秋は、たこ焼きスケッチブック 06
今のは五分くらいだったから、二十分ぐらいは余裕があるわね。
体育館から外に出る。途中、体育館から笑い声が聞こえた。まさか、あの劇で笑ったんではないでしょうね。
さて、どこで時間をつぶそうかな。
わたしは、とりあえず校舎に入ってみることにした。校舎前にある掲示板には、いろいろなポスターがはってあった。掲示板じゃ足りないのだろう、廊下のいたるところにはってある。
わたしはそのポスターをながめながら、校舎に入る。
そしてそれは。
靴を入れるロッカーにはってあった。
『美術部感動の超大作! 共同制作「学校の風景」』という文字とその絵……。
この絵は……。
わたしは、走り出した。
別校舎二階美術部部室へ。
美術室前はいつになく混雑していた。毎年ことで、とても人気がある。
わたしは、人ごみをかき分けて部室に入る。
絵に前に立つ。
これは……。
やっぱり……。
わたしはごくりとつばを飲みこんだ。
手を強くにぎりしめる。
……木野葉子の絵。
全部。すべて。
こんなに大きなキャンバスに一人で……。
まちがいじゃない。
あんなに見た、昼の太陽の絵と同じ画風。
まちがえる、はずがない。
わたしはふりかえると、副部長の姿を探した。
いた。一番奥のテーブルに腰かけながら部員と話をしている。
「大林くん」 わたしはそのテーブルに近づいた。
「あ、部長。今年も大成功ですね」 ほほえむ大林くん。いつものわたしなら、一緒にほほえんでいた。
わたしは、顔一つ動かさずに言った。
「何で、すべてを木野さんにさせたのかしら?」
「部長……、何言ってんですか。みんなで協力して完成させましたよ。なあ」 まわりの部員に同意を求める大林くん。うなずく部員たち。
「ウソをつくのは止めなさい!」 わたしはテーブルをバンッとたたいた。まだ笑っている大林くんがにくたらしい。部室中が静かになる。
テーブルをたたいた手が、じんじんと痛い。
大林くんは、急に真面目な顔になると腕をくんだ。
「そうです。すべて、木野にやらせましたよ。上手いんだもん。木野ちゃんは」
「…………」
「木野の名前を知らなかったそうですね? 金賞を取ったのに。だから、部長に名前を覚えてもらおうと、木野もいやがらなかった」
「……わたしのせいだって、おっしゃるのね」
「ああ、そうですよ。部長は一度も部室に来なかった。だから、おれたちがサボっているのにも気づかなかったんでしょ」
「…………」
「知ってます? 今朝、倒れたんですよ。木野」
「え?」
「うわあ、それも知らないんだあ。かわいそう、木野ちゃん」 大林くんは、わたしに近寄った。 「もう、部長づらするのやめたら? たいした画力もないくせに」




