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第三百六話 戦いの駆け引き③

「何しろ、此ノ里家の者の一人が、『破滅の創世』様に想いを寄せている上……此ノ里家の者達が、『破滅の創世』様の記憶を封印しているんだからな」


結愛の奏多を想う心。

そして、一族の者のうち、記憶を封印する力を持つ此ノ里家の者達が主体となって、奏多の神としての記憶を封じ込めたという事実。

それは、『破滅の創世』の配下達にとって決して看過できないはずだ。

ヒューゴがそう考えたように、レンの視線は静かに結愛へと向く。


「……此ノ里結愛さん。あなたはやはり、危険な存在のようですね」


結愛の切実な想い――。

その事実を前にして、レンの雰囲気が変わる。

揺れるのは憂う瞳。

それは剥き出しの悲哀を帯びているようだった。


「『破滅の創世』様、この世界は最も神を冒涜しておりました。故に滅ぼさなくてはならないのです。神のご意志を完遂するために」


その存在を根絶やしにすることは、『破滅の創世』を救える唯一の方法であるというように――。

そう告げるレンは、明確なる殺意を結愛達に向けていた。


「その人間の言葉に惑わされてはいけません。これから何をしようと一族の者の罪が消えるわけではないのです。私達が決して許さないことが、彼らの罪の証明となる」


平坦な声で、レンは結愛の決意を切り捨てる。


「此ノ里結愛さん。一族の者である……あなたが、『破滅の創世』様にそのような感情を抱くなど、あってはならないのです」

「そんなことないです! 明日、今日の奏多くんに逢えなくても、私は明日も奏多くんに恋をします! 怖いですけど……すごく不安ですけど……もう逃げません!」


レンが嫌悪を催しても、結愛は真っ向から向き合う。


「奏多くんが大好きだから!」


最後まで自分らしく在るために――結愛は今を精一杯駆け抜ける。

それは結愛なりの矜持だった。


「……分かりました」


レンが深刻な面持ちで告げる。

苦渋に満ちたその顔からは、その奥にある感情の機敏までは読みきれない。


「ベアトリーチェ様。此ノ里結愛さん。まずは『破滅の創世』様を惑わす、この人間から滅ぼしましょう」


結愛の決意を目の当たりにしたレンが深刻な面持ちで告げる。

『破滅の創世』の配下達。

彼ら全員の狙いは、どこまでいっても『破滅の創世』である奏多。

敢えて、火中の栗である慧達を拾いにはいかない狡猾さを具備していた。

だが、此ノ里家の者達……特に結愛は別格なのだろう。


「そんなことさせないわ!」


その言葉に、即座に反応したのは観月だった。

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