聞き上手
「井上センセー、ちょっといい?」
「どうしたの?難波くん」
「はい、これプレゼント!」
「何?これ」
可愛いラッピングをされた小さな箱を渡した。
「バレンタイン!先生に。」
「へえ。チョコレート?」
「ううん。マカロン」
好きだよね、ラドゥレのマカロン!えへっ
チョコは嫌いだもんね。
気の利く僕!偉い
「センセー、男好きでしょ?」
「どうしてそう思うの?」
それは…
『ねえねえ、男の人でね、学生みたいに若いとかじゃ無い人でおじさんでピアスの穴沢山開けてる人ってどんな人だと思う?』
『そだねー、バーテンとかバンドマンとか美容師とか?』
『ううん。普通のサラリーマン。昔開けたって感じじゃなくて塞がってないの。多分休みの日とか付けてる感じ?』
『それじゃあゲイとかなんじゃない?』
『やっぱそうだよねー!有難う瑠奈、絵里、楓!じゃあ!』
『どーしたんだろ?晴海…』
他の人からみてもやっぱりそう思うよね!
よし、ここはカマをかけるぞ。
「俺同類分かるから。鼻が効く。ほぼ当たる。」
「だとしたらどうなの?」
よっし!ビンゴー!
「じゃあさ、僕と付き合ってよ」
「難波くんと?恋人として?」
「うん。そう。」
「何で?」
「センセーが好きだから?」
「僕のどこが好きなの?」
「カッコいい所?」
あと可愛い所もね。
「こんな普通のメガネ掛けたスーツのおじさんが?」
「うん。僕、年上好きだから。」
メガネ取って前髪無いとカッコいいの知ってるからね!プン
「ふうん。今付き合ってる人は居ないの?」
「居るよ?」
「へえ。他に恋人が居るのに僕と付き合いたいの?」
「そう。」
「どうして?」
「その人も沢山の人と付き合ってるから。」
本当はお試し期間だからだけど…ゴメンね
「嫉妬させたいの?」
「そう。」
井上センセーちょっとオコ気味?もしや僕に嫉妬してるの!?
やだー!どうしよー!キュン!
「僕を都合よく利用したいって事かな?」
「うーん、まあそうなるのかな?」
ゴメンちゃい。サンプル扱いのお試し期間なんで…
でももう乗り換える気は満々かも!
増田先生は直ぐにオッケーしてくれた。
井上センセーはやっぱ増田先生の時と違って色々質問してくれるし…
何か大事にされてるって実感してるかも…
「じゃあ良いよ。付き合ってあげる」
「ホント!有難う!センセー大好き!」
うそお!わあい!やったあ!大好き!
になっちゃってるな、多分…僕…
○○○○○○○○○○
「先生にセンセーの事言ったらね…先生驚いてたよ!僕の付き合ってる人塾の先生でね」
「その、もう1人の付き合ってるって塾の先生って?」
「うん、増田先生っての!」
「へえー!そんな偶然ってあるんだ。僕も驚いちゃった。」
増田先生と井上センセーと先生は大学の同級生!
もうこれだけでドラマとか作れそう!
甘王子のイケメン増田先生と塩王子のメガネを取ったらイケメン井上センセーが先生を取り合う三角関係…
もうキュンが止まらない〜!
なんてトキメイていたら
「増田はノンケで年下の女の子好き、長沢は会う度違う男連れてて、学生時代は僕は2人が苦手だったな。あっちも僕の事そう思ってるだろうね」
だってー。つまんなーい。
センセーとはキスはおろか身体の関係も無かった。
大事にされてる〜!って最初は増田先生との対応の違いにドキドキしちゃったけど…
これってやっぱ意識されてないってか…
子供扱いされてるよね!?
見た目も子供だしなあ…
勿論中身もだけどさ…
でも…
「でね、でね、そしたら相手がね、強がりの裏返しは怖がりなんだよって!」
「へえ。」
「それでね、スマホ無くてもカードにチャージ有るじゃんって。冷静になると分かる事ってあるよねー」
「ほお」
「そうしたらさ、でも大事な事に限ってすぐ忘れるよねーって思ったら何か怖く無くなっちゃってさー。」
「そうかあ」
センセーは僕の内容の無い、なんて事ない話をずっとニコニコしながら聞いてくれてる。
元々お喋りな僕はある程度喋ると大体ウザがられて止められてたから嬉しくって夢中になってた。
多分もうセンセーにも夢中になってた…
増田先生の事を忘れてる時間がどんどん長くなって来てた。




