第三章 崩壊(1)
「私だけじゃぁ飽き足らなくなったかい。」
「そう言うあんたも俺以外の男をくわえ込んでいる。」
クローネの言葉にルードが笑った。
「似たものどうしって事かい。」
「ソリオは別だがな。」
ルードの姿と言えば、すり切れた革のズボンに革の上着、その中には頭と手だけを通せるずた袋の様なシャツを羽織り、曲芸師に貰ったナイフをブーツに差しているだけの見窄らしい姿だった。それに比しソリオは剣闘士の防具を身に着け、腰には二本の剣を差し、それを隠すように長い革のコートを羽織って居た。そしてクローネは銀の胸当てと股間を被う小さな革のショーツ、そしてその全身を血の花びらを散らした真っ白な衣で被っている。一目には戦士とその愛人、それに付き従う奴隷のようにも見えた。が、その実その一行の主たる者は一番見窄らしい格好をしたルードだった。
そんなルードの側には一匹の大きな白い犬が立ち、辺りに眼を光らせていた。
ルードの生活はその日暮らし、食べ物が欲しければ奪い、女が欲しければ拐かした。それを助けるのが白犬、その犬はケイルと名付けられルードの側を離れることはなかった。その姿は犬であるにも係わらず、首の周りに獅子のようなたてがみを生やしその眼光は鋭く、一度遠吠えを響かせると無数の山狗達が集まってきた。
ルード達は三人で行動しながらもお互いが干渉することはなく好き勝手に動いていた。が、誰かが窮地に陥ればそれを助ける。そう言う意味では共同体でもあった。
ソリオの悪事はルードに比べればかわいいものだった。強盗に入り若い女が居ればそのまま拉致して犯した。が、それ程血を見ることは好まなかった。それに対しルードの悪事と言えば遥かに凄まじかった。気に入った女が居れば山狗達をけしかけ集落そのものを襲った。人を殺し、食物を奪い、しばらくの間はその集落に君臨し、そして飽きれば不意に出て行った。その間クローネは逆らう男達をずたずたに切り刻んだ。
ソリオの心は徐々にそんな二人から離れていった。
「俺は戦士になりたい。」
そんなソリオの声に焚き火を囲むクローネがフンと鼻先でせせら笑った。
「戦士になって何をする。」
そんなクローネとは裏腹にルードはまじめな顔でソリオを見た。
「人助け・・・」
「さんざん悪事を働いたお前が・・・」
ソリオの声にクローネが笑った。
「だからこそ・・・」
「いいんじゃないか。」
焚き火に照らされそう言うルードの顔は別人に見えた。
「人の為に働くのもお前の自由・・で何処に行く気だ。」
「大きな町に行く。」
「大きな町か・・俺も行ってみるか。」
「アルカイ辺りは・・あそこらは栄えて居るみたいだよ。」
二人の横からクローネが片目をつぶり、三人でそこから北西に向かうことになった。




