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「追放王子の冒険譚」  作者: 蛙鮫


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「最終話 新たな旅」

 早朝、少し冷えた空気が漂うローゼン王城の庭でアーケオは一人、木剣を振るっていた。


 数週間、怪我の治療で鍛錬を休んでいたので、剣の感覚を取り戻すべく今日から始めたのだ。


「おはようございます。アーケオ様。朝から精が出ますね」


「マシュロさん。おはよう」


「朝食が出来ています」


「今から向かうよ」

 アーケオは素振りをやめて、水で浸した布で汗を拭った後、朝食を取りに向かった。


 朝からかなり激しく鍛錬をしていたので空腹だったのだ。


「おはようございます」


「うん。おはよう」

 廊下を通るたびに従者達から挨拶をされるようになった。冒険する前とは対応とは大違いだ。国王である父が彼を丁重に扱うように言ったのだ。


「アーケオ」


「おはようございます。兄さん」


「今朝から鍛錬か?」


「ええ。かなり休んでいたので」

 食堂へ向かう際、兄のブレドと顔を合わせた。


「今日の昼に王国を出るそうだな」


「うん。まだまだ旅は続けたいから」

 この数週間、アーケオは十分な休息を得た。旅に出る楽しみ反面、親しくなった家族と別れる悲しさもあった。


「いつでも帰ってこい」


「ありがとう」

 アーケオは兄の言葉に笑みを浮かべた。かつてアーケオを見下していた兄はそこにはいなかった。


 朝食を終えて、アーケオはマシュロとともに王国の離れの方に向かった。目的地に着くとそこには既に先客がいた。


「陛下」


「アーケオとマシュロか」

 ルーベルト・ローゼンが離れの近くにあった小さな墓石に一輪の花を添えていたのだ。


 墓石にはアーケオの母であるウィンディー・ローゼンの名前が彫られていた。


「これで償いになっているとは思ってはいない。ただこれが今のわしに出来る精一杯だ」


「十分ですよ」


「そうか。達者でな」

 ルーベルトが口元を上げたあと、アーケオの肩を叩いて、王城の方に向かった。

 アーケオとマシュロもルーベルトに続いて、一輪の花を添えた。



「母さん。僕。元気だよ。あと伯父さんにもあったよ。とても優しい人だった。もうしばらく旅を続けるからまた帰ってきたら顔を出すね」


「ウィンディー様。あなた様から託された責務は今でも果たしております。どうか安らかに」

 アーケオはウィンディーとともに土の下で眠る母に自分の思いを伝えた。


 

 王国の出口までアーケオとマシュロは辺りを見回しながら、歩いていた。街は数ヶ月前まで瓦礫の山だったが、国民の団結もあって、ほとんど撤去された。


 途方もない数の命が奪われて、被災地の復興は今もなお続いている。


 それでも争いの種の一つである魔物はもうこの世にはいない。それが今回の戦いで得た何よりの成果だ。


「さーてこの前マシュロさんが言っていた南の島に行こうか!」


「ええ! 参りましょう! アーケオ様!

 アーケオとマシュロはこれから始まる冒険に胸を躍らせて、ローゼン王国の外に踏み出した。


 外に出るとそこには緑豊かな平原とどこまでも広がる青空があった。


 アーケオとマシュロ。二人の旅はこれからも続く。


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