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たった一曲。わずか数分だけだったけど、それは一生分の幸せを詰め込んだような素敵な時間だった。
優美な曲調のワルツに合わせ、私とクロードは広間を自在に舞った。
顔を真っ赤にして激怒したローズお母さまとその手先たちが必死になって私たちを捕まえようとしたけど、クロードの巧みなリードが彼らの手を私たちに近づけさせない。
それにリゼットがばれないように彼らの邪魔をしていたのは驚きだったわ。
私はクロードの手にすべてを委ねた。
大理石の床なのに、まるで雲の上にいるように固さなんて感じない。
そっと胸に頬を寄せる。クロードの鼓動に、自分の呼吸を合わせる。
私は今、クロードと一つになっている――。
どんな夢だって叶う気がした。
どんな言葉だって言える気がした。
だから曲が終わった直後、私はクロードの顔を見つめながら告げたのだ。
「クロード。私ね、あなたのことが好き――」
彼はニコリと微笑んでくれた。
けど……。
「いたぞ! おいっ! 大人しくしろ!」
「シャルロット様をたぶらかした無法者め!! 牢獄塔にぶち込んでくれるわ!!」
クロードは何の返事も許されないまま、大広間から連れ出されてしまったのだった……。




