冬は、ココアに涙の雪を溶かして 07
それにしても、たった一時間ぐらい、あって話しただけなのに、ちょっと悪口を言われたぐらいで、どうして自分の中で、かばってしまうんだろう。
まあ、それくらい。
気に入ったってことか。
ワクワクしているのを感じる。
明日の放課後が楽しみでしかたない。
あんな人たちにあったのはじめてだし、はじめての部活だってこのとある。
「なあ」
「へ?」 いきなり声をかけられて、おれはびっくりする。
「高梨は、美術部に入ったんだってな。絵とか描くのきらいだったのになんでだろうな」
「ええー!」 おれと関原、高梨は幼稚園からの幼なじみだから、良く知っている。高梨が? 何で? 何で美術部に?
「田中。おまえ、高梨のこと好きなんだろ」 ニヤッと関原が聞いてくる。
「何でだよ。そんなわけないだろう。あ、もしかして、関原が好きなんじゃないか」 おれもニヤッと笑う。
「はっ。まさか」
おれが、高梨のこと好きだなんて、そんなことあるわけないだろ。天と地が逆さになっても、それはありえないね。
次の日の放課後。
おれは、スキップしそうないきおいで、図書室に向かった。
「あ、田中くーん。こっちだよ」 森部長が、本棚の間から手招きをしてくる。
「あれ、杉先輩は?」 パイプ椅子に座りながら聞く。竹内先輩は、原稿用紙を出していて、皐月先輩は昨日と同じ文庫本を開いている。
「委員会で遅くなるって」 そういうと、森部長は席を立って、本棚へと向かった。
「…………」 さて、おれは何をすればいいんだろう。
椅子に座っている二人の先輩は、真剣にそれぞれにやっているから、話しかけることはできないし、森部長は、本棚の迷路で見えなくなってしまった。
おれも、何か本を読もうかな。
おれは、パイプ椅子を倒さないようにゆっくりと立ちあがると、本棚へと向かった。
さて、何を読むか……。
小説って、あんまり読んだことがない。読んだとしたら、国語の教科書にのっている話しか読んだことがない。
とりあえず、本を一冊、手にとってみる。
うむ。
むずかしそう。あれ、むずかしいって漢字でどう書くんだっけ?
まあ、とりあえず読んでみよう。
──きょうは。いいおてんきですね……。
『きょうは』 のあとに 『。』 をつけるのって、おかしいんじゃないか?
まちがっているじゃないか。この本。
おれは、本でもまちがえるんだなあ。と思って本を本棚に戻した。
なんか、もっと読みやすいのないかな……。漢字が少なくて……。
おれは、本棚をうろうろする。
はあ。ないなあ。
おれは、がっくりと肩を落とした。
昨日のワクワクはどこに行ったんだ……。
つまんない。
部活ってもうちょっと、楽しいもんだと思っていたのになあ。




