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第三百話 平行線をたどる⑤

「結愛は俺にとって大切な存在だ。絶対に守ってみせる!」


奏多は不撓不屈の意思を示す。

結愛を守るために身体を張って前に出た。


「奏多くんが守ってくれる……」


奏多の名を口にするだけで愛おしさがこみ上げる。

同時に切望する思いが広がった。

奏多に伝えたい想いはたくさんある。

これから長い時を一緒に過ごすたびに、それは増えていくのだろう。


「あの、あの、あのですね」

「結愛……?」


その時、結愛が真剣な眼差しで奏多のもとににじり寄ってくる。

そして、顔を上げて願うように言葉を重ねた。


「……奏多くん、これからも好きでいてくれますか? もし、神様の記憶を完全に取り戻したとしても……あの、あの、私のこと、好きでいてくれますか?」

「当たり前だろ」


奏多が発した言葉の意味を理解した瞬間、結愛の顔は火が点いたように熱くなった。


「はううっ。……もう一回、もう一回!」


妙な声を上げながら、身をよじった結愛が催促する。


「今のって、当たり前だろ、ってやつか……」

「うわああ、すごい……幸せです……。も、もう一回!」

「当たり前だろ」

「きゃーっ」


張り詰めていた場の空気が温まる。

この瞳に映る花咲く結愛の笑顔が春の温もりのように感じられて。

奏多は強張っていた表情を緩ませた。


「つーか、このやり取り、いつまでも続きそうだな」

「結愛のことだから、いつまでも続くと思うわ」


戦乱の中で、慧と観月は弟と妹が紡ぐ温かな光景を見守っていた。

奏多と結愛が抱く永久の想い。

その安らぎが、少しでも永くあることを願って。

しかし――


「……分かりました」


奏多達の光景を目の当たりにしたレンが深刻な面持ちで告げる。

苦渋に満ちたその顔からは、その奥にある感情の機敏までは読みきれない。


「本来なら、『破滅の創世』様のご意志でお戻りになられることが理想でしたが……仕方ありません」


それはただ事実を述べただけ。

だからこそ、レンは改めて、今の奏多の――『破滅の創世』の置かれた状況に打ちのめされていた。


奏多と結愛の温かな交流。

だからこそ、レンの胸を打つのはあの日の悲劇。

ここは、そこへと通じる道だと痛いほどに思い出す。


「『破滅の創世』様。記憶が戻る前に、無理やりお連れすることをお許しください」

「……っ」


警戒の表情を浮かべた奏多に対し、レンは恭しく礼をした後、小さく口にする。

 

「神である『破滅の創世』様が、人の心を持つこと。それは危険な状態なのです」


レンはあくまでも、奏多の意志を切り捨てた。

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