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###6 薬草採取…採取?

「んー、とりあえず薬草とりでもするかー」


 (とき)の流れがまだおそろしく長い体は、座って話すことに完全に飽きたようで、パールが落ち着いた辺りでイシャスは次の行動を決めた。

 もちろんパールにいろいろ聞きたいことがあるイシャスではあったが、パールはこれから先ずっと側にいるのである。何しろイシャスの額に住んでいるので、焦らずともおいおい聞けば良いと判断したのだろう。

 一見、体の要求につられている様だが、そう判断できるある種の余裕がイシャスいわくニューオレ、魂の意識と混ざった本当の意味でのニューオレなのだろう。


「あー、そうだパール。あの空間、転生の間だっけ…そこに居た? 神様の名前ってわかるかー?」


 イシャスはパーゴラからこれまた直接庭に降りて、薬草を育てている一角へ向かいながらパールに言う。


『時空の神メービウース様ね』


 パールは何故か嬉しそうに即答した。


「メービウース様、かぁ…」


 イシャスは胸に染み込ませるかのように呟いた後、パールに何故嬉しそうなのか問う。


『メービウース様ね、イシャスが転生の間に居た時楽しそう? だったの。だからわ――――千年くらいの間で初めてだって』


「楽しそうだった? そー聞くとなんかテンションあがるーって、パール千年も…あぁ、つながってんだっけ」


(精霊通信かぁ……あ? いまパールの言葉の途中で間があったよーな。まさか、大いなる精霊サマの方から?……)


「――オレはナニも気づいてない。うん」



(それにしても離れなのに広い敷地だよなー。離れも一軒家っつーか豪邸の部類に入んじゃないか?――そーいや書斎に山ほどある本って、母さんが前当主のご本だからできるだけ破いたり汚したりしないでねーみたいなこと言ってたな。できるだけってトコが母さんもズレてんだか大らかなんだかアレだけど……リビング以外はゲストルーム使ってる辺り、じいちゃんの離れなんだろーな。なら、二階建ての校舎サイズのが三棟コの字型になってるみたいな屋敷のでかさからすれば、離れって感覚なのか。――あ~、オレの部屋書斎っつーか本棚じゃーん。神様とかの本あるかなぁ…今まで絵本くらいしか読めなかったけど、考えようによっては検索とか通信とか便利機能付きのパールいんだし読めるかも)


「とか思ってるうちに到着」


『イシャス~、どの薬草とるの?』


「ん~…結構もさってるからフレッシュじゃなくて乾燥させて使うのとるかー」


 この辺境伯領を有する国、アーリス王国は大陸の西にあり、一年中春~初夏の陽気である。辺境伯領はほぼ初夏なので、イシャスが寝込んでいた三日でそれなりに茂っている。

 薬草といっても様々な種類があるが、イリアは専門の薬師ではないので、育てているのは一般的にもわかりやすい代表的なもの数種と、主に調味料やティーなどに用いられ、ハーブ類といわれる薬草や花である。

 イシャスが採取や、一部とはいえ調薬する許可があるのは、前提として、専門職でなければ取り扱いが危険なものがないからだろう。

 調薬の手伝いである事は確かだが、母と息子でお菓子作りをする様な側面があるのも否めない。


『どれが乾燥させて使うのなの?』


「んー、そのやわらかそうなシダっぽい形のと~――……この世界でもシダなのか? オレ今何語でしゃべってんだ?」


『ちゃんとこの世界の言葉でしゃべってるの。う~…………前世の意識がまざって気持ちの整理? は一応ついたけど、脳がまだ少し混乱してるの、たぶん。あと、この世界ではシダっていわないみたいよ。でもイシャスの口からはこの世界でシダにあたる? 言葉でいってるの』


「あ、そうなんだ…ありがとパール」


『さっきイシャスがわたしの事、便利機能付きって思ってたからさっそく使ってみたの。役に立ててうれしいの』


「――そうだった。パールの事考えてるとパールにはわかるんだっけ。…って、便利機能の意味わかってるかー?」


『使えるってことでしょー? それに、イシャスは許してくれたけど…わたしがした事って、人間には受け入れがたいものだってお聞きしたの。――考え様によっては、ってわたしを屁理屈? でも受け入れてくれるためでしょ? だから嬉しいの。そう聞いてくれるのも』


「そっか。…ピュアっ子は成長はやいなぁ」


(めんこい精霊に、人間的に軽く抜かされそー。んで、オレってツッコミスキルは授かってナイな)


『めんこい……小さくて可愛い?…』


 照れたように笑うパールは最初に比べ、確かにかなりはやい速度で人間味があがっている。


「あー、オレの脳だかパールのみた記憶だか検索するのはいーけど、オレが間違って覚えてる事もあるだろーから気を付けろよー?」


『間違っててもいいの。イシャスがどう思って言ってるかが大事なの』


 パールへの返事を、やれやれとばかりに肩をすくめる態度で示したイシャスは、採取道具などが収められている簡素な日よけを兼ねた棚へ行き、植物を編んで作られたザルを取る。


「まずは手で摘むやつからとるかな~」


 慣れた手つきで、イシャスは年齢の割には軽々と薬草を摘んでいく。


「そーいやさっき何とるのかってきいてたけど、パールはとれないよなぁ?ってあれ? なんか――増えてる?」


 ザルに、摘んだ以上の薬草があることに気づいたイシャスはパールを見る。


『わたしは採れないの。イシャスが採ったのよ』


「そーだよな。ってそうじゃなく、摘んだ数より増えてんだけど。パールなんかした?」


『してないの。それ、イシャスのスキルだと思うの』


「オレのスキル~?」


 パールに言われ、ゆっくり薬草を摘んだイシャスは、自分の手にとった薬草が増えるのを目の当たりにした。


「あー増えたよ……」


(う~ん、なんかひっかっかる……あぁ、パールが授かるのはスキルの補助って言ってたよなぁ…)


「植物増やすスキルがあんのかー? まぁ、違うとり方も試してみるか」


 色々ありすぎてすっかり反応の薄くなったイシャスではあるが、好奇心までは薄くなっていない様である。




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