episode56
「薫子!話しがある!」
昼休みになり、勇真は意を決して薫子に話しかけた。薫子はお弁当を食べる手を止めて「なんでしょう?」と返答した。
「ぶ、文化祭なんだが...オレと明楽と雅臣と一緒に回らないか?!」
「え?私も、ですか?」
「そうだ!というか、お前がいないと意味がねぇ!」
「意味、とは?」
「あ、いや!なんでもねぇ!...で、返事は?」
薫子は明楽に目をやると彼女はとても良い笑顔で頷くだけだった。薫子はそこで一つの説が頭をよぎった。薫子が勇真のことを想っているのも、明楽からダブルデートを持ちかけられたのも知っているのは薫子明楽だけ。つまり、"勇真は薫子が好き"という説だ。その説に辿り着くと、薫子は顔を赤く染め、「わ、私でよければ...」と返事をした。
「ホントか?!ヤッタ!ヤッタゾ、明楽!」
「良かったね、勇真。でも一つ伝え忘れてるよ?」
「!そうだった!薫子!」
「は、はぃ...」
「後夜祭、オレと二人ですごしてくれませんか?」
薫子の元で跪き、まるでプロポーズのような風景に教室中がざわめきで溢れかえった。女子からは「キャー!素敵!」と声が上がり、男子からは「人がいる中で...男前だな小鳥遊」と拍手が贈られていた。しかし、それも一瞬で皆、「小鳥遊(君)って、明楽君(花ヶ崎)のことが好きだったんじゃなかったっけ?」と疑問を持った。そんな周囲に気がついた明楽は、口に人差し指を当てウィンクをしながら「シー」っと王子様モードですることでクラスメイト達を黙らせた。
「小鳥遊君。私でよければ後夜祭、一緒にいさせてください。」
「オッシャー!ヤッタ!ありがとな、薫子!良い文化祭にしような!」
「...ハイ。」
もう誰がどう見ても両想いである。それには薫子も気がついていて、何も知らないのは浮かれている鈍感な勇真だけ。薫子のそばにススーっと女子達が集まり、「いつから?いつからなの?!」と詰め寄られて、薫子はいたたまれない気持ちになった。そんな薫子に助け舟をだしたのは明楽であった。
「皆、そんなに詰め寄ったら薫子が困ってしまうより良かったね、薫子。勇真から誘われて。」
「...明楽、あなた知っていたんでしょう?」
「さぁ?なんの事かな?」
「もう!王子様ぶって!それでかわせると思わないでくださいよ!」
「だって薫子好きだろう?王子様な私。まぁ、冗談はここまでにして。勇真に薫子の気持ちは言っていないから安心して。ね?」
「そ、そうなんですね。...わかりました。」
「私が薫子のことを第一に考えないわけないじゃないか。」
明楽は雅臣と付き合うようになってからはだいぶ乙女っぽくなったと思っていたが、薫子にとってはやはりいつまで経っても王子様なんだな、と感じたのであった。そんな明楽と薫子は周囲を「王子と姫が見つめあっている...素敵!!」と思わせていたのであった。




