3章12話「エピローグ:頼れる同僚(黒鋼剛志視点)」
【一年二組担任:黒鋼剛志視点】
◆
冒険者高校の教師というものは、見た目ほど華やかな仕事ではない。
学校は夏休みに入った。
妻と娘は近所のプールに遊びに行ったが──
俺は今日も、先日の補講で起きたダンジョン異常の後始末に追われている。
あのあと、ダンジョン外への魔物の氾濫や、異常の再発は起きなかった。
すぐに調査班が入り、構造変異や魔物の活性化について経過報告も上がっている。
原因の究明までは至らなかったらしいが、魔力流の乱れが一時的に発生した可能性が高いとのことだ。
ダンジョンは、生き物のように気まぐれだからな。
こういう “ 説明のつかない現象 ” は珍しくない。
まあ、専門家の結論を待つしかないな。
俺は現在、クーラーの効いた職員室で一人、当時の状況を報告書に書いている。
冒険者時代から、俺はこの手の書類仕事が苦手だ。
気分転換に、さっき買った缶コーヒーで喉を潤しながら。
少し他のことを考えて、気でも紛らわせようと気持ちを切り替えた。
同僚の氷室先生と天城先生は、ここにはいない。
氷室先生は、調査班と打ち合わせ。
天城先生は、救護班のフォローや生徒のケアをしている。
二人とも俺より年下だが、とても頼りになる仲間だ。
氷室先生は、冷静沈着で、判断力も行動力も一級品。
今回も、俺が殿を務めている間に、イレギュラーボスを含めた魔物のほとんどを殲滅してくれた。
流石は元Aランク冒険者だ。
噂ではSランク昇格の機会もあったらしいが、あの戦いぶりを見るに納得だ。
そして天城先生は、柔らかい物腰で、落ち着いている。
天然で時折どこか抜けているようにも見えるが……
生徒の危険や安全に関しては誰よりも敏感で、ダンジョン知識も生存技術も本物だ。
元Cランク冒険者らしいが、サポート能力だけを見れば、Aランクにも引けを取らないだろう。
今回も、退避誘導の中心にいたのは彼女だ。
混乱していた生徒たちを落ち着かせ。
怪我人をまとめて、救護班との連携まで完璧にこなしていた。
とても頼りになる二人だが、自分自身を軽く見ているところが玉に瑕だ。
氷室先生は、自分が傷つくことをまったく厭わない。
「自分が動いたほうが早い」と本気で思っている節があり、いつも一番危ない役割を引き受けようとする。
今回程度の相手であれば、危険はないのかもしれない。
だが、俺が駆けつける前に、すでに氷結操作の最上位事象系スキルを何度も使っていた。
ああいったスキルは魔力消費が激しい。
無理をしていないか、少し心配だ。
そして天城先生は、他人が傷つくことを良しとしない。
相手に感情移入しやすく、自分の手が届く範囲にいる人は全員助けようとしてしまう。
そして天然ゆえに、時々大胆な行動を取る。
……まあ、怪しげな宗教や募金に有り金をはたくことはないらしいが。
(二人を足して二で割ったぐらいが、ちょうどいいんだろうな……)
お互いが長所と短所を補い合えば、きっと今よりずっと “ いい形 ” に落ち着くはずだ。
実際に、氷室先生は天城先生のことが気になっているようだし。
天城先生も氷室先生に対して好意的な感情を抱いているようだ。
二人とも、元同級生と言っていたしな……。
だけど、
氷室先生は、自己評価が低くて奥手だし。
天城先生は、天然だからな……。
(どこかに恋愛マスターでもいて、アイツらをくっつけてくれねぇかな……)
そんなことを考えていると、缶コーヒーも空になってしまっていた。
十分な休憩がとれた俺は、報告書作成という難敵に再び立ち向かうのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
3章は、同時投稿の「主な登場人物」紹介話を含めて、ここで完結となります。
つづく4章も、全体構成と1話はできているのですが、
4章の全話完成後に1話から見直しをかけて投稿したいため、
次回は2週間後の9/18(金)20:00に1話投稿予定とさせていただきます。
より面白い展開をお届けできるよう、しっかり準備してまいりますので、
再開まで少しだけお待ちいただけると嬉しいです。
「おもしろかった!」
「続きが気になる!」
「4章以降も頑張って書いてください!」
と思っていただけた方は、高評価(★満点)やブックマークで応援いただけると嬉しいです。
いただいた反応は、今後の執筆の大きな励みになります。
進捗などはXでも発信しています。
よければこちらもフォローしていただけると嬉しいです。
X(旧Twitter):@yomu_kobo




