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第三百五話 戦いの駆け引き②

「何度も同じ手は通じません」


レンは、ヒューゴの思惑を切り捨てた。

緊急脱出装置がある場所を察知し、即座に破壊したのだ。

矢継ぎ早の展開。

それも唐突すぎる流れに、一族の上層部の者達は顔をしかめる。


「ヒューゴ様」

「これでいいんだよ。緊急脱出装置の場所を把握されているが、すべてを破壊されていないからな」


一族の上層部の者の戸惑いに、ヒューゴはやれやれと肩をすくめる。


「緊急脱出装置を利用すれば、しばらくは時間稼ぎにはなる。まあ、それが通じなくなっても、俺はここで死ぬつもりはないから、できる限りの足止めをさせてもらう」


ヒューゴは薄く笑みを浮かべて言った。


「しかし、どうやって……」


一族の上層部の者の躊躇いに応えるように、ヒューゴは唇を噛む。

このまま、悪戯に時間を消費しても平行線だ。

何もしなくては『破滅の創世』の配下達の前に為す術もなく朽ち果てるだけだろう。

ならば、機先を制した方が確かだ。


「皆さん、これ以上は行かせませんよ! 私達にとって、奏多くんは大切な存在です!」

「……結愛!」


ヒューゴ達とベアトリーチェ達が相対している。

結愛はその隙に、奏多のもとに向かおうとして。


「此ノ里結愛さん。この場を切り抜けるには、あなたの力が必要です」

「はううっ……」


一族の上層部の者達の妨害に、結愛はわたわたと明確に言葉を詰まらせた。


「そうさ。今の『破滅の創世』様にとって、此ノ里結愛の生死は何よりも重要だろう」 


奏多の姿を認めてから、ヒューゴは薄く笑みを浮かべて言った。


「……はううっ、重要?」


それはただ事実を述べただけ。

しかし、ヒューゴの言葉は、結愛には額面以上の重みがあった。


「あと、あの……できれば、重要だけではなくて」

「結愛?」


それを願うのは欲張りだと思いながらも、結愛には離れがたい気持ちだけが増していく。


「奏多くんの未来のお嫁さんになりたいです!」

「……っ」


結愛が覚悟を決めて、奏多を切望する。

その独占じみた想いに、奏多の胸が強く脈打った。


「……お嫁さん!?」


結愛の爆弾発言に、奏多は虚を突かれた。


「本当の本気の本物の最大級の願い事です!」

「ゆ……結愛……」


そう意気込んだ結愛と戸惑う奏多の視線が再び、交差する。

全てを包み込むような温かな光景は、張り詰めていた戦況の空気を優しく解きほぐす。

だが――。


「そうさ。此ノ里家の者達は、『破滅の創世』の配下達にとって見過ごせない存在だろう」 


そんな二人の姿を認めてから、ヒューゴは薄く笑みを浮かべてから言った。

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