「ローゼンの嘘」
アーケオは動揺を隠せなかった。自分が慕っていた男がかつて自分の故郷を滅ぼそうとした組織の長だったのだ。冷や汗が額を伝った。
それと同時に目を引きつける青い結晶の中にいる物体。魔物にも見えるが見たことがない存在だ。
「これは?」
「魔王ユーカリオタだ」
レックスの言葉に耳を疑った。
「十年前、ローゼンを襲撃した際に偶然ここにきて、封印された魔王を見つけた」
「ユーカリオタ? ローゼンが倒したんじゃないんですか?」
「そう言われていたが実際は殺しきることが出来なかった。だから封印という形をとった。しかし、世間には討伐と言い切った。なぜか? 異端の思想を持ったものが魔王の封印を解かないためだ。しかもローゼンは敵が多い。知られたら最悪、魔王を使ってでも報復される恐れがあるからな」
「それをどうするつもりですか」
「封印を解いて、世界を滅ぼす」
レックスが鋭い目で応えた。世界を滅ぼす。
「どうする?」
レックスが問いかけてきた。思考を今までにないくらいの速度で回していく。熱を持ち始めた頭を冷却するように息を吸って、吐き出した。
「止めます」
答えを出した瞬間、レックスが凄まじい速度で迫って来た。アーケオは剣を構えて即座に対応した。
迫り来る大剣の嵐。以前ならどうしようもなかった攻撃だが動きが見えている。
「大会で急激に成長したな」
「ええ。強くなれました! そして貴方を止める!」
「やってみろ」
レックスの剣術の速度が増した。剣先から伝わる体が震えるような闘気。戦士としての強さが感じられる。しかし、ここで負けるわけにはいかない。止めなければならないのだ。
剣戟の中、アーケオは意識を集中させた。隙を見て、一閃を出そうと考えているのだ。
「蒼月の息吹」
レックスが指を鳴らした瞬間、彼の身から青色の波紋が広がった。攻撃魔法かと思ったが、痛みは全くなかった。しかし、厄介なことが起こった。
「剣が」
勇者の剣から木剣に戻っていたのだ。そして、大きな仇になった。レックスの力強い一撃がアーケオの木刀に直撃して、壁に吹き飛ばされた。背中を強く打ったせいか、体に力が入らない。
「悪くなかったぞ」
レックスが踵を返して、魔王の方に向かっていく。朦朧とする意識の中、アーケオはレックスに手を伸ばした。
「魔王よ。お前を解放する。その代わり」
レックスが結晶に剣を振った。粉々に割れた結晶から封印された魔王が縋り付くように彼に纏わり付き始めた。
「力を貸せ」
数百年の時を超えて、目覚めた魔王がレックスと一つになった。




