表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/39

039 『〇〇縁の誰それ』が齎す弊害

いいね・ブックマークがろ、ろろろろ、60に到達致しました!増えておりました!

もうもう、本当に皆様、いつも暖かく見守って下さり、ありがとうございます!( ¯꒳¯̥̥ )︎


最近、最新話の執筆を見比べて、前半の話がかなり読みづらいなぁと自覚致しました。修正作業は随時行っていきたいとは思いますが、今暫くお待ちくださいませm(_ _)m

 さぁ尋問を始めよう、と意気揚々と口を開きかけた私だったが、その際大人数の足音がドカドカと慌てた様に近付いてくる音を聞き取った。その足音の様子と気配から察しが着いた私が「あ、やば…」と思った次の瞬間。


 数人の魔法士達が扉をぶち破る勢いで部屋に転がり込んでくるのと、私が鉄扇を仕舞って男をオーバーキルしてしまった証拠を隠滅し終わってモーリスの所まで下がるのは、全く同時だった。


 因みに。

 余計な事を喋らない様に、男には離れる前に鉄扇を叩き込んで意識を刈っている。ちゃんと手加減したので、暫く昏睡状態だろうけれどバッチリ生きてるはずだ。


 焦っている時でも手加減出来るようになったのは、師匠や北訓練所の先輩方のご指導の賜物である。せっかく現行犯逮捕したのに殺してしまっては、何の為に王太子殿下の腹黒な笑みを耐えていたのか分からない。うん。


「非常事態です若長ああああっ!!」

「若長、ご無事ですかぁあああ!?」

「此方に風の魔力を感じたのですが、ハンスベルクの姫君はいらっしゃいますか!?あ、いたあ!!」

「良かった、無事ですねモーリス様!」

「あああ!ご令嬢見つけましたあっ!!」

「えっ!!あ、本当だっ!!」


 モーリスが目を白黒させて彼らを見る。私はというと、そんなモーリスの隣で彼の影に隠れる様にしていたのだが、ドレスがはみ出ていたせいでバレた。ちっ。


 ──あー。うん、どうやって誤魔化そうかしら。


 私はあれこれと思考を巡らせつつ、今現在の状況と私がここにいる理由と王太子殿下への弁解と魔道士達への誤魔化しについて、一瞬の間に思考しようとして「あ、無理だわこれ」と悟った。


 いや、正確に言うと。大人だけならば誤魔化せても、モーリスが目撃者として残っている為、誤魔化しが効かないというのが、本当のところである。


 私が遠い目をしていると、魔道士の一人がモーリスの前に進み出て、片膝を着いて頭を下げた。


「若長、魔力識別の魔道具と外部連絡用の魔法陣が壊されておりました。現在、全魔法士達に緊急招集の上、非常事態を発令しております。また、修復作業は既に遂行中です。犯行に及んだ者につきましては、現在捜査をしております」


 それを聞いて、モーリスが何故か私を振り返った。


 ん?

 私は、そんな装置壊してないわよ?師匠じゃあるまいし。人違いよ?


 私は微笑んで首を傾げる。すると、モーリスはややあって納得したように頷いて、その魔道士に言った。


「エルギさん。その犯人は、多分彼だと思います」


 そう言ってモーリスは、壁際にトレーニング後のサンドバッグよろしくべしゃっと気絶している男を、指さして言った。


「僕に用があると言っていました。しかも部屋に入ってくる前に、対魔物用の光源魔道具まで放り込んで。その後も、攻撃魔法を連続で放ってきましたし、十中八九、警報の件には関わっているでしょう」


 わおー。

 いや、誰?


 ──いえ、うん、分かってるけどね。凄い変わり様だわね?


