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ピアソン男爵家へ

間が開いてしまい申し訳ありません。

 随分と困った様子のテレサから事情を聞こうとしたのだが、焦ってしまっているのか、説明が要領を得ずさっぱりわからなかったので、テレサを連れてピアソン男爵家へ向かう事にした。テレサがこれだけ困っているのであれば、ピアソン男爵も事情は知っているだろうと思ったからだ。


「1度ピアソン男爵の元へ行こう。ちょっと失礼するぞ」

「きゃっ」


 一言断って、尻尾で頭上へと持ち上げる。頭の上で落ち着いたのを確認して、ピアソン男爵家へ移動を始めた。

 カレオラの街も、何度も出入りしているため俺の事を見知った人ばかりだ。時々街に来たばかりなのか、大口を開けて唖然としている人も見かけるが、多くの人が慣れた様子で道を開けてくれる。

 ピアソン男爵家に到着すると、俺の姿が見えたのかピアソン男爵が門の所まで出向いてくれていた。


「よくいらっしゃいましたアーク様。テレサが何かご迷惑をおかけしてしまっておるようですな」

「いや、なにやら困っているらしくて助けを求められたのだが、イマイチ要領を得なかったのでな。ピアソン男爵なら説明してくれるのではないかと思って来させてもらったのだ」

「ああ、なるほど。そういうことでしたか。あまり大きな声で言える話でもありませんので、庭まで来ていただけますか」


 ピアソン男爵にここまで来た理由を伝えると、思っていた通りピアソン男爵も事情を知っているようだ。

 庭に回ると、ピアソン男爵は早速事の次第を説明しだした。


「実はテレサに結婚の話が来ているのです。相手はワドル侯爵と言いまして、家の格を考えると非常にありがたいお話なのですが、ワドル侯爵にはあまりよろしくない噂がありまして。実は……」


 そこまで言ってピアソン男爵は声をひそめた。つられて俺も顔を近づけると、ピアソン男爵は続きを話始めた。


「女癖が非常に悪いと噂されているのです。これまでにも何十人もの女性と結婚と離婚を繰り返しています。

 私はそのような相手にテレサを嫁にやるつもりはありませんので、断るつもりなのですが、テレサは家格の差を楯に押しきられるのではないかと思っているようなのです」

「なるほど、相手の噂を聞いてテレサも嫌がっているわけだな」


 話を聞いて状況は理解できた。だが……


「それだと俺に協力できる事はなさそうだな」

「そんな事はありません!」


 話を聞く限り、俺に出来ることは無いように思えたのでそれを伝えようとすると、テレサが大きな声で否定した。


「私をフィーゲルの街に連れていってください」

「どういう事だ?」


 テレサの願いの真意が読めなかった俺は、ピアソン男爵に問いかける。


「フィーゲルの街に避難していれば、万が一の場合であっても不在を理由に要求を断る事が出来ます。実は来週末にワドル侯爵がこの街にやって来るとの連絡が来ておりますので、出来ればフィーゲルの街に帰る時に連れていってはもらえないでしょうか」


 なるほど、理由もわかったし、要望も妥当だと思う。心配な点としては……。


「テレサを連れて帰る分、フィーゲルに持っていける荷物を減らさなければならなくなるのだが、その点は任せてしまっていいんだろうな?」

「その点は構いません。こちらからのお願いですので」

「そういう事であれば、俺は構わないぞ」


 俺としては俺のやるべき事は変わらないので問題はない。ただ運ぶ物が荷物か人かというだけなのだから。

 

「ありがとうございます。直ぐに荷物の準備をしますね」


 話がまとまった事もあって、そう言ってテレサは屋敷へと向かっていった。


「空の上では寒くなるから、冬用の服装をしていた方がいいぞ」

「わかりましたー」


 屋敷へと駆け込んでいくテレサの後ろ姿に向かって、思い付いた注意点を伝えておく。急いでいるようだったが、元気な返事が返ってきたので多分大丈夫だろう。


「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。どうか娘をしばらくよろしくお願いいたします」


 そう言ってピアソン男爵は丁寧に頭を下げていた。



 翌日、テレサを連れてフィーゲルの街へと帰る準備が整った。

 いつもであれば冒険者ギルドの前から飛び立つのだが、テレサが一緒に行くのを知られないようにしたいという事で、ピアソン男爵邸から飛び立つ事になった。

 貴族の女性という事で、荷物の量がどれ程になるのかと正直戦々恐々としていたのだが、意外にもテレサの荷物はそれほど多くはなかった。

 流石に鞄一つと言う訳ではなかったが、思っていたよりはかなり少なかった。お陰で元々運ぶ予定だった荷物もほとんど積み込むことが出来た。


「ではお父様行って参ります」

「体に気を付けてな」


 今生の別れという訳でもないので、別れの挨拶もあっさりとしたものだ。実際俺が飛べば1日かからないしな。


「アーク様準備が出来ました。フィーゲルに向かってください」

「わかった、行くぞ」


 テレサが籠に乗り込んだ事を確認して、俺は空へと飛び上がった。


 

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