二人の暗殺者が頷き、再び襲いかかる。


久美は深呼吸を一つ。

月明かりに照らされたその瞳が、戦いの炎を宿す。


――しかしその瞬間。

リサの右側から、突如として殺気を帯びた一撃が飛び込んだ。

轟音。リサが弾き飛ばされる。


「二人がかりで女子高生一人? 恥ずかしくない?」


仁王立ちする影。

制服の胸元には「生徒会長」のバッジ。

生徒会長――新堂瑠璃が、静かに立っていた。

久美の圧倒的な身体能力と空間跳躍。

しかし、暗殺者たちは一枚岩ではなかった。

新たな敵リサの登場で、戦いはさらに激化する。

そして――彼女の前に、もう一人の“最強の女子高生”が現れる。

次回、後編。夜の街で光と影が交錯する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