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忍び寄る脅威17

 そのアンデッドは動きからして他のアンデッドとは違った。他のアンデッドはゆっくりと動いているのに、このアンデッドはきびきびと動いている。

 最初に突き飛ばされた冒険者を庇うように、他の冒険者がその穴を埋めているが、どうも分が悪いようだ。このままでは突破されてしまうかもしれない。


「急いで陣営を組み直して。あれは多分ゴブリンキングのアンデッドよ。アンデッドになって能力は落ちているはずだから、深追いしないように慎重に戦って。

 アーク君は、ゴブリンキングのアンデッドと戦っている者達に回復を手厚くお願い。他の者は周囲のアンデッドを減らして援護するのよ」


 後ろからフリーダの声が聞こえる。それによるとこいつはゴブリンキングのアンデッドらしい。最弱の魔物と呼ばれるゴブリンでも、キングになるとアンデッドになってもこれだけ強いのか。

 他のアンデッドをあっさりと倒してしまう者でも、ゴブリンキングのアンデッドは逆に打ち倒してしまいそうだ。

 攻撃を受けきれなかった者や、吹き飛ばされた者が出る度に治癒(ヒール)を飛ばして対応していたが、そちらにかかりきりになっている間に、他の場所でも怪我人が出てきてしまっている。

 怪我人を治療しようと、意識をゴブリンキングのアンデッドから外した。そのタイミングだった。


「うわぁ!」

「ぎゃあ!」


 叫び声に視線を戻すと、冒険者が吹き飛ばされ、ゴブリンキングのアンデッドが囲いを突破してきていた。運悪く周囲に手の空いている冒険者もおらず、ゴブリンキングのアンデッドを止められる状況にない。

 このままだと街の中に入られかねないと思った俺は、咄嗟に回復を切り上げ足止めを図った。

 尻尾を叩きつけて吹き飛ばーーーせない!?

 冒険者の囲いの外まで吹き飛ばすつもりで放った俺の尻尾の一撃を、なんとゴブリンキングのアンデッドは受け止めて見せた。とっさの攻撃だったとはいえ、ドラゴンの攻撃を受け止めるなんて生きていたらどれほど強いんだ?

 とはいえ尻尾を受け止めた事でゴブリンキングのアンデッドの足は止まった。街の中に入られるという最悪の状況は無くなった。

 更に攻撃を受けた事で、俺を障害だと認定したのか、街へ入る方向に進むのではなく、俺に向かって進んできた。

 アンデッドとは思えないほどの素早い動きで接近し、殴りかかってくる。かわす余裕が無かったため、右腕を持ち上げて受け止めるが、ズンっと思い衝撃を受けた。

 ドラゴンになってから受けた最大級の攻撃だ。と思ったが父親のブレスをくらったのに比べたら大したことはないな。

 右腕を振り払い距離を開ける。きちんと力を込めたからか、今度は受け止められなかったようだ。


浄化(プリフィケーション)


 距離が開いた隙に浄化(プリフィケーション)の魔法を使う。想定外の事態だったがこれで終わりだろう。

 そう思っていたのだが、ゴブリンキングのアンデッドはしぶとかった。浄化(プリフィケーション)の魔法を受けても、倒れる事なく俺に殴りかかってきたのだ。

 少し気を抜いていた事もあって、慌ててまた右腕で受け止めるはめになった。

 浄化(プリフィケーション)の魔法で倒せなかった理由は、耐性があるとか耐久力が高いとかそんなところだろう。何度も当てればきっと倒せると思うが、かなり時間がかかりそうだ。

 魔法が駄目なら物理攻撃しかないだろう。そう考えた俺は、ゴブリンキングのアンデッドの攻撃を右腕で受け止めたまま、左腕の爪で切り裂いた。

 元が死体という事もあってか、特に抵抗もなく爪が通った。肉を切り裂く嫌な感触を腕に感じる。切り裂かれバラバラになったゴブリンキングのアンデッドは、そのまま崩れ落ちた。きっと打撃には強かったんだろうな。

 強敵を倒した事で周囲の冒険者から歓声が上がる。俺がゴブリンキングのアンデッドと戦っている間も、順調に討伐は進んでいたようでアンデッドの数はかなり減っているようだ。


「最後まで気を抜かないで。このまま殲滅するわよ。アーク君は怪我人の治療をお願い。最後まで何があるかわからないから余力は残しておいてね」


 フリーダの掛け声と共に冒険者達の攻勢が激しくなる。

 その後はこれ以上想定外の事態が起こる事もなく、アンデッド達を全滅させるのにそれほど時間はかからなかった。



 アンデッドをすべて倒し、フィーゲルの街の危機が去ったあと、街を上げての宴が催された。

 不安感の反動からか、いつも以上に盛り上がっているそうだ。

 そんな中、俺は一人落ち込んでいた。

 なぜかというと、ふと思い出して自宅を見に行ったところ、物の見事に全壊していたからである。

 盛り上がっている冒険者達には悪いが、俺の頭の中はこれからどうしようという悩みで一杯だった。

 そこへマイラがやって来た。


「アークさんどうしたんですか、こんな端っこで。今日の主役なんですから盛り上がっていきましょうよ」

「マイラか……。家が壊されてしまっていたんだ、折角建ててもらったのに」

「ああ、なるほど」


 お金自体は持っているから再度建ててもらえばいいのだが、折角出来た家が壊されていたのは、思っていたよりもショックを受けた。


「また建て直してもらわなければならないな。次は壊されないように頑丈に作ってもらうか」


 新しい家について考えていたその時、急に声をかけられた。


「それでしたら、孤児院の敷地に家を建ててはどうですか?貧乏孤児院ですが敷地だけは余っていますよ。それに冒険者ギルドにも近くなりますから便利にもなります」


誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

お読みいただきありがとうございます。

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