閑話 リレイラの想い
〜リレイラ〜
ヨロイ君とボス戦の振り返りが終わって、彼はすぐにお風呂に入って寝てしまった。疲れていただろうしな、悪い事をした。
彼が出た後にお風呂に入り、湯船へ浸かる。冷えた体に温かい湯が染み渡り、生き返ったような心地がした。みなかみ町……か。この土地は冷えるな……。
「ちょっと、熱くなりすぎたかな」
今回、私は管理局からヨロイ君への直接的なフォローを許されている。だからこそ眼界魔法で彼の見る物を一緒に見る事にしたのだが、それは同時に心臓に悪いことでもあった。彼の戦闘を、命の駆け引きを目の当たりにするのだから。
彼の持ち味は創意工夫と持ち前の勇気だ。しかし、その勇気に私は疑問を持っていた。ダンジョン攻略をゲームのように考えているというか……自分の死をどこか達観しているような、そんな姿勢が。
彼がヴァルガードと初遭遇した時、私はいてもたってもいられなくなってしまった。彼が死んでしまったらと思うと……。
その理由は分かっている。彼が私を慕ってくれるからだ。私が魔族であるにも関わらず。
ダンジョン管理局にいる魔族は、この世界の支配が全て終わってから派遣された後発組だ。この世界をどのように支配下に置いたのか、実際目にした訳ではない。
だが、人間には関係が無い。私達がそれぞれどのような考えを持っているか関係無く「魔族」として一括りになる。魔族というだけで私を恐れる者も多い。
だが、ヨロイ君は違う。いつも真っ直ぐ私を見てくれる。私をリレイラさんと名前で呼んでくれる。それが……私には嬉しかった。だから、私は彼を絶対に死なせたくない。
彼が立派なダンジョン探索者となれるように、私がいなくても1人で攻略を続けられるように。
……彼の「好き」を、守れるように。
私は彼を導かなければならない。厳しくしなければならない。
彼と近づきすぎず、離れすぎず、距離を保たなければ。
だけどなぜだろう? ヴァルガードと戦ってから、私の中に何か違うものがある気がする。ヨロイ君と向かい合うと、顔が熱くなってしまう。
「なんだろう、これ……」
私の住んでいた地域では異性と接触するなんてほとんど無かったから……こんな気持ちになることは無かった。適正な年齢になれば、夫となる者を紹介され、どちらも疑問を持つ事なく結婚する。それが普通だったし……。
こんな感情は、持った事が無い。
「私、変になってしまったのかな……」
湯船に深く体を入れて、天井に手を伸ばしてみる。そうしていると。二度目のヴァルガード戦の時に彼が口にした言葉が思い浮かんだ。
── 見てて下さい、俺の攻略。
彼は、言葉通りに本当にヴァルガードを攻略してみせた。彼よりもずっと格上の敵であったにも関わらず……。勝ってくれた。私の所へ帰って来てくれた。
「すごいな、ヨロイ君は……」
その時のことを思い出すと、私の顔はまた熱くなった気がした。
次回、461さんは町で準備し、新たな階層へと向かいます。リレイラともある約束を……?




