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王宮内の混乱


『戦争とは、外交手段の一つの形態であり、他の外交と大して違いはないが、唯一大きく違うのは武力を使い実際に破壊を行うだけだ』と以前聞いたことがある。


 だからというわけではないが、実際に戦争が始まれば他の外交手段は鳴りを潜めるかというと、それは大きな勘違いで平和な時よりもより一層他の外交手段も活発になる。

 まあ、自分も含め多くの人の命が関わることから誰もが必死になるのは当然のことだ。


 敵に対しては謀略を含め情報の収集は当たり前で、敵以外に、味方については関係をより一層緊密にしておかなければならず、それ以外に特に気を使うのが中立的な立場を取る国に対してだ。

 できれば友好的な関係に持っていければいいが、最低でも敵に回らないよう、現状維持をさせなければならず、とにかく大変なことらしい。


 平和な時にダラダラとしているというわけではないが、戦時には戦闘以外の外交手段も活発になり、また、平和な時には行われないような謀略も活発に行われるようになるから、とにかく忙しいらしい。


 まあ、ダイヤモンド王国とフェノール王国との戦争は、本当に長く続いており、戦争の定義をどこに置くかによって人により認識が変わってくるが、国の定義からしては、俺が生まれるはるか前から戦争状態ではあったとある。


 なので、現在ダイヤモンド王国の政治を司る中枢はとにかく忙しくしていた。


〜ダイヤモンド王国王宮~


 陛下は朝の定例会議の前の打ち合わせに、執務室で宰相と宇宙軍長官を交えて話し合いをしていた。

 普通、執務室で陛下が仕事中ならば、その仕事を邪魔するような者はたとえ上級貴族といえどもあり得ないが、緊急時、特に戦争中ならば状況は異なる。


 割と頻繁に伝令が部屋に飛び込むことも最近は多くなってきている。

 しかし、今回だけは状況が異なる。

 普段伝令が飛び込んでくるようなときでも、いや、その表現そのものがおかしく、伝令が部屋に入るときでも続き部屋の待機している秘書官を通して中に入れてもらうので、普通の仕事をしているかのように報告がなされるが、今日だけは違った。


 宇宙軍本部から高級参謀の一人が『飛び込んでくる』の表現通り陛下の秘書を無視して部屋の中に入ってきた。

 なので、彼の後から遅れて秘書が入ってくる始末だ。


「どうした、参謀」


「ハイ、第二艦隊司令部からの報告と、それに基づく要請が入りましたので、判断を求めてまいりました」


 流石に王都に詰める高級軍人でもエリートの情報部に所属する参謀本部所属の第二席の参謀は報告だけは慌てずに行っている。


 陛下は、宇宙軍長官を手で制して、彼に続きを促す。


「先程、第二艦隊司令部から第二艦隊司令長官発信の報告がありました」


「長官自らとは、あまり良い感じはしないな。

 続けてくれ」


「はい、現在フェノール王国との境にある我が国の基地を守備する戦隊司令部から、フェノール王国の様子に著しい変化があり、緊急ですが戦隊に威力偵察を命じることを許可を求めてまいりました」


「少し待て。

 まず、その著しい変化とは何だ」


 流石にここに来て宇宙軍長官が参謀に情報を正確に伝えるよう命じる。

 彼の説明では、警備している基地の周辺、フェノール王国側にはなるが、敵の艦船がこちらを警戒して常に配備されているのだが、その艦船が今日未明になってから急に王国中央部に向け後退を始めたようで、付近にはフェノール王国の艦船が一隻もなくなったとあった。


「それは、真か?」

 

 宰相も気になるようで、参謀に問いただす。


「はい、私が何度も直接第二艦隊の司令長官に確認を取りましたが、司令の方も信じられないようで、現在、交代用に準備中の戦隊を確認のために件の基地に向け発進させたとのことです」


「それは、いよいよただならぬことのようだな」


 陛下が、心配そうにこぼしていると、今度は王宮内にある情報部からそこの長官自ら報告に来た。

 流石にこちらの方は陛下の執務室まではいつも通り静かに歩いてきて、隣室の秘書官を伴って入ってきた。


 なので、陛下の執務室はちょっとした人口過密になっている。

 最初に相談していた3人に加えて飛び込んできた参謀と、その後から来た秘書の一人の5人がいる部屋に更に二人が加わったのだ。


 本来十分に広いはずの陛下の執務室が、殊の外狭く感じるのは、人の数だけでなく、この部屋にもたらされた情報の深刻さにもよる。



 戦闘中の敵国の意味不明な行動についての第一報が入ってきたのだ。

 そこに更に情報部から、陛下は一体何が現在進行中なのか全く掴めないことに、更に不安に襲われていた。


 陛下は自分の不安をよそに気力を振り絞って入ってきた情報部の長官に問いただす。


「緊急事態なのだな」


「はい、先程グラファイト帝国からの情報が入手されました」


「今度はグラファイトだと……」


 宰相が思わずこぼした言葉に反応したかのように報告を始めた。


「グラファイト帝国が、フェノール王国に対して外交使節団を出していたようで、我が国の同盟国でもある公国に対して仲介の依頼をしたようで、そのことで大規模使節団が公国に入ったことでした」



「グラファイト帝国がフェノール王国に対して一体何が……」


「どうも現在我が国を航行中のコクーンの盗難についての見解を求めているようですが。

 情報部として掴んでいるのはここまでですが、どうもその規模といいますか、とにかく大規模な戦力の移動が発生しているようで、一部にはパワーバランスが崩れるおそれが」


「パワーバランスの変化だと。

 このややこしい時期に……」


 宰相は思わず顔を手で覆い嘆いている。


 ただでさえ外交が大変になってきているというのに、さらなる問題が……

 そんな暑苦しくもなってきている陛下の執務室にさらなる報告が、今度はその外交部から入ってきた。


「陛下、報告があります」


 そう言って入ってきたのは外交部の長官だった。

 陛下は彼の姿を確認すると、思い出したように宇宙軍の参謀に問われていた許可について判断を下した。


「その報告を聞く前に、仕事を一つずつ片付けよう。

 まず、最初にあった威力偵察の件だが、現在は保留だ。

 決して国境を超えてはならぬと命じておいてほしい。

 それで、いいな長官」


 陛下はそう言ってから宇宙軍の長官の方を見た。


「はい、陛下。

 現在何が進行中なのかを確認してから出なければ、戦力に移動は避けるべきだと思います」


「第二艦隊の増援の件は、そのまま増援態勢で基地の警護に当たらせます」


「ああ、そうしておいてほしい……あ、それと、現在準備中の派兵部隊である侵攻軍団の件だが現状ではこちらも派兵は絶対に許可できない」


「そちらの方は、大丈夫かと。

 皇太子殿下の準備が遅れがちですのですぐに司令部の移動はできそうにありませんが、準備の終わっている部隊に対しても国境は超えることのないよう命じておきます」



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― 新着の感想 ―
国王陣営は大きな方針に関してはとても大胆で、 権限を委ねる度量もある(主人公に敵国の首都まで攻めてよいと宣言するほど)。 しかし、部下(王女側)がそれを実際に実行してしまうと、 事後の反応がどこか微妙…
「アミン公王との会談」「陛下に報告」の章で、国王たちに首都中枢を奇襲するって話をして作戦詳細説明してるので、国王たちが思い至らないのは無理があるかと思いますね。 >いつも君のところには驚かされるが、…
地の文章に陛下って使いすぎではないでしょうか 読者はダイヤモンド国王の臣下でも国民でもないから 違和感ありますね。
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