 私は心の中でビックリしつつ、モーリスをじーっと見つめた。


 先程までのふにゃっとしていたモーリスとは打って変わって、キリッとしたモーリスが大人顔負けの説明をしていた。ビフォー・アフターくらいの違いがある。


 余所行きの顔のまま目だけ瞬いていると、モーリスに呼ばれたエルギという魔法士──そういえば、さっき私の事を案内していた魔道士かもしれない──が、気絶している襲撃者を見て険しい表情をした。次いでモーリスと…私の方にも目を向ける。


「…本当に、ご無事で何よりです若長。…時に、レリノレア嬢は何故こちらに?いえ、あの、責めている訳では御座いませんが」


 何やら問い詰める様な感じで言って、それから何故か弁解するというおひとり様劇場をやるエルギという魔法士に対して、私はにこにことしたまま、当たり障りのない事実だけ言う事にした。


「迷子になりましたの」

「部屋にいて下さいと申し上げた筈なのですが」

「だって、盗聴されている部屋になどいられませんわ」

「と、盗……っ!?た、大変申し訳ございません。その様な事をした者を探し出しますので…」

「大丈夫ですわ、そこに転がっておりますから」

「……。重ね重ね本当に申し訳御座いません…」


 何故かエルギという魔法士は、顔色がどんどん悪くなって、終いには燃え尽きた灰の様になってしまった。

 その後ろで黙って話を聞いていた、寝癖のある魔法士がポリポリとこめかみを掻きながら、『どんまい』と言う様に燃え尽きた魔法士の肩に手を置いている。他の魔法士達も、軒並み顔色が悪くなったり、視線が在らぬ所を向いていた。


 あれ。なんか、不味いこと言っちゃったかしら?


 この時の私はどうやって納得して貰おうかなと考えていたので、何故彼らがそんな様子になっていたのかが分からず、ひたすら内心で疑問符()を飛ばしていた。


 ◇◇


 レリノレアは、対外的にはハンスベルク公爵家縁の姫君という事になっている。そして、貴族的に言えば、わざわざ”縁の”と濁すという事は、『秘蔵の』もしくは『やんごとなき』等という意味になる。


 何故かというと。


 一般的に、分家筋の者が本家の威光を借りるのは顰蹙を買うので、自己紹介の時に一々『〇〇公爵家の分家筋の△△家の◇◇◇です』とは名乗らないからだ。分家筋である事は省略して、単純に家名だけ名乗るのが貴族の常識である。


 一方で、『〇〇家縁の誰それ』と自己紹介するのは、殆ど本家筋に連なる者、もしくは将来それを予定されている者に限られる。例えば、分家筋から本家に養子に取られ嫁入り・婿入りを予定された場合等がある。


 簡単に言えば、本家直系と同等の扱いをせよ…という暗黙の通達に他ならない。

 なので、レリノレアという存在は、既にハンスベルク公爵家嫡男であるムトアと同じくらい敬われて然るべき存在……と周りは認識していることになる。


 また、レリノレアはただの上級貴族ではない。()()()()()()()()()()()縁の姫君なのだ。ハンスベルク公爵家の何が問題なのか…という事については、また別の機会に述べるとしよう。


 さて。そんなこんなで。

 そんな高貴な存在に、魔塔の仲間である魔法士が攻撃したらしいと分かったエルギ達魔法士の心境や如何ばかりかと言うと、それは推して知るべしなのであった。


 元々、魔塔は一人一人が癖の強い魔法士の集まりとはいえ、仲間意識の強い連中の集まりでもある。逆に、誰か一人がやらかした時も、当然連帯責任という思考が身に付いている。


 よって今この場には、内心で目まぐるしく思考しているグループが二つ存在していた。


 襲ってきた魔法士をぶっ飛ばしてしまった事について、聞かれた場合はどう言い訳しようかと考えるレリノレアことレイリアンと。

 襲撃と盗聴という二重に言い逃れの出来ない魔法士仲間のやらかしについて、魔塔としてどの様に弁解をしようかと考えるエルギ達魔法士と。


 そしてモーリスは、押し黙って思考するそれら両者を、じーっと見つめていた。


 ◇◇


 ややあって、モーリスが私の手をそっと握った。自然と、向かい合う形になりキョトンとすると、再びふにゃっとした表情になったモーリスの顔が真っ直ぐにこちらを見ていた。


「レリノレア、まずは、ありがとう。レリノレアが()()()()()であいつを吹き飛ばしてくれなかったら、僕はどうなっていたか分からないよ。助けてくれて、ありがとうねぇ」


