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##27 魔術ってこーゆーもん…じゃないのー?

「――う~ん。母さんが寝落ちしたのはいーんだけど…おもーい」


 隣に座っていたにもかかわらず、イリアはイシャスのお腹に顔を付け抱き込むようにして眠っている。


「それにこれじゃ寝にくいよなー。カラダひねっちゃってんじゃん」


「イリア、ソファー、ネカス?」


「そーしたいけどすんなり抜け出せないし、やっと寝たのになぁ。―ま、ガッツリねてんなら起きないだろーけど、オレ抱き込んでから安心してねた、みたいなカンジが気になる。抱き枕(オレ)が無理やり抜けたら起きそーっつーか」


「ンー……イシャスノ、マジュツデ、ナントカスル」


「は? あ、あぁなるほど」

(オレの思ったとーりに()()んだから、なんかいー方法考えればいーのか)


「んじゃー……」

(どうせならソファーじゃなくてベットがいーか。あ、でもただ浮かせてベット運ぶんじゃ抱き枕がないから~、作るか。ウォーターベットなら水だし丁度いーかな。たしかパールがうねうねしてたのみたいな――)

抱き枕(オレ)もどき付きの~浮く、うねうねコーティングウォーターベットで」


 うねうねしているように見えたのは、パールのゆらゆらした格の姿に()っていたからなので、イシャスの言葉は正確ではない上にアバウトなのだが、やはり魔術は発動した。


 イシャスの体、イリアの下面へと魔力の膜が広がったと思ったら、イシャスの言葉通りといえばその通りでもあり、違うといえば違うものが完成していた。


 イシャスもどきの腹から上が付いた、浮いているウォーターベットなのは間違いないが、イリアサイズの薄っすら青味がかった半透明のベットは当然ながらうねうねしてはいないし、落下防止にか半円の花びらのようなものが柵の代わりに辺を囲っている。

 そして、そのベットの上のイリアはいつの間にか自然な向きに整えられてもいた。


 大ざっぱで、ゆるいオーダーのような言葉で発動したとは思えないハイスペックなオリジナル魔術である。

 というよりも、アバウト部分が良い方向にハイスペック、と言った方がいいのか。


 イシャスとウィ―ルは、「おー、いーカンジじゃーん」「イシャス、スゴイ。ナントカ、ナッタ」と、喜んでいるが、本日当番のメイドに見られていた。

 三人いる離れの維持管理の一人である。

 そのメイドの啞然とした顔は、魔術に対するイシャスの認識と世間の認識が異なっている事を表している。

 他二人のメイドであれば驚き冷めやらぬまま、明るく、と、おっとり、と性格的に分かれるがイシャスに話しかけただろう。

 だが、今いるメイドは生真面目だったので、主家の息子に自分から私用で話しかけられず、当主に報告、として屋敷に向かった。

 世話を任されていたり、イシャス付きだったりしたのならまた別だったのだろうが。


 そんな事に気付きもしなかったイシャスは、イリア込みのウォーターベットの様子を見ている。


「オレもどきがスライムちっくにキモくなるかと思ったけど、氷の像みたいで良かった…って、冷たくないよな?――うん。子供体温(オレ温度)。んで、ベットはややあったかい?」


「マジュツ スゴイ。スゴク ベンリ」


「だなー。ん~…」

(って、アレ? なんか引っかかったよーな?)


「――イリア、アンシン シタ、コドモ ミタイ。グッスリ ネテル」


「あ? あぁうん、そーだなぁ。――ま、不安そーな大人がグッタリ寝てるよりはいーんじゃん」


「キヒッ。ダネー」


「けっこー話してるけど、母さん起きなそうだな」


 ウィ―ルに笑い返したイシャスはそう言うと二階に歩を進め、ゲストルーム(イリアの部屋)のベットの上へウォーターベットを置き、絹の薄布をかけてリビングへ戻った。

 その後、お茶の片付けを、「ウィ―ルの話し方、ちょっとなめらかになってるなー」「キヒヒッ!ウレシイ。イシャス ガ キヅイテ クレタノモ ウレシイ。―キヒッ」と、話ながら終えたところで、ノックの音がした。





 イシャスは今、屋敷の執務室と続き部屋の休憩室で、ルシス(父親)と一緒に昼食を摂っている。

 メイドの報告を聞いたルシスが、イリアが眠ったのにほっとしつつも、イシャスの食事を心配して呼んだのである。――が、今回は報告が報告なのでそれだけではない。


 食事が終わったところで、ルシスは本題をきりだした。


「ところでイシャス。眠ったイリアを乗せた、水のベット、なのかな? それは、水の精霊様がしてくれたのかい?」


「え? う~ん……」

(そー言われると違うとも言い切れないよーな? パールが居るから魔力そーさがスムーズだし、オレの魔力、パールふつーに使えんじゃないかと思うし。あ、でも考えたのがデルのが魔術だし?)

「オレの魔術だと思うけど」


「……イシャスは魔術を習っていないよね? どう発動させたのか教え――いや、実際に魔術を使ってくれないかな? 希望をいうと私に。水のベットがどういうものなのか興味があってね」


 イシャスの感覚的な説明では理解出来ないと思ったのか、ルシスはちゃっかり希望を述べつつ自分の目で確かめようとする。


「いーよー。ベットがいーんだよね? んじゃあ…やっぱ浮かせないとアレかな。 浮くウォーターベット、うねうねコーティング風でー」


 イリアの時とニュアンスが違うが、これまたゆるいオーダーのような言葉で魔術を発動させるイシャス。

 ニュアンスの違いなのか、ルシスが起きていたからか、出来上がったウォーターベットには花びらのような柵はなかった。


「――――…………イシャス、魔術とはこういうものではない……と思うよ?」


「えー?」

「エー?」



 

 

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