騒動の裏側で2
短めです
アルノミシア王国国王 ウィリアム視点
「陛下、マノニア帝国軍が国境より兵を引いているとの事です」
「それは真か!?そのまま引いてくれればよいが謀の可能性もある。完全に退却しているのか最後まで確認せよ」
宰相からの報告にわしはホッと胸を撫で下ろした。
マノニア帝国の不穏な動きを察知したのはここ最近の事。元々野心の強い国で、たびたび周囲の小国に戦争を仕掛けては併合を繰り返していた。
このアルノミシア王国は比較的大きな国ではあるが、国境に帝国軍が集まりだしている事がわかった時には、次は我が国を狙っているのかと危惧していた。
幸い今回は引いたようだが、今後の事を考えるとマノニア帝国との国境線の兵力の増強を行う必要がありそうだ。
「陛下!」
そのような事を考えていると、先程報告を終えて退出した宰相が慌てた様子で戻ってきた。
「どうした?マノニア帝国がせめてきたのか!?」
「いえ、直接は違いますが、なぜマノニア帝国が兵を引いたのかがわかりました」
宰相の慌てた様子に、先程の懸念が実際のものになってしまったのかと思ったが、どうやら違うらしい。それどころか疑問を解消してくれるかもしれない。
「先程東部のフィーゲルの街から連絡が来ました。それによるとフィーゲルの街には氾濫モンスターハザードが押し寄せ、隣のカレオラの街では新型の疫病が流行していたとの事です」
「何だと!?」
宰相からの報告は、そのどちらも国家を揺るがす一大事だった。直ぐに軍と医師団を動かそうとしたわしに対して宰相は落ち着くように言い、更に報告を続けた。
「落ち着いてください陛下。どちらも既に終息に向かっているとの事です。それよりもフィーゲルの街よりの報告では、今回の件がマノニア帝国の工作だったのではないかと記されています。
戦争を始めるにあたり、我が国の兵力を分散させる狙いがあったのではないかとの事です。これが事実であれば、工作が失敗したためマノニア帝国が戦争を仕掛けては諦めたと考えられます」
「なるほど、確かにどちらの件も放置するわけにはいかない。開戦前にこの報告が送られてきていれば、兵力を分けていただろう。
しかしマノニア帝国の工作だった証拠は無いのであろう?」
「残念ながら」
「それでは帝国に抗議をするわけにもいかぬか……」
「今後は帝国に対する警戒度を上げ、情報の収集に努めます」
「それしかないか。それにしても氾濫など1つの街だけで対処できるようなものではないはずだが、いったいどうやって治めたのだ?」
「それについてなのですが……、何分信じられないような内容が書いてありまして」
報告の内容に気になる点を見つけて確認してみると、これまで饒舌だった宰相が突如として口ごもった。
「何だ?悪い報告ではないのであろう。早く報告せんか」
「承知しました。……報告によりますと、フィーゲルに住み着いているドラゴンが氾濫を蹴散らした、との事です」
「……何だ……それは?」
口ごもる宰相に報告を促すと、その内容は想像以上に突拍子もないものだった。
ドラゴンが街で暮らしているなど、物語の中でさえ聞いた事がない。
驚くわしをよそに、宰相の報告は続く。
「一月程前にフィーゲルの街にドラゴンが現れ、冒険者となる事を希望したそうです。現在では冒険者として活動しているとの事です」
「そのドラゴンはフィーゲルの街で暮らしているし、街に被害を与えたりはしていないという事だな?」
「恐らくは……ですが。冒険者となったとの事ですし、コミュニケーションもとれているのだと思います」
「それならばいいが。実際にどうなっているのかがわからない以上動きもとれない。とにかくそのドラゴンについて詳しく調べてくれ」
我が国民を救ってくれた事から敵ではないとは思うが、警戒しないわけにもいくまい。
万が一、ドラゴンに暴れられるような事になれば、我が国に壊滅的な被害をもたらすであろう。友好的な関係を結べればよいのだが。
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