 そう言って、モーリスがギュッと抱き着いてきた。その際に、小さく耳元で彼の声が囁かれる。


「エルギさん達には、レリノレアが使った魔法の事とか、凄く強いって事は、言わないでおくから心配しないでねぇ。僕、ちゃんと分かってるから…」


 私は驚きつつ、お礼の意味を込めてモーリスを抱き締め返した。



『魔力の威圧』とは。


 それはまだ魔力制御の未熟な貴族の子供が起こす現象であり、滲み出た魔力が周囲の生き物を威圧する様になる事を示す。


 制御石を身に付けていても、それを上回る魔力量を持つ高位貴族の子供などは、感情が昂った際や身の危険を感じた際などに、意図せず魔力を漏らして周囲を威圧してしまう事がある。

 魔力差が大きい程感じる威圧感も強まり、時に失神したり魔力圧で対象を吹き飛ばしてしまう事もある、少し厄介な現象だ。


 因みに、制御石を身に付けていない貴族の子供でこれが無意識に起こると、魔力暴走に繋がる。


 その一方で、大人の貴族では格の違いを分からせるために敢えて『魔力の威圧』をする…なんて事もあるらしい。大抵の場合、貴族の爵位は上から公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の順番で魔力量にも絶対的な差があるけれど、同じ爵位同士での優劣を暗黙の了解で示す場合などだ。


 よって、一般的に『魔力の威圧』が起こったというと、魔力操作がまだ未熟と捉えられる場合と、魔力で威圧が出来るほど魔力量が多いと捉えられる場合の2パターンに別れる。


 話が長くなってしまった。


 つまりモーリスは、襲撃者が壁にもたれて失神している現象を、私の魔力の威圧によるものだと、周りに説明したのだ。この場合は、私が襲撃者をオリジナルの魔法を使ってぶっ飛ばした事や、その後に過剰制裁(オーバーキル)してしまった事を誤魔化す目的があると言えよう。


 ──やっぱりこの子、凄い子だわ…。


 モーリスは、私が隠しておきたい諸々の事を、説明しないでも感じ取っていたらしい。しかも、その事をそれとなく私に伝えてくるなんて、なんて出来た子だろうか。


 身体を離した時、モーリスはまたふにゃっとした可愛らしい笑みを浮かべてこちらを見つめていた。私もにっこりと微笑んで()()()()()として振る舞う。けれども、先程伝えきれなかったモーリスへの鼓舞も込めて、言葉を選んで伝えた。


「どういたしまして。でもね、モーリス。あの時モーリスがいち早く魔道具の存在に気が付いて教えてくれたからこそ、私たち無事だったのよ。だから、私の方こそありがとう、モーリス。誰がなんと言おうと、貴方は凄いわ!」


 そう言って、私はにっこりと微笑んだ。

 モーリスはゆっくりと一度目を瞬いた後、出会ってから目にした中で一番柔らかい笑みを浮かべて、私の手を握る。


「うん…分かったよ、レリノレア。僕、これからはちゃんと、自分の事を認める事にする。レリノレアが僕を凄いって言ってくれるなら、本当にそうなんだって思えるから」


 そう言って笑うモーリスは相変わらずふんわりと穏やかな雰囲気だったものの、先程所在なさげで自分に自信が持てない様子だった彼とは異なり、魔法士達に毅然と状況を説明していた時の様に堂々としていた。


