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第三百十話 戦いの駆け引き⑦

「さて、此ノ里結愛を滅ぼす手助けをしようかの」


うっとりと笑ったベアトリーチェの頬に朱の色が昇った。

『不変』を意味するその名を有したベアトリーチェは女神である。

状況を手繰りながらも、前線に飛び出すのはあくまでも興味本位と信じるが故だ。


「皆さん、これ以上は行かせませんよ! 私達にとって奏多くんは大切な存在です!」

「……結愛!」


ベアトリーチェ達から狙われている。

何とか状況を飲み込んだ結愛は勇気を振り絞り、奏多の前に立った。


「『破滅の創世』様……!」

「おっと、それ以上は行かせねえぜ!」


そう吐露したレンの前に、慧も立ち塞がる。


「奏多、結愛、ここは任せな!」

「慧にーさん……!」


慧は、奏多達がこの場から離脱する猶予を作るようにレンに向けて発砲した。

弾は寸分違わず、レン達に命中するが、すぐに塵のように消えていく。


「結愛。今のうちに、この場から離れよう!」

「はい、奏多くん!」


幾度も生じる猛撃。

奏多は結愛とともに、この場から離脱するために力を振り絞っていた。

とはいえ、ベアトリーチェ達の狙いは、どこまでいっても『破滅の創世』である奏多と結愛。

敢えて、火中の栗である慧達を拾いにはいかない狡猾さを具備していた。


「また、慧にーさん達の攻撃を無効化したのか……?」

「ほええ、最悪です。攻撃が効いていないですよ!」


奏多と結愛がじわじわと押し込まれていく中、ベアトリーチェ達の攻撃は徐々に苛烈さを増していく。

ベアトリーチェ達がその気になれば、奏多を連れてこの場から立ち去ることも可能だろう。


「厄介極まりねえな」


流石にそう簡単には通してくれないかと、慧は思考を巡らせた。


静寂が満ちた。


一族の上層部にとって、最大の誤算は別世界の女神と別世界の者達の介入だった。

彼らさえいなければと思うことは幾度も起こり、そして今もまた起ころうとしている。

一族の上層部の者達の動向。

それらを利用されても、戦うことを、挑むことをやめないのは、それが一族の上層部の矜恃に連なるものゆえだろう。


「『破滅の創世』の配下達を何とかしても、暴動に関わっている……女神の配下の者達がいる。一族の上層部の上部が総出で、暴動の鎮圧に当たっているとはいえ、先行きは不安だな」

「そうね……。かなり厄介そうね」


慧の言葉に、透明感のある赤に近い長い髪をなびかせた観月は表情を強張らせる。

神の配下の力は強大だ。

その上、不老不死である。

何かあれば、勝敗の天秤は神の配下達に傾くだろう。

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