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過去の残滓

2027年6月のお話。

長らくお待たせいたしました…

「お、お邪魔しますっ!」


「いらっしゃーい」


ある平日の昼らへんの頃。

千夏の家に約一名訪問者があった。

千夏と対面しているその相手は、

千夏に負けじ劣らずの美貌をあたりへと振りまいている。


「お久しぶりですっ!千夏さん!」


「あはは、そんなに緊張しなくて大丈夫だよ…小和ちゃん」


その人物は、高校時代、千夏をある意味一番困らせた、百合(レズ)疑惑ありの見た目だけは深窓の令嬢。喋らせれば千夏直結厨の小鳥遊小和であった。


「いえ、千夏さんのお家にお邪魔できるのがもう嬉しくて嬉しくて…!」


「高校時代はよく来てた気がするけどね?」


「あ、あれは私が勝手に押しかけてただけですからっ!こうやってご招待をもらったのは初めてでしたもので…」


「ま、まあ確かにあのころは呼ばなくても神社に来てた気がするけど…とりあえず上がってよ。立ち話もなんだし」


「失礼しますっ!」


「だから緊張しすぎだって」


そう言いながらリビングルームへと入っていく二人。

今日は千夏が小和を家へと呼んだのである。

いろいろあって小和に対しての連絡を忘れたりしていたので、

先日会った時に約束をつけたわけである。


「じゃあちょっとそこで待っててねー。お茶とお菓子持ってくるから」


「あ、いえ、お構いなく!」


「ふふ、今日の小和ちゃんはお客さんだからね。それくらいやらせてよ」


そういいながら奥に引っ込み色々持って帰ってくる千夏。


「ごめん、今これくらいしか無かった」


「これは?」


「ポテチ」


「ポテチ?」


「うんポテチ」


家がでかいので、

出てくるものも高級なものかと言われればそうでもない。

むしろ千夏の思考回路はかなり庶民的である。

セール時を狙って買い込むくらいには。


「ああ、あのジャガイモスライスして揚げたやつ…」


「うんうんそれそれ。あ、ごめん嫌いだった?」


「あ、いやそうではなくて、あんまり食べたことないもので…」


「え、ポテチあんまり食べないんだ」


「はい、家で長いこと禁止されてまして…」


「厳しいんだねえ」


「最近はそんなこと言われることもなくなりましたけどね。ただ、私自身がそれほど欲しているわけでもないので」


「なーるほど。とりあえず食べてみなよ。私は好きだよ」


「で、では一つ頂きます」


「一つと言わず。まだあるし無くなったら最悪補充すればいいからさ」


なにやら恐る恐ると言った感じでポテチに手を延ばす小和。


「…」


「どう?」


「ん、おいしいです」


「よかった」


「む、こんなおいしいものをずっと禁止にするなんて、お母様は何を考えていたのでしょうか?」


「ま、まあきっといろんな考えがあるから…」


「決めました。千夏さん。私帰りにカート一杯分のポテチ買って帰ります」


「あはは…食べすぎないようにね?」


「大丈夫です。…たぶん」


どうやら気に入ったらしい。


「小和ちゃん、今って何やってるの?」


「私ですか?」


「うん、今どうしてるのかなーって」


「えーっとまあ、お仕事しながら相手探し中です」


「相手?」


「嫁ぎ先です」


「ぶっげほげほ」


「ち、千夏さん?大丈夫ですか?」


「あ、大丈夫大丈夫。驚いただけだから…そっか、婚活中なのかぁ…普通はそういうのするんだよね」


「たぶん千夏さんみたいに意中の相手とご結婚なさる人はそう多くない気がします」


「だよねえ…私は運がよかったのかな」


「あ、そうだ千夏さん」


「なに?小和ちゃん」


「ご結婚おめでとうございます!遅れましたけど!」


「あ、ありがとー。ごめんね、私こそ報告しなくて」


「いいんですいいんです。ただまあ心残りがあると言えば…」


「言えば?」


「あの大男に面と向かっておめでとうと言ってあげたかった、くらいですかね」


「大男…あ、しげちゃん」


「仮にもかつて千夏さんを取り合った間柄ですからこう、戦友としておめでとうを言いたかったというのはあります」


「戦友って…というか、ふふ、なんか小和ちゃんに千夏さんって言われてると変な感じ」


「え?」


「いや学生時代ずーっとお姉さまだったから」


「あ、あれは、…そ、その、忘れてください。何かの間違いです、気の迷いだったんです」


「えー小和ちゃん実は私の事好きじゃなかったのかー」


「いや、ちがっ!そうじゃなくて!あーもう!優美さんといい千夏さんといい、いじわるです!」


「あはは、ごめんごめん」


「純粋に今は恥ずかしいです…」


「当時言われてた私がそうだったよ…」


「う…ごめんなさい」


「いや、気にしないで、不快ではなかったし。ただ、そうだね、あの時の小和ちゃんの対応はだいぶ困ってた」


「今思い返せば私は一体どれだけ色々やらかしていたんでしょうか…ああ、穴に入りたい」


「ま、まあ若気の至りってやつで」


さらっとスカートめくりしてみたり、

盗撮まがいの事もしていた気がするが、

まあ千夏が許すのであればよいのだろう。


「あ、そういえばファンクラブってどうなったの?」


「ゑ」


「あ、いや、昔小和ちゃんが作ってたなーと思って」


「あ、あれは、も、もうない、ないですよ。あはは」


「…」


「ど、どうしたんです、お姉さま。そ、そんなジト目を飛ばして…」


「いや、動揺しすぎでしょう。お姉さま呼びに戻ってるし」


「ど、動揺なんてしてませんからっ!」


「さーて何隠してるのかなー」


「ぐぅ…実を言いますと…」


「うんうん」


「私にも分からないのです」


「え?」


「もうすでにあの組織は私の手から離れてしまっていますから…」


「いや組織って。え、小和ちゃんそこの会長だったよね?確か」


「ええ、それは間違いありませんわ。でも…」


「でも?」


「お姉さまが学校から去られた際に私はあそこから去りました。あそこも自然に消滅すると思っていたのです」


「…実際は?」


「…確かに、ファンクラブとしての実態はすぐに消滅しました。…が、その時のメンバーはきっと今もどこかで…」


「…にゃあああ!」


「お、お姉さま!お気を確かに!」


なお、後でその当時のメンバーと思われる人物に佳苗経由で実態を聞いてみたところ、

さすがにそんな活動はもうしてないとのことであった。

要するに小和の勘違いであった。



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