取り調べ
「はじめまして……かな。
フェノール王国の国王」
「失礼だな、君は。
この方は……」
「ええ、存じております。
私どもが追っていた海賊たちの依頼主ですので」
「……」
早速、帝国の殿下は飛ばしている。
まあ、この段階であれば誰が対応しても主導権はこちらにあることは動かないだろうが。
「どういうことか説明願えないか、その前にそちらの紹介を先にしてくれ」
フェノール王国の王は怒っている宰相を抑えて俺等に聞いてきた。
流石に一国を率いるだけあり、肝が座っている……いや、状況が飲み込めていないだけかもしれないが。
「では、私から自己紹介をさせていただきます。
私はダイヤモンド王国、広域刑事警察機構軍、長官のナオ・ブルース少佐です。
で、こちらに控えておられるのはここコクーンの司令であり、グラファイト帝国王族の……」
フェノール王国の王からの要望を聞いたあと俺は胸から一通の書面を取り出して読み上げる
「一通り紹介が済んだところで、あなた方の処遇ですが、法律に則り、処理させていただきます。
これより、ダイヤモンド国王陛下より、いただきました令状による法の執行により、貴殿らの身柄を拘束し、速やかに捜査に入る」
「身柄拘束だと……」
「なんの捜査だというのだ。
明らかに国際法に反しているぞ。
許されるはずがない」
王と宰相は二人揃って元気に俺に食って掛かった。
まあ、普通そうなるわな。
しかし、戦争当事国のトップが、今更国際法規がとか、あまりにおかしなことを言い始めたが、まあ、現状がありえないことなので、混乱するのもよく分かる。
でも、今の俺達には法的には何ら瑕疵はない。
そうなるよう、細心の注意を払って考えた作戦だったのだ。
「そもそも、我がフェノールの王宮でダイヤモンドの法なんか関係するはずがない」
まだ、原則論といいますか、わからないことを言い始めたので、俺がいつものレトリックというか、そもそもフェノール王国のほうが我らに言い放つ外交上の相互理解について説明しておく。
「あれ、私の理解では貴方がたと我がダイヤモンド王国との国境はない筈では。
今回の戦乱もそのような理屈から始められたと聞いておりますが」
「……」
「貴方がたが言う、どこまでも我々の領地だと。
外交では相互主義というのがありますので、そのままそっくりお返ししただけの話で、そこまでも我がダイヤモンド王国の法律の適応範囲だとこの場合宣言しておきましょうか」
「……」
俺の説明を聞いていた帝国の王子も話し始めた。
「我々は、ダイヤモンド王国の刑事警察機構からの要請で捜査協力しておりますので」
王子の説明が気に入らなかったのか、宰相が食って掛かる
「グラファイト帝国ともあろうことが。
なんでこんな無法者のダイヤモンドの奴らに加担して……」
「ええ、私もこんな面倒な手段を講じずに、できれば外交的に解決できればよかったのですが」
王子は穏やかに、こう言い放つ。
この一言はかなり核心をついたようで、ふたりとも声を出せなかった。
「ですが、その外交手段を全く相手にもしなかったのはどの国ですかね」
今度はどすを聞かせた声で迫る。
「「……」」
ふたりとも身に覚えがあるのかこれ以上反論する気力もないようだ。
それでも殿下の追求は止まらない。
「何度も外交使節を受け入れるよう要請を出して、第三国での会合まで準備して提案したのに、全く無視されれば、帝国としても次の手段に進まざるを得ませんな」
「「……」」
ぐうの音も出ないとはこのことかと言わんばかりの光景が目の前に広がっていた。
宰相が苦し紛れにこぼした言葉が、急に部屋の中の空気を変えた。
「無視したわけでは……私どもとしても王国に急使を出して……」
「宰相!」
「は!」
宰相が話そうとした内容を悟ったのか王は宰相を止めると、宰相もまずいとばかりに言葉を止めた。
今回の騒動の大元、黒幕と言い換えてもいい存在にお伺いを出していたと言う感じのようなことを口にしていたのを、すかさずフェノール国王が止めてきた。
まあ、予測の範疇ではあったが、本当に宇宙を巻き込んで大騒乱でも起こそうとしていたようだ。
やはりフェノール王国の後ろに別の勢力が、いたようだ。
まあ、十中八九コランダム王国だろうが、そうなるとフェノール王国とコランダム王国の間にあるペプチド商業連合国がじゃまになるが、この企みを全く知らないと言うには怪しすぎるな。
想像すればするほど、今回の争乱の影響する範囲はとてつもなく広く、関わってくる国の数が敵味方合わせて多すぎる。
こんな企みを始めに考えたやつの頭はいかれているんじゃないかな。
でも、それにしてもこの企みって、今更止まるのかな。
正直心配になる。
しかし、寸前に止められて良かったと言う感じかな。
正直討伐軍が命じられた段階でさっさと攻め込んでいれば、状況は変わったのだろうに。
王子たちの国内政治に振り回されてというか、うちの王女殿下の足を引っ張るためにグズグズしていたからここまで話が大きくなったようなものだと俺は思うが、今更愚痴を言っても仕方がないか。
それに考えようによっては、あそこで戦闘に入り泥沼化していれば、本当の黒幕たちが描いた大騒乱になっていただろうから、ある意味皇太子殿下はファインプレーだったのでは。
まあ、黒幕たちは宇宙全体を巻き込んだ大騒乱までは想定してなかったであろうが、帝国側と直に話した限り、そのまま大騒乱に突入するのは必至だ。
まあ、それもこれもあの段階で泥沼化していればの話で……王子たちが指揮すればあり得たのかな。
なにせ俺等が救った教育戦隊のあの時の体たらくを見れば簡単に泥沼化していたかも……下手をすればそれ以前に、簡単にフェノール王国に対して白旗を上げているかもしれなかった……有り得そうだからちょっと怖い。
流石にコレを考えるのも不敬になるそうなので、これ以上は考えないが、大切なのは今後の話だ。
まあ、どちらにしてもこれだけ簡単に国王の身柄を抑えることができたのは良かった。
少なくともこれ以上フェノール王国からのちょっかいは無いだろう。
少なくとも現状では、国のTopが人質になったようなものだ。
俺が一人別の方に考えが及んでいると、この部屋に帝国のお偉いさんたちが入ってきた。
「悪いが、少し話を聞かせてもらう」
司令である王子はそう言うと、いま部屋に入ってきたお偉いさんの一人が話を続けた。
「これより、貴国に雇われた海賊による帝国財産の窃盗についての取り調べを行います。
本来、一人づつ別部屋に分けて聞き取りを行いますが、まずは事前調査ということであることと、貴殿らの体調を鑑みこのまま話をさせてください」
一人がこう言うと、別に人が……この人はこの基地では珍しく軍服でなく普通の格好だ。
いわゆる文官という感じの人が、軍服のお偉いさんの後に話を続ける。
「貴殿らには本来、帝国の資格を持つ弁護士を要請する権利がありますが、あいにくここは宇宙空間でもあり、またかつ、これが正式な取締でないことから、このままの調査となることをお詫びするとともに、私が帝国の法律に反しない限りの取り締まりが行われることを保証します」
ここで現れたのは、見た目通り文官のようだった。
しかも、法律関係の人のようで、ある意味少々面倒くさそうな感じだ。




