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趣味

2015年11月のお話。

「…」


スーパーのとあるショップの前。

髪の毛をポニーテールにした少女が一人袋を片手にたたずんでいた。


「…何買ってんだ俺は」


まあ当然優美であるのだが、その背中側にあるのはやたらファンシーなお店。

そもそも普段引きこもり気味な優美がこんなところにいるのも珍しいが、こういうショップに来ているというのはさらに珍しい。


「…まあ、使うからいいか」


手に持ってる袋をちらと見やる優美。

ここに来る前は持っていなかったのでまあ背後の店で購入したのだろう。


「お待たせー」


「やっと来たか」


「いやー服見だすと止まらないよね」


「知ってた」


そこにもう一人ツーサイドアップの少女がやってくる。

まあ優美とセットのもう一人と言えば千夏しかいない。


「てっきりそこの椅子にいるかと思ってたからちょっと探した」


「悪い。暇でな。うろうろしてた」


「まあ最悪電話するから大丈夫と言えば大丈夫」


「まあそうか」


携帯はとりあえず常に携帯している二人である。


「あれ?優美ちゃんそれは?」


「あー…やっぱばれる?」


「そりゃさっきまでほぼ手ぶらだったし優美ちゃん」


「いや暇だしぶらぶらしてたって言ったじゃん?」


「うん」


「適当に店回るじゃん?」


「うん」


「ここ入るじゃん?」


「なんでここ」


「いやなんか面白いもんないかなと」


「ほう」


「そいで気が付いたら買ってた」


「無意識?」


「いや意識はあったけど。駄目だ。こういうの見るとふつーに手に取って見てまう」


「ちなみに何買ったの?」


「これ」


袋の中を除く千夏。

そこそこ大きめの袋は結構中身のせいで膨れている。


「わお。大きい」


「思わず」


「ぬいぐるみですか」


「ぬいぐるみなんですね。やわらかい奴」


「好きだったっけ?」


「こういうの好きなのは前からよ」


もともとぬいぐるみとか好きな優美である。


「昔は山ほど家に置いてたからなー」


「さすがに見たことないけど私も」


「まあ置いてたの寝室だったしな」


「それどうするの?」


「どうもこうもまあ買ったからには置くかね。布団周辺に」


「畳だけど大丈夫?引っ付きそうだけど」


「直置きはする気ないから大丈夫大丈夫」


さすがに畳の上に直置きすると大変なことになりそうなのでやめておく。


「それにしても」


「何?」


「今は見た目的に買っててもそこまでおかしくないのは助かる」


「まあ女の子がぬいぐるみ買ってても違和感は無いよね」


「まあ男時代も割とフツーに買ってたけどな」


「あなたそういうとこ気にしないよね」


「欲しいもんは欲しいからね。周りの目とか気にしないわ」


というわけで帰宅する二人。


「で、どうするのそれ」


「まあ最大サイズ買ったわけじゃないしとりあえず畳につかない場所にでも置いとくわ。寝る時に引っ張り出すことにする」


「一緒に寝る感じ」


「そういう感じ」


「ぬいぐるみギュっとして寝る幼女っていいよね」


「まあギュっとして寝るわけではなく枕代わりですが」


「枕の方ですか」


「今まで使ってたやつ固いんだもの。やわらかい奴欲しくなったわ」


「そういや前言ってたね。枕固いって」


「めんどくさくて買ってなかったけど今日行ったときによさそうなサイズの奴がいたので」


「そういうこと」


「お前はもう買ってたもんな確か」


「まあ自分に合ったやつのがいいしね。買い物行ったついでに」


「やっぱついでになるよね」


「枕だけ買いに行くのはちょっとね。若干遠いしあそこ」


「遠いって割には頻度よく服見に行ってませんかね」


「おしゃれには全力です。着飾るの楽しくない?」


「好きよの。お前も」


「可愛い子におしゃれさせるの楽しいからね。ゲームアバター感覚」


「ぶれんな。ある意味」


そして次の日。


「おはよう」


「おはよう。ぬいぐるみ式枕どう?」


「あれはいいものだ。いや柔らかクッションタイプ買ってきて正解だったわ。頭の形に沈む。寝心地いいわ」


「よかったね」


「ただね」


「なんかあったの?」


「ちょっと沈みすぎて分厚さが足りない」


「なんだそれ」


「いい感じに沈むんだけどちょっと沈みすぎて高さが足りない気がしてくる」


「ああそういう。てかそんなに沈むもんなんだね」


「やわらかい奴ってホントによく沈むからの。触れば分かる。手がめり込む感じだからなああいうの」


「で、なんか話聞いてる感じだと枕としては欠陥品な気がするんだけどいいのそれ」


「あー大丈夫。経験上こういう時は二段重ねにすればだいたいいい感じになると相場が決まっている」


「え、重ねるの」


「そう。結局潰れるけど高さは確保できるからな」


「つぶされてるぬいぐるみ先輩がちょっとかわいそうになってきた」


「美少女につぶして枕にしてもらえるんだ。光栄に思え」


「ひっどい」


「枕にされた時点でつぶされることは確定なので仕方ないね。ということでお前が学校行ってる間にもう一個買ってくるわ」


「そういえばその枕いくらしたの」


「枕じゃなくて一応ぬいぐるみな。三千円ほど」


「うわ高い」


「まーそんなもんじゃないの。ガチででっかいやつとか万超えてたし」


「それはさすがに買わないよね?」


「まーさすがに置く場所ないし高すぎるからやめとく」


「逆に言えばあったら買うのか」


「クッション性が高い奴ならワンチャン買うかも」


「好きだね。というかぬいぐるみが好きというよりかクッションが好きなのか」


「割とある。こうなんかふにふにしてる奴いいよね」


「ただのクッション好きだった」


「たぶん昨日足を踏み入れた場所が家具屋方面だったらただのクッションの柔らかいの手に掴んでたと思うわ」


「ほんとにただのクッション好きじゃん」


「ぬいぐるみである必要性はあんまりない」


そして時間経って千夏の学校後。


「ただいま」


「おかえりー」


「あ、また袋が。本当に買ってきたんだね」


「でかいのと小さいの」


「あれ、でかいのは分かるけど小さいのは?」


「趣味」


「…やっぱそういうのも好きなのね」


結局部屋に大小合わせて三体ぬいぐるみが増えた優美であった。



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