秋は、落ち葉と共に踊る暇もなく 03
次の日、ぼくは朝、木野と教壇に立っていた。
「文化祭について話し合いをしたいと思います。クラスでは、何をやりたいですか? 去年の先輩たちは、模擬店だと喫茶店やお化け屋敷、売店など。展示品では、クラスのみんなで、ちぎり絵を作成したりしています。体育館での出し物は、歌、ダンス、劇を行っていたようです」 木野がスラスラとプリントを見ながら、しゃべる。ぼくは、黒板に向かって、みんなが言った意見を書きとめる準備。といっても、チョークを持っているだけだけどね。
「クラスでって……、必ず何かしなくちゃいけないの?」 野澤が言う。
「そうです。必ず何かをすること。これは、決まりですね」
「それじゃあ、喫茶店でいいんじゃないの?」 ぼくは、黒板に『喫茶店』と書く。漢字がなかなか思い出せなくて苦労したけど。
「それより、お化け屋敷がいいわ。楽しそう」
「んんー、それは準備がかかるから、単品で何か売ったらどう? ポップコーンとか玉コンとかさ」
「玉コンは、何かなあ……。ポップコーンに一票! あ、おでんもいいかも」
「展示品はパス! 準備に時間はかかるだろうし、見る人もあんまりいないと思うの」
「ええっ、おれ、今、野球選手の写真展示会を提案しようと」
「なにそれ。よろこぶのは、おまえだけだろ」
「劇がいいわあ。ほら、文芸部もいるし、演劇部もいるわ」
「ええ、ぼく、演技なんて……」
さまざまな意見が飛び交い、ぼくは必死に聞きもらすまいと、耳をそばだてて、チョークを走らせた。
で、結局決まったのは、『お化け喫茶でポップコーンと玉コンとおでんを売る野球選手』の劇になった。脚本は、当然のようにぼくに決まってしまい、演劇部の野澤と亀塚が、主役ということに決まった。
「よおおし、がんばるぞお!」 亀塚が、大きなこぶしをふりあげて叫ぶ。クラスのみんなは、オーと席を立って叫んだ。木野は、用紙に決まったことをメモしている。
ぼくは、ひとり、ゆううつだ。
一体、 『お化け喫茶でポップコーンと玉コンとおでんを売る野球選手』 の脚本って、どう書けばいいんだよう……。




