第二章 黒い影(25) ランダ・・動く(3)
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「カーツが一番楽しみにしているようですよ。」
何を・・と、三月ぶりに人買いの旅から帰ったランダはサロメの話に不審な顔をした。
「娼館が出来るのをです。」
チッとランダは舌を鳴らした。
「皆を集めな。」
ランダの広い部屋にサロメに呼ばれたサビーネ達が三々五々入ってきた。
「ランドールに娼館を造るのは止めるよ。」
その声にガルフィが一番ガッカリした顔をした。
「カーツを喜ばせるだけだからねぇ。
バーロー、ラッツィオ、それにサビーネ、一緒に来な。」
ランダは旅仕度を始めることを命じた。
何処へ・・サロメが訪ねた。
「ルーメンスブルグだよ。今はあそこが一番勢いがある。」
二日後にランダはランドールに着き、そこから半月をかけてルーメンスブルグに着いた。
「宿を探しな。」
ランダはバーローが探してきた宿に一泊した。
「金はたんまり持ったかい。」
翌朝ランダはパレスに向かう道々バーローに笑いかけた。
ここの枢密院の長はホンボイと言うらしい。その男に明日以降に会う予定を取る。その為に執事役のバーローを送り出した。
バーローに持たせた賄賂が効いたのか、枢密院からは三日後の昼に会えるとの応えを得た。
「三日後か・・丁度いいねえ。ラルフが買い集めた女達を連れてやって来る。」
ランダは報告をしたバーローを見て笑った。
その三日後、ランダはアリアが織った美しい衣装を纏った女達を連れて枢密院に登った。
濃い香水の匂いが枢密院に溢れた。その中でランダは片脚を後ろに退き、優雅に頭を下げた。
「さて皆様・・」
そして語り始める。
「ここには有望な若い人達が数多います。」
ランダの話しが始まると彼女が連れてきた十数人の女達は濃厚な香水の匂いを振りまきながらゆったりと議場を歩き回る。
「若い人達には娯楽も必要です。」
その間に女達はある者は枢密卿の頬を撫で、ある者は顔を間近に寄せて甘い息を吹きかけた。鼻の下を伸ばす者達の中でボルスだけは苦い顔をしていた。
「如何でしょう。私が娼館を創ると言ったら。」
ランダは枢機卿達の顔を見回し尚も続ける。
「娼館だけではなく、貴婦人達も含めた社交の場である劇場と舞踏場を造ると言ったら、許して頂けましょうか。」
ランダはもう一度枢機卿達を見廻す。
「当然儲けの一割は税として国に納めましょう・・・如何ですかこの案。」
国の発展になるぞ。と言う声が大勢を占めたが、
「議題として挙げる。暫く待て。」
とホンボイがその空気に待ったをかけた。
その夜、ランダはホンボイの屋敷を訪ねた。
「儲けの二十分の一で如何です・・貴方に差し上げます。」
ホンボイはその申し出に相好を崩した。が
「ヨゼフがどう言うか・・・」
ホンボイは首を傾げた。
「ヨゼフ様にも同じ様な提案をいたします。」
翌日にはランダはヨゼフの屋敷を訪れた。
「養子をお取りになるとか。」
先ずランダはそう切り出した。
ヨゼフはその言葉に驚いた顔をした。
「貴方と供にここに来た人達は殆どの者が家庭を持っています。ですが貴方は・・・」
「私はティア様から受け継いだこの宗教を・・」
「拡げたい・・だから家庭は持たぬと。」
ヨゼフは後を続けたランダの声に僅かに頷いた。
「稚児遊びだけで・・女は嫌いですか。」
ランダは突然話題を変え、その言葉にヨゼフは複雑な表情をした。
「カウラーでしたっけ・・貴方の養子になる人は・・・」
ヨゼフが首を縦に振る。
「その方に嫁を差し上げましょう。」
だが・・ヨゼフは一瞬の言葉を発した。
「存じ上げていますよ・・カウラーは同性である男しか愛せない・・そこで貴方がカウラーの嫁に子種を授ける。
如何ですか。」
ランダは金の話とは別にヨゼフの本音を突き、その夜はランダはヨゼフと肌を合わせた。
「どうだい、久々の女というものは・・・」
ランダの声にヨゼフは満足げに頷いた。
ランダがルーメンスブルグを訪れて七日目に枢密院の裁可が出た。結果は上々、ランダの申し出は認められた。但し税は儲けの二割、それはランダの想定内だった。
「なぜ金だけでなくあんな方法に変えたんですか。」
黄泉の森への帰り道、サビーネがランダに訊ねた。
「ヨゼフのことだね。」
ランダの言葉にサビーネが頷いた。
「あの男は元々女好き、それを他の力が抑えている。」
首を傾げるサビーネにランダが続ける。
「臭いで解るんだよ、私には・・・あの男には外道ブロッブが憑いている。
その上、他の力も関与している・・嫌な臭い・・それ以上にはその力がなんなのか、さすがの私にも解らないけどね。」
ランダは茶目っ気たっぷりに片目を閉じた。