 ──良かったわ。私も少しは役に立てたみたいね。


 私とモーリスがにこにこと微笑み合っていると。何故だか部屋の外がどやどやと騒々しくなり、先程同様何かの集団が慌てた様に近付いてくる足音が聞こえてきた。


 そうして。

 次の瞬間扉が轟音を立てて吹き飛んだかと思えば、二人の魔法士らしき男女と共に、どこかで見た事がある様な甲冑の集団が部屋に雪崩込んできた。


「モーリス、無事かっ!?!?」

「ああっ、神様!!」


 あまりにも鬼気迫る様子の魔法士の二人に、すわ二度目の敵襲か…と身構えモーリスを後ろ手に庇った私の耳に、そんな言葉が聞こえてきて目を瞬いた。


 はて、もしや…。


 そう思った次の瞬間、モーリスはその二人の魔法士に揉みくちゃにされる様に抱き締められた。

 何故か私も一緒に。


「と、父さん、母さん!?く、苦し…」

「……」

「ああああ、無事だなモーリス!!ああ、神よ感謝します!!お前を狙う者が身内にいると聞いた時は目の前が真っ暗になった!!あの感覚は闇魔法よりも絶望的だった!!」

「会議だろうがなんだろうが王宮なんかに行かなければ良かったって後悔したわ!!ああ、モーリス顔をよく見せて頂戴!本当に怪我なんてしてないわね!?魔力の乱れも…ないわね!ああ本当に良かったぁああ!!」


 口々にそう言いながら、男女の魔法士はモーリスの顔やら身体やらを何度も見比べて泣いたり安堵したりと忙しい。


 うん。何となく、事情は把握したわ。

 モーリスのご両親って事よね。

 とはいえ…そろそろ酸欠で死にそうなのだけれど、どうすればいいかしら?


「……」

「ん?あれ、このご令嬢は誰だい?」

「まあ、本当ね…。あら…?」

「わっ!!わわ、レリノレア、深呼吸して!!」


 そうして一悶着あり……。

 漸く圧死&窒息死から免れた私は、改めてモーリスのご両親と対面した。


 改めて見れば、三人はよく似ている。皆お揃いの真っ白な髪に、透明な瞳だ。透明な瞳って何……って感じだが、全体的に白くて何だか神々しい。


 ───父親母親共に髪色が同じって事は、従兄妹同士で結婚したとかなのかしらね。もしかして、モーリスも何か特別な魔力の貴族家なのかしら…。


 そんな事を考えて、公爵家の専属家庭教師に詰め込まれた貴族名鑑を脳裏で思い返す。白というと……確か、空間魔法に特化した一族だった様な。家名は……。


「フェリエ伯爵、フェリエ伯爵夫人。お初にお目にかかりますわ。レリノレアと申します」


 思考時間三秒で何とかモーリスの家名を思い出した私は、優雅にカーテシーをする。そうして顔を上げて、にっこりと微笑む。


「それとも、魔塔筆頭長官…と、お呼びした方が宜しいかしら。その説は、熱心なお手紙をどうもありがとうございます。本日はお招き頂き、恐縮ですわ。大変貴重な体験をさせて頂きました」


 そう。モーリスのご両親は、この魔塔において魔法士達を束ねる一番上の立場にいる『魔塔の長』と呼ばれる存在だ。

 そして、魔塔の長は代々フェリエ伯爵家という空間魔法に特化した一族の者が、その座を襲名するという。


 つまり、モーリスは次期魔塔の長になる事が決まっているのだ。道理でモーリスの事を、魔法士達が「若長」と呼ぶわけである。

 その時に気が付け…と過去の自分に言いたいものだが、失態を晒す前に思い出せたのでギリギリ及第点だと言えよう。



 私が頑張って取り繕ってその様に自己紹介すると、モーリスのご両親は一斉に目を見開いて、次の瞬間目の前に跪いた。そしてそれを見た周りの魔法士達も、一斉に彼らに倣って膝をつく。


 ……。

  え?


「レリノレア嬢……いえ、レリノレア様。大変な失礼を致しました。お見苦しい所をお見せしてしまい、誠に申し訳ございません」


 モーリスのお父様が畏まって述べる。視線は伏せられており、見るからに恐縮した様子である。彼の言葉を引き継ぐ様に、今度はモーリスのお母様が同じ様に顔を伏せたまま言葉を継いだ。


「ハンスベルク家の()()()()()を魔塔にお迎え出来ましたこと、一族を始め【魔塔】全魔法士の誉れにございます。ようこそおいで下さいました」


 そう言って、二人は更に深々と頭を下げてしまった。


 私はというと、完全に予想外の反応すぎて、思いっきり脳の思考回路がショートしていた。


 もーー!!一体何がどうなってる訳!?





読んで下さり、ありがとうございました!

良いね・高評価★★★★★頂けると、作者もとても嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