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【1部完結】クズの婚約者は金ヅルにしますのでどうぞお構いなく  作者: いか人参
2部

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25/32

25.公爵家本邸へ

2部と称して、本編完結後のお話を少し書いていければと思います!



「それで、貴方のお母さんには私たちのこと何て説明するの?」


舗装された街道を軽快に走る馬車の中、車窓からの景色を楽しんでいたシャルロッテが視線を車内に戻して、向かい側に座るアレクスティードに尋ねた。


僅かに開けた窓の隙間から穏やかな風が入り込み、彼女の後毛を揺らす。



「別に嘘をつく必要はないよ。」


ずっとシャルロッテだけを熱心に見続けていたアレクスティード。

やっとこちらを向いた愛しの花に甘い顔を向けるが、その情熱は身を結ぶことなく、彼女の視線はまたすぐに外に向かっていった。


それぞれ違うものに目を奪われる中、車輪の音だけが車内に響く。



快晴のこの日、二人は馬車で公爵家本邸へと向かっていた。新婚生活を始める前に彼の母親に挨拶をする為だ。婚姻だけ先に済ませてしまったため、色々と後手に回っており、現在優先度の高い物から順に対応している最中であった。


公爵領は王都から馬車で半日ほどの距離にあり、午後のお茶を共にした後帰宅する予定になっている。


初めて王都の外に出たシャルロッテの目はキラキラと輝き、食い入るように外を眺める。ふと斜め上に視線を向けた後、流れる景色に目を向けたまま尋ね返した。



「じゃあ、賭博場で目を付けられた後、尾行されて偶然を装って酒場で出会い、飲み比べを吹っかけられて潰されて、何やかんやあって法外な好条件を突きつけられ、結局弟の最終判断で結婚に至りましたって話でいいのかしら?」

「待って…それちっともよくないんだけど。」


建前も遠慮も配慮もない、どストレートな言葉で事実だけを並べたシャルロッテ。それはまるで犯罪のような内容だった。


ショックを受けたアレクスティードが項垂れて頭を抱える。



「ねぇ、俺ってそんなに悪いことしたの…?」


「いいえ?大金を叩いてくれたんだもの。とても良いことをしてくれたわ。」


「それ語弊しかない気がする‥」


一瞬シャルロッテの言葉で心が負けてしまいそうになったが、頭を振って気合いで気持ちを立て直す。



「うん、シャルが喜んでくれるならそれでいい。だから母さんへの説明は俺に一任して。」


「言われなくても任せるわよ。ねぇ、アレクのお母さんってどんな人なの?」


「悪い人ではないと思うけど…ちょっとクセが強いかも。まぁ会えば分かるよ。」


「そう。貴方と同じってことね。」


「いや、俺のことどう見てるわけ?」


身を乗り出して本気で疑問に思ったアレクスティードだったが、再び窓の外に興味を示し始めたシャルロッテには届かなかった。


問いただしたい気持ちもあっだ、子どものように澄んだ目で外を見る彼女を邪魔するのは忍びなく、頬杖をついてシャルロッテを見つめることにした。



休憩をとりながら順調に走り続け、馬車は予定通り昼過ぎに本邸へと到着した。


王都から少し距離のある公爵領は、大きな湖もある緑豊かで広大な土地だ。代々受け継がれてきたこの場所は毎年豊作で、安定した税収入を得ることが出来ている。


そのため、領地のシンボルとなる本邸の規模も凄まじかった。

一つの農村かと見紛うほどの広い土地を馬車でひたすら走り、ようやくアーチ型の巨大な門が見えてくる。顔パスで門をくぐり、馬車は正面玄関前のロータリーに停車した。


玄関前にずらりと使用人が整列し、頭を下げた状態でアレクスティード達が馬車から降りるのを待っている。




「なんていう…」


窓の外をちらりと見たシャルロッテが驚いて息を呑む。



「ごめん。大袈裟なことはしないようにって伝えておいたんだけどな。シャル、気にしなくていいからね。」


「気にするわよ。だって、荷物持ちなんて1人2人いれば十分なのに、この頭下げて立っている人全員にお給金が発生するでしょう?とんでもない無駄遣いだわ。」


シャルロッテの明後日の方向をした指摘に、アレクスティードが苦笑した。同時に、彼女の通常運転に安堵する。



「まぁ、仕事を生み出すのも領主の仕事だからね。じゃあ行こうか。」


笑顔で手を伸ばしてシャルロッテの手を取る。


彼が合図をすると、外側からゆっくりとドアが開いた。エスコートしながら颯爽とステップを降りる。



「俺を信じて。」


身を屈めて、周囲に聞こえないようシャルロッテの耳元にそっと囁く。

これから興味関心の対象になってしまうであろう彼女に、少しでも不安を取り除きたいと声を掛けた。何より、自分が絶対的な味方だと伝えたかった。



「信じるも何も、嘘を見破るのは得意よ。」


よそ行きモードに切り替えたシャルロッテが微笑を浮かべ、美しい姿勢で前を向いたまま答える。


その横顔が美しくて頼もしく、つい見惚れてしまった。どんな状況下でもブレない唯一の眼差しに、あぁこの人が好きなんだと思い知らされる。


ぎゅっとする胸を抑えるように軽く息を吐いた。



「うん。」


平常心を保ったつもりが、僅かに声が上擦る。


凛と歩くシャルロッテの隣で、彼は動揺したまま久しぶりの帰還となる故郷の土地に降り立ったのだった。





お読みいただきありがとうございました!

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