##32 晩御飯もウマかったけどね…
結局、イシャスのレベル上げ計画の話しに行く前に本館での夕食の時間が過ぎ、ロザリアが直々にイシャスを迎えに来て食事となった。
ファメール家では緊急の仕事ではない限り、家族そろって食事をするのがルールの一つなので、当然アルフォンスやカシスも一緒である。
イリアがまだぐっすり眠っているので、本館の家族用ではあるのだが広く、しっかりとした長テーブルが置かれたダイニングに招かれた訳だが、イシャスが一人加わるだけで、普段あまり会話が弾まないのが噓のように賑やかな食事となった。
ただ、最初の頃は普通に盛り上がっていたのだが、ルシスがイシャスの事をメイン部分だけ――レベル上げをしないと人間ではなくなる、や、ステータスの事などを説明した結果のさわがしさは激しかった。特にロザリアが。息子二人が話の衝撃を一瞬忘れて引くほどにである。
それを見たイシャスはあの魔術をかけるのだが、話疲れていたのか手っ取り早くオリバーに見せた物にその後の話しも追加し、人数分作り渡そうとして、踏みとどまる。
「あのさー、透明な水晶みたいな石ってある?」
「あるけれどね、何に使うのかな? それによって石の形やグレードが変わってくるよ」
ロザリアも答えたそうであったが、やはり当主が居る手前ゆずる形となる。が、イシャス以外の誰が見ても表情が変わらない魔力の仮面の下は、イシャスの心配と魔術への興奮が現れており――食後にイシャスを拉致しそうである。
「オレが魔力で出したその透明な板みたいのに回復いれてもいーんだけどさぁ、どのくらい持つかわかんないから実体?物体?のあるもんに入れてみようかなって。【状態異常回復】」
「その、透明な板のような物の機能そのものが既に唯一の魔道具なのだけれどね。まあ、魔力のみだから時間が経てば消える使い捨てではあるけれど――それとは違う物だが石に魔術を込められるとなると、魔道具というか魔術具そのものだね。しかも、その非常識な魔術を…」
「イシャス、それはすでに錬金術ですわ! しかも、魔力のみで出来ますの?それに、魔術具を――」
「落ち着いてロザリア―、【状態異常回復】んで、なんか丁度いい石あるー?あ、人数分っていうかこの板の数だけだけど」
ルシスが一瞬何かを考えた隙を付き、我慢できなくなった様子のロザリアがお嬢様の時の口調で話を引き継ぐ。というか奪うが、ロザリアのこのアレな部分をイシャスはすでに知っているので慌てない。
「ええ、魔術を込めるのに最適な石がありますわ。直ぐに取ってまいり――――石による違いを知るために何種類か持って来ても良いかしら?イシャス」
「……や、だめだめ。ロザリア色々考え込んで遅くなりそうだし、そういうのはまた今度ね。んで、リリーはロザリアが暴走しそうになったら、ぶった切って連れてきてねー」
(あ~、魔術・錬金オタクだからなんだろーけど、そのちょっと甘えるような顏ナニー!思わず頷くとこだった。話疲れたし今日はもう早く寝んだから)
控えていたリリーにロザリアの行動制限を託したイシャスに、「そ、そんな――」「お任せくださいイシャス様」という返事を残し二人は足早にダイニングを出た。
そのやり取りに、異母兄弟二人だけではなくルシスも、他に控えていた者たち全てが呆然としていた。
(ん?ここに居る人みんな、信じらんないもん見た!みたいになってんだけど~。こんな普通のやり取りでコレかぁ……他の人らはともかく、父さんもってどうなんだろ。――なんかモヤモヤする~…って)
「あ~、あのさぁ父さん、魔力が多いと何らかの圧がかかるってリリーが言ってたけど、オレからは圧感じないの?今700あんのに、みんなフツーにしてるよね?」
「――そういえばそうだね。そんなにも魔力量があればドラゴンが居るような圧があってもおかしくはないのだけれどねぇ……イシャスもロザリアのように魔力の質が普通とは違うのだろうね。まぁ、ロザリアとは反対方向のようだけれど」
「かんたんに言ってー」
「イシャスが居ると緩くなるね」
「ナニそれ」
イシャスがやや不満げで脱力したような顔になると、アルフォンスが会話に入ってきた。
「それは父上も魔力量が多いからそのように感じるのではないですか?」
「じゃあ、君はどう感じているのかな?」
「――気持ちが穏やかになるのは確かですが、不思議な圧も感じます」
「父さんってさ~、ホントにオレだと緩くなんだねー。兄さんのこと君とか言ってんの? 後継ぎだから厳しくとかゆーのと、そーゆーのって違うんじゃないのー?」
ルシスの、自分に対する口調・雰囲気とアルフォンスに対するそれの落差に、思わず呆れたように口にするイシャス。
そして言葉に詰まったルシスの返答を待たずにアルフォンスに尋ねる。
「兄さんが言う不思議な圧ってどんなカンジー?」
「――そ、そうだな、うまく言い表せないから不思議なといったんだが――」「だから、イシャスはイシャスなんだよー」とカシスも参戦し、二人はイシャスに祝い表の事などを質問せず異母兄弟三人緩く話しながらロザリアが帰ってくるのを待っていた。
話題は主にウィ―ルの事である。そのウィ―ルは、「ルシス、ハブラレタ! キヒヒッ」と無邪気そうに笑っている。
暫くして、リリーに石を持たせて帰ってきたロザリアは、やはり一つだけは自身の錬金術で作った合成石を持ってきている。――石、と言っても宝石や宝玉に近いものであるが。
そのくらいの事はイシャスも予想していたのか「やっぱりー」と言いはしたものの魔術を込めて、タブレットのような透明の板とセットで石――魔術具をロザリア、アルフォンス、カシスに渡す。
ちなみに魔術具と前述した通り、手に握りこめるサイズの丸い水晶にあっさりと魔術を込められた。術式が魔法陣のように浮かんでいる。
その術式をロザリアが解読できないと大興奮になるが、リリーの手にある出来立ての魔術具で落ち着かせたので効果も確認できた。
「オレは帰ってもう寝るケド、それみといてね。んで、オレのレベルアップ計画も出来てればいーな」




