1108〜遠く3人の人影
「あれがマーゲロイ島」
デンマーク海賊防御軍兵長ヨンソンは、右手を眉の上。見えたその海岸線に目をやった。
「おや?あの島には監獄に監禁された3人だけだと言わなかったかい?ハッセ殿」
「はい、はい。今やあの島には3人だけ。ヘルゲとドロテア。それにあなた方が捨てて来なすったタリエのみ。となってはおりますが、実はまだ多くの民が残っております。あの入り江の西側、突き出た崖に仕切られた入り江。その奥に我々が隠れ家としているネネツの住居。あなた方に見つからないようにしております。つまりそこがわしら海賊の、、、基地のようなものであります。ここから見えます海岸はヴィーゴ殿、あなた方ノルウェーの民の住居。そこを登ると山の頂に監獄。そうです、古くは魔女の館とされた牢屋がございます」
「ほう、つまり魔女扱いのノルウェーの民とお前らは別々の居留地」
「はい、昔マウリッツから舟に乗って逃げて来た女達は魔女。信じぬ者あれば信じる者あり。ま、疑わしけば別という事。あの高い崖で魔の気を遮断したのかと思われますが、、、いまだそのまま」
「なるほど。ではあそこに、、、見えるは、、、見えるかな?ハッセ殿」
「何かおられますかな?わしはもうこの歳。目が悪うての。おい、ハラルやバルウや、何か見えるか?」
言われたハラルにバルウ。甲板の手すりから身を乗り出した。
「おや?誰かいます」
「そのお前らのお仲間ではないのかい?ハラル殿」
ヨンソン兵長が言った。
「いえ、我々海賊もこちらの海岸に来ることはございません。来たのは監獄にいるヘルゲとドロテアに餌を与えに来た時のみ。それもこのハラルと数人」
「では?」
1番若いバルウ。さらに身を乗り出すと見えた3人。
「あれはっ!あれはドロテアっ!それにタリエ侯爵殿ではありませんかっ!あと、白いドレスを着たおかしな奴が1人おりますがっ」
「なんだってぇ?!」
「間違いありませんっ!しかもこちらに向かって手を振っておりますっ!」
「なぜだ?なぜそんな所におるのじゃ?奴らは監獄に監禁されておるはずッ。出られぬはずじゃ」
そこにデンマーク兵の1人。
「ハッセ殿。私達が2日前に立ち寄った時のことでありますが、すでにヘルゲ男爵殿とドロテア様はあの海岸で釣りをしておりました」
「ゲゲッ?」
「ドロテア様は釣り糸に絡まって気を失っておりまして、、、ほらご覧になられますか?我々デンマーク軍のコートを着ている、、、あれがドロテア様。この私がタリエ殿の船から持ち出したもの。何しろ海に浸かってずぶ濡れでしたから。なのであれは間違いなくドロテア様」
「監獄から抜け出しておるという事か?」
「いや、外鍵であるでの。そんなことは出来ますまいヨンソン殿」
「あのぅ、、、」
「なんじゃハラル」
「そういえばぁ、、、最後に監獄に出向いたのはたぶんこの私。少し薪と魚を置いて参りましたがぁ、、、そのぅ、、、もしかしたらですよ。はい、もしかしたら、、、鍵を掛け忘れて来たやもしれません」
「は?」
「え?」
「なんだって?」
「もしかですよ、もしかしたら、、、」
「掛けた覚えは?」
「覚えてないから、もしかしたらなのですが、、、」




