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異世界妖怪奇譚〜雪女の場合〜  作者: るうと280
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第31話:クラス分けの試験と入学式


王立魔法魔術学園の入学式に先立ち、数日前、新入生を実力ごとに振り分けるための『クラス分け試験』が行われた。

試験内容はいたってシンプル。魔力測定、魔法の実績検査、そして生徒同士の模擬戦だ。


まずは魔力測定。水晶玉に手をかざした私を見て、試験官の先生が素っ頓狂な声をあげた。


「えっ……ま、魔力ゼロ……!?」

「……ん」


驚くのも無理はない。当然だ、私の身体を流れているのは魔力ではなく妖力(怪異の力)なのだから。数値として出るわけがない。


「で、では……次の実績検査ですが、一応あの並んでいる的に向かって、何か使える魔法を撃ってください」


試験官に哀れみの目を向けられつつ、私は他の生徒たちの様子をジト目で眺めた。

みんな、やたらと長い詠唱をぶつぶつと唱えた後、指先ほどの小さなファイヤーボールを出したり、そよ風を吹かせたりしている。……あんなに長い詠唱、もし精霊が本当にいたら聞き飽きて途中で寝ちゃうと思う。

水魔法はさながら水道水、氷魔法に至ってはご家庭の冷蔵庫の自動製氷機から出てくるような小さな氷の礫(つぶて)だった。


(……よし、私の番だ)


私は的の前に立ち、スッと右手を掲げた。

本当は言う必要なんてないのだけれど、一応、前世のラノベ風にカッコつけるために小さく口を開く。


「……『吹雪よ』」


ピキピキピキィィィィィィィンッッッ!!! ドガシャァァァン!!!


刹那、屋内練習場を丸ごと凍土に変えるほどの絶対零度のブリザードが吹き荒れ、並んでいた頑丈な石の的を、土台ごと粉々に完全破壊した。


「……ん、完璧」

「む、無詠唱?・・・・しかも、高位魔法だと・・・あわわわわ」


私がツンとすました顔で手を下ろすと、試験官はショックのあまり白目を剥いて泡を吹いていた。

その後の模擬戦にいたっては、開始の合図からわずか「1秒」で、対戦相手の男子生徒が綺麗な氷の彫刻(ポーズ付き)になった。何度も言うけれど、私のは魔法ではなく雪女の生態(物理)なのだ。防げるわけがない。


---


入学式、そしてSクラスの怪異


そんな大騒ぎの試験を経て、ついに迎えた入学式当日。

私はレイラさんと一緒に、新調されたばかりのクロックフォード公爵家の紋章が輝く豪華な馬車に乗り、学園へと向かっていた。


「ねぇ、氷麗ちゃん。一昨日のクラス分け試験、本当に何もやらかしてないよね……?」

「……ん。いつも通り、お淑やかにしてた」

「ならいいんだけど……学園の先生から、なぜか泣きながら『素晴らしい隠し玉ですね』って通信が入ったのよ……」


馬車が学園の正門に到着し、私が一歩外へ踏み出すと――周囲の生徒たちが、モーゼの十戒のように一斉に道を開け、遠巻きにガタガタと震えながらこちらを見守ってきた。

……あれ? 何かしたっけ? すっかり記憶にない。私の作った白と金ベースの特製フリフリ制服が、眩しすぎたのかな?


退屈な入学式が終わり、発表されたクラス名簿を見ると、私は魔力ゼロのくせに最高峰の『Sクラス』に配属されていた。

うん、さすが王様と王妃様のコネ(国家権力)の力は絶大である。素晴らしい。


さっそく綺麗なSクラスの教室に入ると、一人の可憐な女の子がトトトッと私の前に駆け寄ってきて、綺麗なカーテシーをしてくれた。


「氷麗様、お初にお目にかかります! この度、お母様が大変お世話になっております!」

「……はて? 誰のお母様?」

「あ、申し訳ありません! わたくし、ケロッグ男爵家のリリアーナと申します。お母様が、氷麗様の創設された『保健局』で、カッシーニ局長補佐として働いておりまして……!」


なるほど、私の直属の部下(の部下)のお子様か!

「お母様、毎日とっても生き生きとお仕事されていて、氷麗様には家族一同、感謝してもしきれません!」と目を輝かせるリリアーナちゃん。その後も、母親が総合病院や血液銀行で働いているというお嬢様方から、次々とアイドルのように感謝の挨拶攻めを受けた。女性の社会進出万歳、よかよか。


そんな温かい女子の輪を文字通り切り裂くように、一人の身の程知らずな男子生徒が足を踏み鳴らして怒鳴り込んできた。


「おい! お前が氷麗か! お前のせいで、俺の父上が……っ!」


おそらく、先の脱税や横領で「生かさず殺さず搾り取るプラン」に処された悪徳貴族のバカ息子だろう。

その男子生徒が私に掴みかかろうとした瞬間、私の周囲3メートルに展開されている『自動防御・男子禁制の氷結結界』に触れてしまった。


ピキィィィィン!


「あがばっ!?」

男子生徒は、激しい怒りの表情のまま、一瞬でガチガチの氷像になって床に転がった。

ついでに、その横から「よぉ、君が噂の特待生ちゃん? 良かったら放課後、僕とデートでも――」と声をかけてきたチャラ男の先輩貴族も、結界の範囲内に指先が入った瞬間に同じ運命(カチンコチン)を辿った。


「ふぅ……めんどくさい。……ん?」


その時、私の研ぎ澄まされた変態察知レーダーが、教室の隅のクローゼットの影から、不快極まりない「底知れない熱い視線」を捉えた。


(……いた。やられる前に、やる)


シュバッパキィィィィィィィンッッッッ!!!!


「ひょぶふぉっ!?!?(極厚フリーズ)」


もはや様式美だった。

クローゼットの扉をバリバリと突き破るほどの巨大な氷塊に閉じ込められたのは、我が国の王太子殿下(仮)だった。

全く、お前は高等部の最上級生(17歳)でしょ。なんで中等部(12歳)の教室のクローゼットに先回りして隠れてるのさ。ガチの不審者じゃん。


教室が別の意味で凍りつく中、ガラッと教室のドアが開いた。

「――おーほほほ! 探しましたわよ、我が婚約者殿! ……って、あら。またツララ様に凍らされていますのね」


現れたのは、見事な縦ロールの金髪ドリルを揺らした、いかにも気が強そうな高等部の上級生お嬢様(王太子の婚約者)だった。


「ツララ様、うちの変態(ゴミ)がまたご迷惑をおかけして申し訳ありませんわ。……そこの者たち、これをそのまま裏の馬車へ回収しなさい!」

「はっ!」


お付きの筋肉質の従者たちが、氷漬けの王太子ゾンビを手慣れた様子でゴロゴロと転がして回収していく。

私は去りゆく金髪ドリルお嬢様の背中を見送りながら、「うん、あなたの旦那になる予定の男なんだから、これからは24時間体制でちゃんと監視(監督)してね」と、心の中で深くエールを送るのだった。

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