1章8話「エピローグ:わたしの大切な幼馴染 (水無月しずく視点)」
【水無月しずく視点】
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ダンジョン演習が終わり、全員が入口に集まっていた。
黒鋼先生の総評が終わると、周囲は一気にざわつき始める。
「颯斗くん、すごかったね!」「討伐数トップとか、さすが!」
池輝くんの周りには、すごい人数の女子が集まってきた。
彼は困ったように笑いながらも、誰に対しても優しく返事をしている。
(……池輝くん、やっぱり人気だな。)
そう思いながら、私は少し離れた場所で周囲を見渡した。
倫太郎は――
陽斗くんと夕雨ちゃんと話していた。
三人で笑い合っていて、どこか照れくさそうにしている。
(……倫太郎、すごかったのに。
どうして誰も褒めてあげないの?)
胸が、ちくりと痛んだ。
池輝くんが褒められても、こんな気持ちにはならないのに。
どうして倫太郎のことになると、こんなに胸が苦しくなるんだろう。
(……なんで、こんな気持ちになるの?)
自分でも理由がわからなくて、胸の奥がざわざわする。
ふと、中学時代の記憶がよみがえった。
――しずくって、倫太郎くんのこと好きなの?
友達にそうからかわれたとき、私は顔が真っ赤になり、
「ち、ちがうよ! そんなわけないじゃん!」
と、むきになって否定した。
あのときの私は、どうしてあんなに必死だったんだろう。
否定した瞬間、倫太郎の顔をまともに見られなくなってしまった。
それ以来、どう接していいかわからなくなって、距離を置いてしまっている。
さらに、小さいころの記憶も浮かぶ。
泣いていた私を、倫太郎が助けてくれたこと。
転んだとき、手を引いてくれたこと。
一緒に帰って、他愛もないことで笑い合ったこと。
(今日の倫太郎は……すごかった。
あのころと同じで、誰かのために動ける人だった。)
胸がぎゅっと締めつけられる。
(それに比べて、私は……成長できているのかな。)
気持ちが落ち込みそうになった、そんなとき。
「しずくちゃん。」
夕雨ちゃんが、そっと隣に立っていた。
優しい目で、私を見つめている。
「しずくちゃん、倫太郎くんのこと……気になるんだね。」
「っ……!」
図星を刺されて、言葉が出なかった。
夕雨ちゃんは、ふわりと微笑む。
「大丈夫だよ。
しずくちゃんの気持ち、ちゃんと伝わる日が来るから。」
(……気持ち? 私の……気持ち……)
胸に手を当てると、鼓動が速くなっているのがわかった。
倫太郎の笑顔が浮かぶ。
優しい声が聞こえる気がする。
戦闘中、私を守るように立ってくれた姿が思い出される。
(……これが……恋……?
私……倫太郎のこと……)
頬が熱くなる。
でも、どこか嬉しかった。
(……ううん。違う。
“ 好き ” なんて曖昧な気持ちじゃない)
私はぎゅっと拳を握った。
(私は――倫太郎が、とても大切なんだ)
夕雨ちゃんが、そっと背中を押すように微笑む。
夕雨ちゃんは、私が言葉にできない気持ちを、いつも先に気づいてくれる。
「しずくちゃん、がんばってね。」
私は小さくうなずいた。
夕陽が差し込み、私の横顔を照らす。
(……もう、あの頃みたいに誤魔化すのはやめよう。
私は、ずっと倫太郎の隣にいたい。)
そう強く思った。




