「殺戮と思惑」
眼前に広がる光景を見て、アーケオは目を疑った。自分の故郷が火に覆われていたのだ。崩壊する建物。血を流して倒れている兵士。自分が最後に見た王国とはかけ離れていた姿になっていたのだ。
「者共! 前進せよ! ローゼンに仇なす者に罰を与えよ!」
ルーベルトがその場にいた兵士たちに命令を送った。兵士がたち仲間を連れて、燃え盛る街へと進んで行く。
「僕達も行こう!」
「はい!」
アーケオもマシュロとともに王城の方に向かった。おそらく『夜明けの翼』の長は王城の方にいると予想したのだ。
視界の端から凄まじい速度で何かが飛んできた。アーケオはかろうじて、躱して目を向けると数人が銃を構えていた。
夜明けの翼の隊員たちだった。目が合った瞬間、一斉に発砲を始めた。
「アーケオ様! おさがりください!」
マシュロに促されて、近くの物陰に避難した。地面に無数の穴がいくつも空いていく。
銃撃が収まった瞬間、マシュロが数本のナイフを投擲した。ナイフは見事、隊員に突き刺さって、地面に落ちていった。
「助かったよ!」
「先を急ぎましょう!」
アーケオとマシュロは進んでいく。しかし、そんな彼らの行方を遮るように次から次へと隊員達が現れて、攻撃を仕掛けて来た。
「さっきから思っていたけど弾丸の威力が高い! おまけに速度も」
「魔石が練りこまれているかと」
マシュロが近くに落ちていた銃を拾って、引き金に指をかけた。弾が命中して、隊員の一人が倒れた。
近くでは夜明けの翼の隊員達とローゼン兵士達が死闘を繰り広げていた。辺りはまさに戦場。
「貴方達の首領はどこにいるんですか?」
マシュロが近くで倒れていた隊員に問いかけた。
「し、城の方に」
隊員が城の方に指を向けた後、糸が切れたように倒れた。アーケオとマシュロは王城の方に向かった。
しばらく進むと変わり果てた城が目にはいった。あちらこちらが崩壊していて、火の手も上がっていた。
王城の前。アーケオは生唾を飲んでいた。目の前には一人の男。その周辺には大量のローゼン兵士達が血を流して倒れていた。
「よお。王子様。俺を覚えているか?」
男が口角を上げながら、アーケオに声をかけて来た。彼に見覚えがあった。以前、博物館を奇襲した際にいた男だ。
「ブルート」
「ご名答!」
ブルートが懐から銃を取り出して、引き金を何度も引いた。放たれる無数の弾丸がアーケオに飛んできた。しかし、放たれた銃弾が着弾することはなかった。彼の従者が阻止したからだ。
「私の主君に手を出すとはいい度胸ですね?」
マシュロが鋭い目でブルートを睨みつける。両手にナイフを持って、臨戦態勢になっていた。
「アーケオ様。ここは私目に任せて、先をお急ぎください」
「マシュロさん。必ず帰って来てね!」
アーケオは彼女に言い残して、城の中に向かおうとした。
「させるか」
ブルートが銃口を向けて来たが、従者が全ての弾を切り落とした。
「我が主人にはかすり一つつけさせませんよ?」
「羽虫が」
アーケオは後ろで戦う従者を一瞥して、燃え盛る城に向かった。




