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「追放王子の冒険譚」  作者: 蛙鮫


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「魔王の力」

アクロバルカン討伐後、アーケオ達は早速、城の中に入った。僅かな懐かしさとそれをかき消すような禍々しさが漂っていた。


 城の中は邪悪なマナが漂っていて従者の代わりに多くの魔物達が彷徨いていた。


 討伐し、時には身を隠してレックスがいるであろう玉座の間に向かっていた。


「二人とも。レックスさんの放つ魔法には絶対に触れないでね。魔法がかき消されるから」


「はい」


「分かった」

 二人が少し険しい顔で頷いた。しばらく進むと玉座の間についた。扉は破壊されていて、かつて父が座っていた座には一人の男が座っていた。


「レックスさん」

 レックスの姿は禍々しいものだった。頭からは真っ直ぐに伸びた白い角。背中からは悪魔のような黒い翼が生えていた。


「来たか。無事なら逃げれば良いものを」


「世界を滅亡させるなんて言ったらどこに逃げても同じですよ」


「それもそうだな」

 レックスが口元を押さえて、微笑を浮かべる。


「レックス・フリューゲル」

 アーケオはふと横を見るとブレドの手が震えていた。兄が怯えていたのだ。おそらく十年前の事を思い出したのだろう。


「兄さん。必ず勝ちましょう」


「ああ、分かっている」


「邪魔するというので、あれば容赦はしない」

 レックスが玉座の近くに立てかけていた赤黒く変色した大剣を手に取った。


「覚悟してください。レックスさん!」

 アーケオ達は走り出した。世界の滅亡を阻止するために。


「未来予知!」

 ブレドの目が黄金に光って、魔法が発動された。

蒼月(ムーン)息吹(ブレス)

 レックスが指を鳴らした瞬間、彼の周りから青色の波動が飛んでいた。


「あれだ! 二人とも避けて!」


「はい!」


「そんぐらいお見通しだ!」

 アーケオの言葉に頷いて、二人は躱した。


慟哭(スクリーム)鉤爪(クロー)

 レックスがマナを纏って大剣を振り下ろした。赤黒い三つの斬撃がサメの背びれのように迫って来た。


 アーケオは斬撃を躱した。マシュロもブレドも同じく躱していたが斬撃により深く抉られた床を見て、あまりの破壊力に背筋が寒くなった。


「臆すな! アーケオ!」


「はい!」

 ブレドの未来予知を頼りに攻撃を躱して、レックスの間合いに入った。そして、右肋部分を斬りつけた。

 レックスの動きは凄まじく早かった。おそらく魔王と一体化したことにより、身体能力が急上昇したのだ。しかし、ブレドの未来予知により対応可能だ。


 アーケオはマシュロ、ブレドとともに剣戟の嵐をレックスにぶつけた。敬愛していた人物ということもあり、胸の奥が僅かに締め付けられたがそんな悠長な事は言ってはいられない。世界滅亡がかかっているのだ。


「悪くないが、足りないな」

 レックスが不気味に口角を上げた。彼の全身に刻まれていた傷がみるみるうちに元に戻っていくのだ。


「傷が治っている!」


「再生能力が異常です! これじゃあどれだけ切っても倒せない!」


「二人とも! 次の攻撃が来るぞ!」


鬼火ブルーインフェルノ

 レックスの剣が青白い炎を纏って、振り下ろされた。アーケオは後方に下がって、回避したが横に振られた炎はレックスを覆い隠すように燃え上がった。


「しまった!」

 ブレドが苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。同時にアーケオも理解した。未来視は対象を認識していないと発揮できない。炎で覆い隠された今、使えないのだ。


 その時、ブレドの後ろにレックスの姿が見えた。


「兄さん!」

 アーケオは思わず、叫び声をあげた。ブレドがとっさに後ろを向いて、剣を構えたがあまりの威力に壁まで吹き飛んだ。


「がはっ!」

 背中を強く打ち付けたのか、ブレドの口と鼻から血しぶきが出た。


「シャドーステップ!」

 マシュロが黒い影を纏って、一瞬でレックスの間合いに入った。アーケオはマシュロとともに何度も刃を叩きつけた。しかし、その全てが防がれてしまったのだ。


「邪魔だ」

 レックスがアーケオとマシュロを薙ぎ払った。アーケオは少し下がった後、剣にマナを込めた。


勇者(ブレイブ)斬撃(スラッシュ)!」

 アーケオの黄金の斬撃が魔王の元へと真っ直ぐ向かっていく。レックスが大剣で受け止めた。しかし、レックスの表情は少し険しい。アーケオが成長したことにより技の威力が上がっているのだ。


「負けない!」

 アーケオはさらにマナを込めた。するとレックスが押し負けて、斬撃の光に飲まれた。巻き起こる爆発とともに粉塵が宙を舞った。


 やがて砂埃が薄れていくと、レックスの姿が見えた。斬撃をもろに受けたせいか、胴体には大きな傷が出来て、赤黒い血が流れていた。


「やっぱりこれじゃ、倒せないか」


「悪くなかったぞ。アーケオ」

 レックスが余裕を含んだような笑みを浮かべた。胴体に大きな傷がつけられていたが、黒い触手のようなものが傷を塞いだ。


「今度はこちらの番だ」

 レックスの周りのマナの濃度が増した。アーケオの額から冷たい汗が流れた。


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