秘密の相談
喫茶店の名前を変更しました。
翌日、喫茶店 "Secret Garden" の窓際の席で、詩織は直人の話に耳を傾けていた。
「ちょっと待って」
詩織は困惑したように眉を寄せる。「術って...催眠術みたいなこと?」
「はい、ただ少し違って...」
直人は言葉を選びながら説明を続ける。「相手の夢に入り込めるというか...」
「夢に...入る?」
詩織は半ば呆れたような表情を浮かべる。「直人くん、そんな非科学的な話、本気にしてるの?」
「本当なんです」
直人は真剣な眼差しで訴える。「僕も最初は信じられませんでした。でも、結衣との実験で...」
詩織は黙って直人の表情を観察していた。いつもの冷静で理性的な後輩が、こんなにも真摯な表情で非現実的な話をする。その様子に、どこか引き込まれるものを感じる。
「つまり、ユイちゃんと同じ夢を見たのかどうか、確認できないってこと?」
「はい」
直人は俯く。「聞くに聞けないですし…」
「確かに、どんな夢を見たのか聞くのは難しいわよね」
詩織は考え込むように言った。窓際の席からは公園の木々が見える。Secret Gardenは、その名の通り、まるで秘密の庭園のような静かな空間だった。古い洋書が並ぶ本棚が、さらに独特の雰囲気を醸し出している。
「はい…」
直人は曖昧に答える。見た夢の内容は、とても口に出せるものではなかった。
詩織は静かに頷いた。「そうね、そもそも術が本当に使えるかどうかも分からないんだよね?」
「はい…」
確かに非現実的な話だ。それでもいつもの冷静な直人がこんなにも真剣に語る姿に、どこか引きつけられる。
(もし本当だとしたら...すごいことよね)
大学で心理学を学んでいる詩織にとって、人の夢に入り込めるという可能性は、純粋に魅力的だった。科学では説明できない現象。でも、だからこそ探求する価値がある。
(それに...)
直人の悩む姿を見ていると、放っておけない気持ちになる。いつも頼りになる後輩が、こんなにも困惑している。
詩織はゆっくりと顔を上げ、決意を込めて言った。
「じゃあ、私が実験台になってあげる」
「え?」
直人の目が大きく見開かれる。
「だって、確認したいんでしょ?」
「そうですけど…」
直人は言葉を濁す。戸惑いの表情の裏に、どこか期待のような感情が垣間見える。
詩織は微かに頬を染め、紅茶に視線を落とした。窓の外では夕暮れが始まろうとしていた。




