二つの不思議な石
子どもたちに連れられて、村の外れまで連れてこられてしまう。
そこは人気もなく、なんだか寂しい場所だった。
突然訪れた私たちに、嫌な顔一つせず、彼女は私を受け入れた。
「はじめまして、私はアンナ」
にっこりと微笑む姿は確かに、巫女というか、聖女というか、なんとも神々しい。
「わ、私は……マリアです」
「そうなの、よろしくね、マリア。あら、可愛いお客様だこと」
「息子のバアルです」
「ふふ、いい子ね」
またもニッコリとされて、ドキッとする。綺麗な人だった。40代だろうか。
憧れるような歳の重ね方で、品がある。若々しいというような、そんな軽々しくない、艶のようなものがある。
美しいひと、まさしくそんな感じ。
「さぁ、この人たちは私が預かるわ。あなたたちはお帰りなさい」
騒がしい子ども達を手際よく追い返して、アンナは扉を閉めた。
簡素だが、綺麗に整えられた家は、初めて来たのに、妙に落ち着く。優しい空間だった。
仕草で椅子を勧められて、会釈で腰掛けた。
「予感があったのよ、マリア」
アンナは台所でお茶を入れてくれている。いい香りが漂ってきた。
優雅な仕草でアンナはお茶を運んできた。鼻先でポットから湯気がふわふわと揺れていた。
バアルもフワフワと飛んでいる。
その様子にアンナはまったく驚かない。私はそこに驚いた。
「ステキなお家ですね」
「ありがとう」
机にポットを置いて、ゆったりとパッチワークのポットカバーを被せた。
その不釣り合いな白い手首に、見覚えのある痣があった。
「こ、これは……」
「鳥居みたいでしょう」
この世界では聞くはずのない単語に、パッと顔を上げた。
「私も、転生してきたのよ」
「え!」
「あなたもなんでしょう?」
アンナの表情は柔らかくて、私は何度も頷く。
「この世界には、たくさんの転生者がいるんですか?」
「……分からないけど、私はあなたが初めてよ」
「私はマンバって、あなたと同じ痣のある子を知ってて……あ、これをくれて……」
胸元からマンバが作ってくれたあの石のペンダントを取り出す。
「それ……」
石を見るアンナが凍りつく。
「アンナさん……? どうしたんですか?」
「私……それ、知ってるわ……」
震えるアンナが私のペンダントに手を伸ばす。
「どうしてこんなに懐かしいの……」
アンナの目には涙が浮かんでいる。
「いやね、私ったら……。そうそう、この村にも不思議な石があるのよ」
アンナは目元を拭いながら、平静を装っている。それが痛々しくて、見ていられなかった。
「ここにも、石が? この石は不思議な石で、魔力を封じるんです」
そこまで言うと、アンナの顔が曇った。
「この村の石は、力を増幅させるの……」
そこまで言うと、アンナは目に見えない速さで、私の首に小さな剃刀を当てた。




