3年後
仕事も忙しくて間があいてしまいましたが最新話を投稿します
「アベル!そっちに行ったぞ」
「任せろ!」
俺から無我夢中で逃げていたゴブリンは、茂みに隠れていたアベルに気が付かなかったようだ。
アベルが手に持つ剣を勢いよく降り下ろすと、ゴブリンは真っ二つになった。これなら正面から戦っていても大丈夫だったかもしれないな。
早いものでフィーゲルの街がアンデットの大軍に襲われてから3年の月日が流れた。
あの騒ぎが原因で、街の復興が終わった後も俺の回りはしばらく騒がしい日が続いた。
この国の国王の使者が来たり、隣国の帝国の密偵に周囲を探られたりだ。龍殺しとして名を上げようとしたバカがやって来たりもしたっけな。
そんな騒がしい日々も1年も経てば静かになっていった。
今俺はどうしているかというと、相変わらずフィーゲルの街を拠点として冒険者生活を送っている。
今日はアベルの冒険者デビューの日であったため、付き添いとして依頼に付き合っている。アベル自身はお守りみたいな事をされるのはいやがっていたのだが、クリスティーナに説得されてしまった。
片や育ての親であり、片や自宅のある土地の管理人であるため、俺達2人はクリスティーナの頼みとあれば断れないのだ。
いつからアベルが冒険者になりたいと思っていたのかは知らなかったが、後輩が出来たというのは嬉しいものだ。
「まったく、先生は心配性なんだよな。ゴブリン程度に負けるわけもないのに」
「そう言うな。それだけ大事にされているって事だ。今度何か依頼の報酬でプレゼントでも持っていってやれ」
「……まあそうだな。そうしておくよ」
大事にされているという俺の言葉に、アベルは若干照れているようだったが、プレゼントを貰えばクリスティーナも喜ぶだろう。
その後、冒険者ギルドに戻ってきた俺達は、アベルが依頼の報酬を貰ったところで解散した。さて、俺も俺の依頼をこなそうか。
今日の依頼はカレオラへの荷物運びだ。普通に荷物を送ろうとしたら、時間がかかるし途中で魔物に襲われる等して届かない事もあるのだが、俺が運べば1日で着くという事で、少し前から1週間に1便の定期便として運行している。
元々は俺を指名した依頼として個人の荷物を送ったりしていたのだが、利便性の高さから、冒険者ギルドが配送を希望する荷物を集め、それを週1で送る今の形となった。
俺しか出来ないという事もあって、手間のわりに見返りが多いので、非常に美味しい依頼だ。
「アークさん、今日はこちらの荷物をお願いします」
そう言ってマイラに指し示されたのは、運搬用の籠とその籠にいっぱいに詰め込まれた荷物だった。今回はいつにも増して荷物が多いようだ。
「見ての通りいつもより荷物は多いですが、重量はそれほどでもありません。壊れ物も無いとの事なのでいつも通りに飛んでもらって構いません」
マイラから説明を受けている間に、他のギルド職員が手際よく俺に籠紐をかけていく。毎度の事なので慣れたものだ。
「わかった。他に注意点はないな?」
「はい、大丈夫です。ではよろしくお願いしますね」
「では出発するぞ」
俺の声に周囲の人達が離れてスペースを作る。十分な広さが確保されたところで、俺は一気に飛び上がりカレオラに向けて出発した。
フィーゲルの街を離れた俺は、山際を飛び更にスピードを上げていく。
今飛んでいるルートは、山を越えないという条件ではカレオラへの最短経路となる。以前のような緊急事態でもなければ、流石に運搬に山を越えるのは荷物の安全を考えると難しかった。
もっともフィーゲルとカレオラを何度も往復する内に、最短経路も覚えたので、今では初めて山越えでカレオラに向かった時よりも早く到着する事が出来るようになった。
このドラゴン便だが、あまり多くの街に行っている訳ではない。というかカレオラ以外ではフィーゲルの南にある『砂漠の町ラガス』のみだ。
ラガスの町は2年前にある事件に巻き込まれた際に行ったのだが、それから時々訪問させてもらっていた関係で不定期でドラゴン便を依頼されている。ラガスの町については機会があればまた詳しく話す事もあるだろう。
とりあえず今は依頼を済ませよう。今日はアベルの付き添いもあったため、出発がいつもより遅くなっている。到着があまりに遅くなるとカレオラで心配されるので、かなり飛ばしている。
荷物が若干心配だが、壊れ物は無いとの事だったので大丈夫だろう。
色々と考えている内にあっという間にカレオラの街が見えてきた。
真っ直ぐ冒険者ギルドに向かって荷物を引き渡す。
「はい、確認しました。カレオラからフィーゲルへ運んでもらう荷物もありますので、明日帰る前にギルド職員に声をかけてください」
運んできた荷物をギルド職員に確認してもらい、帰る際に持っていく荷物についても連絡を受けた。いつもであれば何か依頼を受けるところなのだが、到着も遅くなったので諦めるか。
「アークさん、お願いします。助けてください」
これからどうしようかと考えていると、1人の女性が駆け寄ってきた。特徴的な銀髪のお陰で誰なのかは直ぐにわかった。
この街の領主であるピアソン男爵の娘テレサだ。
随分困っているようだがいったい何があったのだろうか。
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